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今日も僕は楽しくお料理ミッションをこなす。

味噌汁が不味い。

僕が料理をしないまま干支を一回りさせたのは、初めての料理のこの思い出が全ての元凶である。きっと。多分。

高校生まで暮らしていた実家を出て、大学からの一人暮らし。今まで家事なんてしたことなかった。でも、勉強だってスポーツだって、やってみればそこそこ出来るし、ていうか、勉強はそこそこっていうより結構出来るし。洗濯だって掃除だって料理だって、やろうと思ったら簡単に出来るはずだ。

そう思いながら神戸の地に降り立ち、家を探し、まぁそこそこの家賃でそこそこの立地の部屋を見つけ、

一口コンロか…まぁ、物足りないけど、いいだろう。手際良くやれば二口ある方が邪魔に思う時も来るだろうよ。節約節約。

なんて思いながら、荷物を運び入れ、段ボールを積んだ状態で写真を撮り、mixiに『新しい土地、新しい生活、新しい世界。』みたいなタイトルでブログも書いていたことだろう。

そして初めての買い物をダイエーで済ませ、家に帰り、ご飯を炊いて味噌汁を作り、厚焼き卵を焼いた。

まぁ、手始めにこんなところだろう。俺だって初めからパエリアだのアクアパッツァだのを作るようなそんな身の程知らずなことはしないさ。

最初で挫折したって仕方ない。母も言っていたのだ。
『まずは味噌汁からだね。めちゃくちゃ簡単だし、何を入れても美味しいから、いろんなレパートリーを作れるよ』って。
流石に味噌汁なんてめちゃくちゃ簡単だけど、どんなRPGだって雑魚敵からスタートする。ひとまずの通過儀礼だ。と思って、炊き立ての白米と味噌汁をよそい、手を合わせて一飲みした。

味がしない。


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そんなことがあってから12年間、ほとんど台所に立ったことはなかった。その間、引っ越しは3回。

引っ越しをするたびに思いはする。

これを機に料理するかー。

調理道具を揃えはする。形から入るのが一番だというし。しかし、結局使ったのは1年で片手で数えるほどしかない。

ずーっとガスコンロを有事の際の鈍器として玄関に鎮座させていた去年の今頃、色々としんどくなって精神状態を崩して身体を壊し、仕事から離れて休むことになった。そして、休み始めた翌週、緊急事態宣言が発令されて半月ほど経った頃、初めての緊急事態宣言が出された。

いわゆるコロナ禍となり、当時はウイルスの詳細もわからず、マスクをしていたとしても外に出ていいのかわからない状態だったと思う。当時の僕にとっては不謹慎ながら好都合で、『国が出るなというんだし、安心して家で療養しよう』と、ゆっくりと休むことができた。

最初は何かするのもしんどかったので、コンビニ飯やレトルトを食べ、家でずーっと寝転がったり、テレビを見ていた。ただ、しばらくしてちょっとずつ元気になってきてから思うようになってきた

あ、なんかしたい

さて、何をしようと思った時に、ふと気づいた。徒歩2分に八百屋があるな。あ、料理をしてみようか。全く脈絡はない。魔がさしたと言ってもいい。だけど、コンビニ以外に久しぶりに足を運び、味噌としめじと豆腐を買った。あと、サトウのご飯も。

家に帰り、味噌汁のレシピを調べた時に気づいた。

え、味噌汁って出汁も必要なの?

すぐにほんだしを買いに行き、出汁を使って味噌汁を作った。

うまい。

革命だった。世紀の大発見だった。人生が変わる1分の深イイ検索だった。


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そこから僕は色んなことを試していくことになる。

・かつらむきをする

・キノコのいしづきをとる

・下茹でをする

そんなところから始まって、最近は

・3枚に下ろす

・おかひじきのサラダを作る

・ヤマブシタケで味噌汁を作る

といった、12年前では全く考えもつかなかったことをするようになってきている。何より、八百屋が楽しい。日々仕入れが変わり値段が変わり形が変わる。そんな中から触ったことのない食材を買ったり、作ったことのない組み合わせの調理を試すというのは、日々新しくて楽しい。

『毎日は新しいことの連続です!』
なんて、アナザースカイに出る人がよく言ってるイメージだし、Twitterでキラキラしてる人もよく言ってる。だけれど、毎日を新しくするなんてそう簡単じゃない。新しくなかったな。今日も変わらなかったな。そんなことばっかりだ。新しいことがなかったからって、『自分はつまんない人間だな』なんて思ってたら本末転倒なのだ。

そもそも、休職してすぐの頃の僕なんて、本当に何もしていなかった。いや、何もしないのが正解ではあったのだけれど、症状が回復するにつれて、どこかで何もしてない自分が嫌になってくる時がある。

でも、料理はレシピを探すたびに、新しいことに出会えるし、切ったり、茹でたり、混ぜたり、それをこなしていくのが楽しくなってくる。

これ、何かに似てるなーと思った。しばらく気づかなかったのだけれど、ゲームをやる元気が出てきたときに気づいた。

これ、ソシャゲだ。と。

大抵のソシャゲには右上だか左上だかに『ミッション』なんて項目がある。そこをタップすると、『次にやるべきこと』なんてのが出てきて、それをクリアしていくと話が進んだり、システムが解放されたりする。進行に必要なミッションの他にも、日々小さな課題が出てきて、それをクリアするとコインだったりのアイテムがもらえるのだ。

普通に進めていけばどんどん強くなるし、毎日もらえるアイテムも、大抵が大したことはない。別にミッションなんてなくたっていい。だけど、ミッションがあると、なんかやってやろう。やってやったぞ。っていう気持ちにもなる。

その感覚に似ている。

難しそうな料理は世の中にたくさんある。でも、レシピを見ても動画を見ても作れないものなんて、実際はほとんどない。頑張ればクリアできる壁しかそこにはない。

そして、頑張ったら頑張った分だけ美味しい。

あぁ、料理ってうまくできてるなぁ。作れば作るほど、僕ってすごいじゃん、ってちょっと褒めたくなる。褒めてもいい気分になる。

もっと自分を褒めてあげたいことばっかり世の中に増えればいいのに。それは本当に思う。なんで大変なんだろう。それもずっと思ってる。

でも、とりあえずわかったことがある。

おいしいをつくるって、たのしいんだ。

#おいしいはたのしい

忘れないように、その日思ったことを書いていきます。ちょこちょこ文体変わると思います。