デリカシーの在処
自分はゲイであることを公言している。
大学生時代に周りの友人たちにカムアウトしてからというもの、隠す相手も気まずい秘密も一切なくなった。
本当に、隠し事が一つもないのが逆に悩みだ。
今では自己紹介が必要な場面や聞かれたとき以外自分から進んで素性を喋ることはないけれども、基本的に何を聞かれても包み隠さずあけすけに話している。
まだまだ世間的には珍しい人種だからだろう、
興味深々で色々なことを尋ねてくる人はたくさんいる。
こちらに歩み寄ろうとして知りたがってくれるのはありがたいことだ。
その一方で、こんな自分でも眉を顰めてしまうような聞き方をしてくる人間も一定数いる。
その大方はステレオタイプな差別意識が根底にあるノンケの男性なのだが、ストレートに(ノンケだけに?)卑猥な単語を交えての下世話な質問だったりこちらを"劣っている間違った生物"と見做しているようなスタンスでの質問だったりする。
こちらも仕事中はキャラとして場を盛り上げる必要があるのである程度は笑いにして返すが、
開けっぴろげな自分ですら嫌悪感を抱くような相手は相当デリカシーに欠けた人物だと思っている。
LGBT当事者たちには繊細な人も多い。
根掘り葉掘り聞かれるの自体が嫌な人もいる中で、そのコミニュケーションはまずいだろうと感じたこと数知れず。
例えば……
「女の子とやれないからゲイになったの?」
「なんでわざわざ男を好きになるの?」
「下ついてんの?」
「後ろガバガバなの?」
「俺のことイケる?」
などなど。
本当にそんな失礼な聞き方してくる人がいるのかと驚くだろう。
実際いるのだ。
何度も経験がある。
「俺のことイケる?」って聞いてくるヤツに限ってまーータイプじゃない。
出直してきなさい!
あと、手の甲を顔に当てて「ソッチ?」って聞かれるのもうんざり。
その表現古いよ。
以前、パフォーマーとして出演したクラブイベントで、フロア滞在中に輩みたいな男が話しかけてきた。
フロアでのお客様とのおしゃべりも仕事のうちだったので、最初からまあまあ失礼な態度は感じてはいたのだが、
キャラを貫いて明るめに返していた。
それでその男が「お前ほんとについてんのかよ?」と言ってきたので
「見てみるかい?(見せないけど)」と一歩にじり寄ったら
「ゲー!ふざけんな!」と激怒してどこかに行ってしまった。
そんなんで怒るなら最初から聞くなスカタン。
なんでこちら側が怒られなきゃいけないのか?
怒られるべきはお前だ(笑)
まぁ、嫌なヤツが向こうから離れてくれたので却ってよかった。
また、飲みの場などで知らない人と話す機会もあるが、
時代遅れの価値観を持っているのは中年以上の男性に多い。
彼らは「異性愛だけが認められるべきものであり、結婚して家庭を築くことが人間の唯一の幸せかつ義務である」みたいなことを滔々と説教してきたりする。
この手合いはLGBTに限らずいろんな人を敵に回すからやめた方がいいと逆に諌めたくなる(笑)
そもそも飲みの場で説教というのは人類にとって冷める行為No.1なのでそこんとこ自覚したほうがいいのではないか。
きっと部下からも(いやみんなから)煙たがられている人間だろう。
この社会において、認知が広がってきたとはいえまだまだ理解が進んでいるとは言えない。
おそらく彼らも彼らなりに知ろうとはしてくれているのだとは思うが…
やはりいまだに珍獣図鑑的な扱いで見られることが多い気がする。
(自分は珍獣だからいいけど)
デリカシーというものは時代や常識によって変化していくものである。
セクハラ、パワハラも定義が細分化され厳しく糾弾されるようになってきた。
それを一概に煙たがるのではなく、他人への敬意を欠かないような表現方法を模索し続けながら向き合っていく他ないのではないだろうか。
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