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食べることは生きること。

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フードを題材にしたエッセイや小説を集めました。
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記事一覧

まいにち、おみそ汁をどうぞ。

夕餉の始まりにおみそ汁をひとくち啜ると、 ああ、と声が漏れてしまうのだった。 今日も一日お…

鈴懸ねいろ
1か月前
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ビタースイート、そしてビター。

青い時代だった。 なんだってどうにかなるさ、と思っていた。 あれとこれを足せばこうなるので…

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なんだこれ!と怒っちゃうくらい美味しいもの。

美味しいものは 時に野蛮な気持ちにさせる。 食べた瞬間、 なんだこれは! と怒り出したいよう…

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緑のいる暮らし。

植物が自分のそばで育ってゆくのを 眺めているのは楽しい。 昨日まで何もなかった土の上に、 …

102

ちょっと味見させてくれませんか?

近ごろ、異国の屋台で作られる料理の動画を 見ることにハマっているのであった。 Instagramと…

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食べよ。歩めよ。

コンビニの前で、 女の子たちが雨宿りをしていた。 通りに背を向け、 白い電灯が明るい店内の…

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カンテラ掲げていちご狩り【短編小説】

足元がとても暗いので気をつけてくださいね。 そう言われて咄嗟にわたしのつま先は身構える。 足に土が被っているのだろう、 ひんやりとしたかすかな重みを 甲のあたりに感じたけれど、 わたしには確かめようがなかった。 もうすっかり陽の落ちた畑は 群青の闇の冷たさに包まれて、 光るものといえば星あかりしかない。 遠くで犬が鳴き、 通り過ぎてきた柿の木から 鳥がばさばさと飛び立つ音がした。 何か話していないと人との距離が どんどん開いていってしまうようだったので、 わたしはとにかくな

マカロン・カスタネット

スイーツは極上。 癒しとご褒美にはうってつけの存在だ。 味はもちろんだが、見た目も重要。 …

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あの日丸めたのはお団子だけではなくて。

夜明け前のお天道様も飛び起きる大声が、 家中に響き渡る。 祖母が、私の母を探して 部屋から…

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くるみとあんず。

小さな子供だった頃、 セキセイインコを二羽飼っていた。 青羽根で頭が白い子と、 全身が明る…

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夜のスーパーマーケットで人々は。

玉子を買った。 それから隣の野菜のコーナーへ行って、 サラダにするレタスと水菜とひよこ豆も…

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ぱいなっぷれ!

素直じゃないけどスイートなきみ。 そんなきみが皮膚の下に隠してる とろりとした甘さが、 ぼ…

125

夜中の黒糖ぷりん。

ただいま。 玄関の外で大きなため息をついてから、 なんとか取り繕ってドアを開ける。 おかえ…

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揚げパン少年。

小学校の給食の時間、 揚げパンが出される日は みんなのテンションが上がっていた。 今日は揚げパン! 教室中に そんな歓迎ムードが満ち満ちていた。 どの味の揚げパンだろう。 砂糖かな? きなこかな? ココアかもしれない!! みんなの期待の眼差しは、 台車に乗って運ばれて来た 銀色の箱の中身に注がれていた。 給食係という名の神様は、 トングで揚げパンをつかんでは、 順番にみんなの皿の上に せっせとのせていく。 そこには当たりハズレはなく、 揚げパンはただ揚げパンのままで