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短歌 新作8首 『イエス・オア・ノー』

伝えたい想いを届けるために、相応しいただひとつの言葉を膨大な数の中から探し出す。
けれど、どんなに言葉を紡ぐより、たったひとつの仕草ですべてが伝わることもある。
話したり、黙ったりしながら、答えを探すのはいつも手探り。

そんな気分を、8つの短歌で書いてみました。

第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。

イエス・オア・ノー

ハンガーにスーツ掛ければあきらかに男と分かるあなたの匂い

真っ黒なテレビの中で俺たちと思しき影が寄り添っている

次に何を言おうか迷う空白を引き裂いてゆく緊急車両

肯定はときに凶器で「恋人はできた?」と訊けず日付が変わる

加害者にならないように自分からキスはしないと決めている人

手を握り強めに握り返されて無言で決まるイエス・オア・ノー

肌じゃなく骨の形を確かめるような手つきで彼も抱いたの?

人類が滅ぶ日ならば繋がったポーズで朽ちた化石になれる

あらゆる言葉が無料で読める時代。 それでも、もしも「読んでよかった!」と思っていただけたら、ぜひサポートお願いします。 また新しい言葉を書くために、大切に使わせていただきます。