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P2PカーシェアのTuroの成長鈍化とIPO見通し

P2Pのカーシェアリングサービスを展開する米国のTuroが最新のIPO準備書類(S-1)を提出しました。
成長率は一時期より鈍化したものの利益を確り計上して事業安定性は抜群の同社、最近のIPO動向や同業他社のSPAC上場後の悲惨さを鑑みてIPOをためらっている感はあります。

1;IPOの向けたS-1申請書と見方

 Turoが当局に提出した最新のS-1報告書(IPO申請資料)によると事業収益は引き続き堅調だが成長率は鈍化しつつあることが明らかに。
 IPO必要性/Tech系企業のバリュエーション/企業成長力の低下の中でIPOのタイミング選びが困難に。すぐに上場しないのは[成長再加速への期待][再びのバリュエーション向上による希薄化影響低減]等を狙っているのではないかとも
 
 直近のTuroの資金調達は2019年のSeries-Eでの2.5億ドル調達でこれまでの調達総額は5億ドル強。Series-EはIAC主導、ポスト評価額は12.5億ドル。調達以降、コロナ禍での減速と急成長を遂げて[21年以降;営業利益][22年以降;純利益]を計上している
 Turoの投資家はVCが多く名を連ね、[IAC(3,920万株)][G Squared(1,620万株)][CanaanPartners(1030万株)]等となっている
 IPOを急いでSPAC上場したGetaroundの株価が低迷に低迷を重ねていることもIPO実施の妨げになっていそう

2;2023年の実績

 IPOを目指すTech系企業として利益計上できているのは大きいが、成長鈍化を考慮すると将来価値に対する見方は厳しいものになる
(売上高)
 売上高は8.79億ドルでYoYでは18%増加、収益規模は業界トップレベルだが成長率自体は鈍化。IPOの妨げにはならないが成長率減速は悪印象…
 -2021年;4.69億ドル(YoY;213%)
 -2022年;7.46億ドル(YoY;59%)
 四半期レベルで見るとFY22→23では[3Q;13.6%][4Q;14.3%]で通期を下回ったが、4Qでの伸びの加速自体は投資家には朗報ともいえる
(利益)
 粗利益率は昨年わずかに低下、[FY22;54.3%]から[FY23;51.4%]に。
 営業利益は1370万ドルでFY22の4660万ドルから減少して2020年以来最低
 純利益は1560万ドルでFY22の1.54億ドルから大幅減少し、2021年以来最低

3;S-1での着目点

 S-1でのFY23-3Qから4Qの変化点として下記の大きな項目が。
(EV)
 EV比率が8%から9%に上昇しており、Turo-PFでのEVシェアが顕著に拡大している
(供給車両数)
 PF上のアクティブな車両台数は[3Q;約35万台(YoY16%増)]から[4Q;36万台(YoY12%)]に増加。供給量の拡大による成長鈍化も想定される…
(金利収入)
 金利上昇に伴い金利収入が大幅増加してEBITDAが圧迫。金利収入は[FY22;530万ドル]から[FY23;1,830万ドル]に拡大

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