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【ネタバレあり】ワンダーエッグ・プライオリティ 第12話 感想


1 はじめに

 ネタバレありです。視聴予定の方は、先にアニメを観ることをお勧めします。

 また、この記事は、あくまで個人の「感想」であって、「正解」ではありません。こんな考え方や感じ方もあるのか、くらいに受け取って頂けると幸いです。



2 桃恵の離脱

 もし、リカがハイフンのことを知っていれば、ドットを倒すことはできなくとも、万年が死ぬことは無かったでしょう。

 だから、桃恵は、伝えるべきでした。ただ、このときの桃恵は、心身がボロボロな状態で、的確な判断が難しかったんですけど。

 桃恵は、エッグに関わって「後悔している」「私は選ばされた」「なんで私に声をかけたの...」と言い残し去っていきました。聴いていて本当に辛かった。言われたアイはもちろん、言った桃恵も辛かったでしょうね。

 なお、「私は選ばされた」というのは、決定論に基づくセリフでしょう。



3 リカの卒業

 リカの身を案じる裏アカの考えは一理あります。

 ただ、私を含め、多くの方は、また4人で笑って過ごして欲しいと思っているのではないでしょうか?それと、正直、このままリカを一人にするのは心配です。

 アカは、フリルのことはどうでもよく、ひまりが助かりさえすればいいと考えています。そして、それを裏アカにも、半ば強要するような言動をしていました。裏アカの言葉を借りるなら、アカはすでに怒りでフリルに取り込まれているようなものなのでは?

 11話で、裏アカは、アイに対し、フリルを「倒さなければ」ではなく、「止めなければ」と言っていました。アイに対する方便かなとも思いましたが、12話を観て、本心であると確信しました。裏アカでなければ、フリルを救えないでしょう。



4 裏アイとパラレルワールド

 エンドロールでは、「もう一人のアイ」と表記されていましたが、ここからは、便宜上、これまでのアイを「表アイ」、エッグから出てきた子を「裏アイ」とします。同様に、それぞれの世界線を、「表世界」と「裏世界」とします。

 第9話で、寿が「パラレルワールドは存在するわ!」と言っていましたが、他にも多数の謎を残したまま、最終話まで引っ張るとは思いませんでした(笑)。

 表アイと裏アイの見分け方は、目の色ではなく、表アイが黄色のヘアピン、裏アイがグレーのヘアピン(アメリカピン)です。



5 裏アイの自殺原因

 上記の通り、今回のエッグの女の子は、裏アイです。ワンダーキラーは、「怪物沢木」です。

 裏アイは、ベンチにあった「ヘルシオン」という睡眠導入剤を飲んだうえで、プールで溺死したようです。「ヘルシオン」は、ハルシオンのことでしょう。

 では、裏アイの自殺原因は、何でしょうか?

 この点、廊下のシーンで、裏アイの自殺について、オッドアイが理由でイジメられていたこと、多恵や先生など誰にも相談できなかったこと、友達がいなかったこと、小糸とも出会っていなかったことを話していました。以上を総合すると、裏アイの自殺原因は、「イジメ」となりそうです。



6 裏アイも沢木先生が好き?-強さの源とは-

 しかし、ここで1つ疑問が生じます。それは、「イジメ」が原因だとすると、ワンダーキラーは「怪物沢木」ではなく、第1話のようにイジメていた子になるのでは?という疑問です。

 そこで、ワンダーキラーが「怪物沢木」であることから、裏アイの自殺原因は、「イジメ」ではなく、「失恋」ではないかという説が生まれます。

 この説は、失恋する前提として、裏アイが沢木先生のことを好きにならなければなりません。表アイが沢木先生のことが好きだったことは明白ですが、裏アイはどうでしょう?

 「初恋の相手」「僕と付き合おうって言ったんだ!」というセリフ、その他モノローグなど、アイが沢木先生を好きであった話は、何度もありました。しかし、それらは、黄色のヘアピンを確認すれば分かりますが、全て表アイが対象です。裏アイの恋愛については、一切触れていません。

 ここで大事になるのは、二人のアイの違いです。裏アイは、オドオド、ビクビクと内気な性格です。これに対し、表アイは、裏アイと違い、裏アイを守れるほど強く成長しました

 では、この強さの源はなんでしょう?

 友達がいたから強くなったわけではありません。エッグのセカイで、女の子を守りながら戦ったことは、強くなった理由の一つでしょう。しかし、表アイの強さの源は、コンプレックスを克服して、自信を持ち、そんな自分のことが好きになれたことではないでしょうか。なぜなら、自信があれば、オドオド、ビクビクとはしないからです。

 それでは、なぜ、表アイがコンプレックスを克服できたかというと、沢木先生のことを好きになったからです。

 先生がオッドアイのことを「素敵」だと言ってくれました。大好きな沢木先生が認めてくれるから、コンプレックスを克服できました。コンプレックスを克服できたから、自分に自信を持てました。自分に自信を持てたから、自分のことも好きになれました。だから、強くなれたのです。これは失恋した後も、失恋という壁を乗り越えているので、さらに強くなります。

 したがって、まだ表アイのような強さを持っていない裏アイは、表アイと違い、沢木先生のことを好きになったりはしなかったはずです。よって、裏アイは、「失恋」が理由で自殺したわけではありません。とすると、やはり、裏アイの自殺原因は、「イジメ」以外に考えられません。

 ちなみに、「怪物沢木」が登場した時、二人のアイの表情が違います。裏アイにとっては、単なる部活の顧問なので、比較的小さいリアクションですが、表アイにとっては、初恋の相手なので、比較的大きいリアクションです。



7 特異なワンダーキラー「怪物沢木」

 裏アイの自殺原因が「イジメ」となると、再び、ワンダーキラーが「怪物沢木」である謎が残ります。

 ここで考えられるのは、そもそも、「怪物沢木」が裏アイのトラウマではない。つまり、ワンダーキラーはエッグの女の子のトラウマであるという原則に関して、今回はこの例外に当たるのではないでしょうか?

 「死の誘惑」とは、ワンダーキラーが女の子に自殺を促すことです。このとき、女の子の自殺を促すために、女の子のトラウマを利用します。だから、原則、ワンダーキラーは、エッグの女の子のトラウマとなります。

 ということは、裏アイを自殺させるより、表アイを自殺させたい場合、ワンダーキラーは、表アイのトラウマとなるのではないでしょうか?

 「怪物沢木」は、終始、表アイを攻撃しています。青い絵の具による幻覚攻撃では、裏アイより、表アイを倒すことに注力しています。これは、以前までのワンダーキラーとは、まったく異なる行動です。たとえば、第1話では、西城くるみだけが攻撃を受けて、表アイは放置されていました。

 また、フリルは、表アイが自分たち(タナトス)を脅かす「エロスの戦士」へと成長する予兆を感じたのではないでしょうか?実際、表アイは、「エロスの戦士」になると言い出します。
 それだけでなく、表アイは、リカたちと違い、裏アカから直接、フリルとの過去を聞かされています。当然、この事実は、フリルも把握していると思われます。これも、上記の予兆を補強する事実です。
 なにより、この事実は、大好きな裏アカから、表アイが信用されているということになります。嫉妬深いフリルが黙っていられるとは思えません。

 以上の通り、「怪物沢木」の攻撃対象、裏アカから表アイが過去を聞いたこと、これにより生じたフリルの危機意識と嫉妬心、これらを総合考慮して、今回は例外的に、表アイを倒すべく、表アイのトラウマである「怪物沢木」をワンダーキラーにしたと考えます。

 したがって、「あんたは私の中の疑い、疑念が作り出した怪物だ」という表アイのセリフは、間違っていません。より正確に言うと、表アイの疑念を利用して、フリルが作り出したわけです。

 だから、「怪物沢木」は、裏世界ではなく、表世界の世界線に基づいた記憶を持っています。



8 大人の恋と子供の恋

 「怪物沢木」は、絵の具を使い分けていたので、他のワンダーキラーより多彩な攻撃で面白かったです。

 特に、青の絵の具は、幻術のような効果があります。ここで出てくる小糸は、「怪物沢木」が作り出した幻覚です。もちろん、裏世界の小糸ではありません。

 「怪物沢木」によると、子供の恋は、純粋で汚れない。大人の愛よりも脆くて儚くて美しい。他方、大人の恋は、打算だらけで吐き気がする。だから、大人になる前に死んだ方がいいとのことです。第5話に出てきた「葵」と似たような考えですね。

 確かに、子供の恋の方が純粋で儚いと思いますし、その儚さに美しさを感じるのも共感します。また、大人になるとその美しさが失われるという点も同意します。

 しかし、大人の恋には、子供の恋にはない美しさがあります。大人になると、体力や健康面において老いてきます。要するに、生物として弱くなります。弱さは、強さと直結します。弱いからこそ強くあろうと努力するし、弱いからこそ相手の痛みが分かり、労わろうとします。ここに子供の恋に無い、大人の恋の美しさが生まれます。だから、私は、子供の恋が大人の恋より美しいとは思いません。

 なお、「近頃はコンプライアンスがうるさい」というセリフは、きっと教育現場だけでなく、色んな業界の本音なんでしょうね(笑)。



9 全力応援しまーす(テレ)

 「ママも幸せになって。全力応援しまーす」(テレ)。この表アイ可愛かったな~

 大戸家の回想シーンについて、黄色のヘアピンがあり、第9話の寿の話題もあるので、世界線は表世界です。したがって、裏アイだけが裏世界の住人であり、それ以外の全てが表世界に関する話でした。

 時系列としては、第10話以降です。学校に行けなくなりますが、これは小糸自殺後の登校拒否ではありません。多恵の(恋を)全力応援すると宣言しているので、表アイが沢木先生に告白して失恋した後です。

 学校に行けない理由は、沢木先生に失恋したからです。登校を再開した理由が沢木先生への恋ですから(第7話感想「5 母子かてーずの悩み」参照)、当然ですね。

 表アイが沢木先生に告白したのは、おそらく、第10話(サブタイが「告白」)、沢木先生の個展に行ったときでしょうね。沢木先生が多恵を愛していると確認して、表アイが泣いた後、さらに告白したことになります。ケジメをつけるため、フラれると分かって告白したわけです。フラれて吹っ切れたことも、多恵の応援ができるようになった一因でしょう。



10 キララ

 「怪物沢木」を倒し、本物の小糸が彫像から解放され、「キララ」(キララロドリゲスマチュード18世宵の明星SSプラム)と遭遇します。第11話を観る限り、フリルが作った友達で、最後の3人目ですね。

 キララのシーンは、時系列が前後します。整理すると、①キララ登場、②キララが表アイを攻撃、③②により表アイが意識喪失、④キララが「キラキラ」(オッドアイ)を要求、⑤キララが裏アイの眼を奪取、⑥裏アイ消滅、⑦表アイが現実世界に帰還、という順になります。

 ②後のピンクの爆煙、キララのセリフ、キララのブーメランに眼が付いているかなどから、上記の順になります。

 ということで、眼を奪われたのは、表アイではなく、裏アイでした。

 アイのオッドアイのeyeが取られるカットについて、ヘアピンが映らないので、初見だと、どちらのアイか分かりませんでした。第1話で、目をやられるといけないという設定があるので、衝撃がありましたね。

 おそらく、キララが眼を欲しがったのは、タナトスが生を奪い死を与える存在だからです。つまり、表アイの強さの根源たるオッドアイが「生」の象徴であり、それを奪うことがタナトスたる本分だからでしょうね。

 最後の「ありがとう」は、表アイと裏アイでしょう。と書きながらも、聞き分けはできませんでしたw



11 おわりに

 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

 アニメスタッフの方々には、ひとまずお疲れ様でしたと伝えたいです。特に、第12話の放送が間に合ってよかったです。

 それと、「特別編」の放送が決定しました。「特別編」ということは本編ではないので、アイたち4人の日常でしょうか?

 個人的には、4人の日常シーンと共闘シーンを観てみたいです。とはいえ、タナトスとエロスの戦士の決着、小糸の死の真相、ねいるの妹との過去、「生き返る」効果は、知りたかったなぁ。

 それでは、6月29日(火)の「特別編」の感想で、またお会いしましょう。

 

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