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胸いっぱいのアイと情熱をアナタ ─バレンタインチョコレート─


『胸いっぱいのアイと情熱をアナタへ』|まくら|note

↑こちらのスピンオフになります。
読んでないと、なんのこっちゃ?な
お話です(笑)


バタン!

勢いよく開くドア。

勢いが良すぎて蝶番が
ギシギシいってるが
それより、
真っ赤な顔で立っている人物に
視線を送る。

パンパンになったビニール袋を
両手に持っている美少女。

「いらっしゃい♥」
声をかけると
泣いてるのか怒っているのか
複雑な表情の
私の推しが立っている。


勢いよく抱きしめて髪を撫でる。
しばらく背中をさすっていると
落ち着いたのか
ルナがやっと、こちらを見た。

「すず姉ぇ…あのさ…」
「うん♥どうした?」

両手のビニール袋を
私に渡して

「チョコレート作りたい」

ポツリとルナの口から
小さな一言が溢れた。


何で溶けないの!!


「ちょっと!ルナ!!直火!ちょくび!」
「ちょくび?」

てんやわんやって
こういう事を言うのだろう。

カヲルが仕事から
帰って来るまで
普段は鉄臭さのする私達から
チョコレート臭が漂っていた。

私とルナの姿を見たカヲルが
スマホの写真を連射しながら
笑っているのを止めて
チョコレート作りをカヲルに頼んだ。

W推しを
愛でながら、今度は
私がスマホを構えた。


台所で普通の女子に戻ってる
2人を見ていると
異能力のない世界で
この2人が出会っていたら。

そんな私らしくない考えが
浮かんだ。

暴力しか知らない私を
救ってくれた異能力。

この子達を助けたのも異能力。
でも、普通の生活を奪ったのも異能力。

平和な世界があっても
良かったんじゃないだろうか。


冴子の言っていた『世界』
冴子の真似して私も何か書いてみるか。
学はないが、経験はある。

料理も菓子作りもしたこと無い
ルナが挑戦しているんだ。
私も何か初めてみるのもいいかもしれない。

甘い香りに包まれる
キッチンと事務所。


「カヲル、多めに作って
奴らにもあげてくれる?」

煙草と鉄分と汗の臭いをさせて
帰ってきた社員達を指差す。

「もちろんです!」
「ちょっと!私が先だからね!!」

なんて可愛いんだ二人とも。
「ちゃんと最後まで手伝ってやるよ。
お嬢様♥」
可愛い推しの為に
ラッピング用紙を用意する。


出来上がったチョコレートを
すべて包み終えてから
3人で、休憩する。



「ルナ、何で冴子に頼まなかったの?」
どう考えても、冴子に
習った方が上手に教えてくれただろう。

カヲルが手際よく
作ってくれたので助かったが
どうしても気になったので聞いてみた。

「……上手すぎるんだもん」
すねた様子で話すルナ。

どうやら、冴子と
バレンタインチョコレートを作ったら
簡単に売り物みたいな
物が出来上がったらしい。

こんな簡単に作れるならと
自宅の台所でチョコレート作りを
したら……火花が飛んで
悟に雷を落とされたのだと言う。


大笑いした私に
本気でナイフを投げてきたルナ。
危ない危ない。

ちゃんと謝ってルナを抱きしめる。
こっそりと耳元でイイ事を教えてやると
今度はナイフが飛んで来ずに
真っ赤な顔を両手で覆ってしまった。

ズキューン♥
そっちの方が私には刺さるわ。

そんな私達をニコニコと
笑顔で見ているカヲル。


隣の巨大冷蔵庫に
冷凍マグロが数袋あるのに
何て平和なのかしら♥




ありがとう


「ルナ、ホワイトデーは3倍返し
してもらいなよ♥」
「すずねぇ、それ古いよ」
カヲルにツッコまれてしまった。
え?3倍返しって古いの?


「ありがとう」
照れくさそうに
両手に箱を持って言うルナが
可愛すぎて、つい抱きしめてしまう♥

「カヲルちゃん!助けてぇ!」
「すずねぇ!ルナちゃんの
チョコレート潰れちゃうからぁ!!」

カヲルに引き剥がされてしまった。


手を振って帰っていく
ルナを見送って事務所に戻る。


「おい!お前たちカヲルから
バレンタインプレゼントだぞ!
3倍返しだからな!」
私が叫ぶと、
歓喜の雄叫びをあげる社員たち。

ホスト上がりの奴らでも
可愛いカヲルからの
心のこもったチョコレートは
別格のようだ。


みんなに愛されて守り、守られる
存在になったカヲル。

すずねぇ。ありがとう。



「すずねぇのは特別だからね」
そう言って取り出した
プレゼントとカヲルを抱きしめて私は
「ありがとう!30倍で返す♥」
と叫んだ。


チョコレートは潰れて
カヲルに怒られた。



まくらさんへ
スズタニさんから
プレゼントのようです。





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