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三十路女の休日【小説 1930文字】

会社でチヤホヤされる歳でもなく
お局様のように仕切ることも無い
ただの女子社員。

平凡な毎日でも、やはり
ストレスは溜まる。

だからといって、SNSで
発散しようものなら、
誰かに発見される可能性がある。

ならば、友人に愚痴を聞いて
もらえるかといえば
周りは子育てに忙しく
こちらが愚痴を聞くのがオチ。

カラオケで発散しようと
思ってみたが、なんだかしっくりこない。

そんな私の密かな楽しみは、
『セールス電話』

・女性
・独り暮らし
・独身
・三十路
とどこから情報が漏れているのか
わからないが、普段鳴らない
通知音でかかってるのは
お決まりのセールスである。

かかってくる内容は
・ダイエット器具
・ダイエット食品
が大半で、どこも似たような
説明をマニュアル通りに話してくる。


土曜日の午後、特に用事もなく
二度寝でもしようかと
していたら、かかってきたのは案の定
『ダイエット食品のセールス電話』


声からしたら20代、
あまり慣れていないような喋り方
マニュアル通りにつらつらと
商品説明をしてくる。

今回は、『体脂肪を減らす』商品を
格安で提供するというモノだった。


暇を持て余した私には
絶好のエサである。


一通り説明を終えたオペレーター
「お送りしても良いでしょうか?」
と聞いてくる。
そこで
「商品について質問しても
よろしいかしら?」
と返答し、私のターンに突入する。

「もちろんでございます。」
電話越しにオペレーターの笑顔が
みえるようだ。

「まずは、健康食品ということで、
成分を教えていただけますか?」
……パッケージの成分表を読み上げ
一つ一つについて、どういった効果が
あるものか、説明してもらう
……後半1~2分待たされながら説明される

「商品に使われている食品は、国産のものですか?」
……確認に1~2分待たされる

「そちらの食品は、医薬品、ダイエット食品、どういった部類のものですか?」
マニュアル通り「健康補助食品」
との、回答。

「具体的にどのくらいの期間の、使用でどのくらいの効果をえられますか?」
データを読み上げる。
データについて、どういった対象の人を
どのくらいの期間試した結果なのか
詳しくきく
……2~3分待たされ、治験データを
説明される。
治験データから、更にどのくらいの
効果があるのか、数値を聞く
マニュアルを必死で追いかけて、
オペレーターは答えていく。

この時点で既に20分以上たっている。
オペレーターは、質問の度に
上司に確認しているのか
資料を思ってくるのか待たされる。

スピーカーモードにして
オペレーターの言った事をメモりながら
会話をすすめる

「そちらの食品の形状を教えていただけますか?」
……1~2待たされる。

なんで、販売している商品が
カプセルタイプなのか、粒タイプなのか
知らないのだろう?
と疑問に思いつつ
ローテーブルに持ってきた
ジャスミン茶を口にする。

戻って来たオペレーターは
「指の関節2つ分です」
そこで、指の関節を見て疑問に思う。
デカすぎない?
「指の関節2つ分?」
聞き返すと、
「あっ!関節の1つの2つぶんで、え?あっ
ちがって、関節の、1つを2つにわけた1つ分」
オペレーターの言葉にジャスミン茶が
口から吹き出しノートを汚した。

「関節1つ分の半分てことで、いいのかな?落ち着いて。1/2ってことだよね?」
こっちが、訂正すると
「そうです。そうです。」
と繰り返す。

再び自分の、関節をみて吹き出す。
直径約4cmの錠剤を想像して
笑ってしまった。
ダメだ。ツボに入った。

オペレーターが焦っているのが伝わる。
オペレーターが、必死で
「半分です」
と繰り返すので、たまらなかった。

今回は、負けだ。
と思い他に考えていた質問を飛ばし
「最後に、質問いいですか?」
と伝えると
「はい!」
と喜んでいるオペレーターの声が流れる。

「こちらの商品は、現在使用中の薬を使用していても摂取して可能なものですか?」
……2~3放置のあと
「こちらの商品は健康補助食品です」
と、答えた後は
禁忌や飲み合わせについて
聞いても、ロボットのように
「健康補助食品です」
としか言わなくなってしまった。

「私が服用して、何かあった場合の保証等はありますか?」
……2~3放置後
戻ってきたオペレーターは、完全に会話を
終わらせたいモードに入っていた。

こうなると、何を聞いても
反応がないので、
「今回は、健康状の都合でお断り
させて頂いてもいいかしら?」
と私が言った時、
オペレーターの開放された感
満載の返事が返ってきて、
再びジャスミン茶を
溢しそうになった。

「お体お大事にしてください
(やっと開放される)」
と元気にオペレーターから言われ
「お姉さんも、お体に気をつけてね」
と電話を切った。


手のひらを広げ再び笑うと、
そろそろ夕飯の準備でもしようかと
スッキリとした頭で
献立を考え始めた。

ノートのジャスミン茶は
乾いていた。

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