「上の荷物をとっていただけませんか？」
「あ、はい。このリュックですか？」

今思えばこれが彼との初めての会話だ。
当時は彼とタイ・チェンマイで再会するとは思ってなかったのだが。

日本からベトナム・ハノイ行きの飛行機の中で、私は彼にキャビンにある荷物を取ってくれ、とお願いした。もちろん着陸後に。
そこから話が続き、荷物の受け取りや入国審査等お決まりのコースに沿って彼と行動していた。

実は、私はハノイは1泊しかせずほとんどトランジットのような滞在で、ハノイについて何も調べていなかった。だから、お金はもちろんSIMカードもなしで空港に着いたわけで、その説明を彼にしていると、市内まで一緒に行こう！と言ってくれたのだ。神が舞い降りた。

市内行きのバスで彼と話していると、彼の旅のメイン目的地がタイ・チェンマイだということが判明した。
まさかのふたりともチェンマイが目的地なのだ。
お互い思ってもみなかったのでびっくりし、運命を感じた。(勝手に)
その後も海外旅のエピソードを話し合ったりして、バスは目的地に着いた。

そして、

「チェンマイでまた会おう」

と冗談交じりに言い、お互いハノイの街に消えていった。

そして2週間後。

チェンマイで再会を果たしたのであった。