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【短編小説】accidentalエアお見合い少年BOY乳房ドリーム

 棚に並べられた青年雑誌で微笑むカバーガールたちと見つめ合っていたが、書店主のババアに後頭部を睨め付けられるのが厭になって陳房 立太郎は小さな本屋を出た。
 冬の夕方は冷え込むのが早い。
 立太郎は薄手の上着で外に出たことを後悔しながら自転車に跨った。


 図書館に行ってくる、とは言ったものの本当に図書館に行く気は無かった。
 家に居れば掃除だの洗濯だのお使いだとの用事を言い渡される。
 落ち着いて本も読めないし、引き出しの下に隠した雑誌だって見られない。


 もちろん図書館にはそんな雑誌を置いていない。
 レンタルビデオ店に下がっている暖簾を潜る勇気はまだ無い。行きつけのコンビニでは顔を覚えられている。
 仕方が無いから適当な本屋に入ったが、全く厭なババアだ。
 立太郎は仕方なしに自転車を漕いで他の本屋を探し始めた。


 古めかしいチンチン電車の線路沿いに二駅ほど自転車を走らせてみたものの、あまり土地勘が無いので目ぼしい本屋は見つからなかった。
 そろそろ諦めて引き返そうか。
 そう思っていたところに立太郎は駐車場を見つけた。


 駐車場には何となく既視感のある巨大な自動販売機が並んでいた。
 薄緑色をしていて、前の全面がガラス張りになっている。両側にボタンが付いているそれを
立太郎は知っていた。


 駐車場の端に自転車を停めた立太郎は、周囲を見回して誰もいない事を確認すると自動販売機に駆け寄った。
 予想通り、自動販売機の中には箱に入った裸の女たちが立太郎に向かって微笑んでいた。
 立太郎は嬉しくなってガラスに貼り付くみたいにして中の女たちと存分に見つめ合った。


 中にいる女たちは母親や学校の先生より断然若く、町中で見るどんなひとよりも綺麗だった。
 いつか大人になったら存分に買うのだ。
 そう思っていると、背後から不意に声をかけられた。
「ねぇ、どいてくれない」


 驚いて振り向くと、そこには若く綺麗な女が立っていた。
 しかし雑誌や箱の表紙みたいに優しそうな微笑みではなく、鋭い眼をして怒っている様にも見えた。
 立太郎は急に恐ろしくなった。
「ごめんなさい」
 何か悪いことをした気になって謝ると、その自動販売機から離れて自転車まで戻った。


 立太郎はそれでも裸の女たちが名残惜しくなって、自転車に跨ったまま自動販売機を振り向いた。
 先ほどの鋭い眼をした若い女がセダン車のトランクを開けたところだった。
 トランクには箱詰めされた裸の女たちが大量に入っていたのが見えた。
 思わず声を上げそうになった立太郎は両手で口を抑えた。


 鋭い眼をした女は雑誌などでみた女たちとは違って恐ろしかったけれど、その恐ろしい女は車のトランクに沢山の優しげな女たちを載せて来た。
 そして今は自動販売機の中にその箱詰めされた女たちを次々と押し込んでいる。


 立太郎は恐ろしい現実と優しい夢の間で酷く混乱して立ち尽くしていた。
 恐ろしい現実の女は、自動販売機に箱詰めされた女をしまい終えたのか、自動販売機のドアと車のトランクを乱暴に閉めた。
 そして運転席に回ると、まだそこで立ち尽くしている立太郎に気づいた。


 鋭い眼の恐ろしい女と目が合った。
 立太郎は固まって動けずにいると、鋭い眼をした女は急に眉間の皺を広げて優しく微笑んだ。
 それは雑誌や箱の表紙で見た、若く綺麗な女たちと同じ顔だった。
 そして女は手招きすると、下を出して着ていた服をたくし上げた。


 立太郎は見た。
 それは初めて見る母親以外の生乳房だった。
 時が止まったかの様に感じた。
 女は笑った顔のまま服を下ろすと車に乗り込み、乱暴にドアを閉めると車を動かして駐車場を出ていった。


 立太郎はしばらく動けずにいたが、北風の冷たさで我に返ると勢いよく自転車を漕ぎ始めた。
 初めて見た女の乳房は大きかった。
 初めて見た女の乳房は大きかった。
 初めて見た女の乳房。乳房。乳房。


 空手の昇級試験に落ちた事なんかどうでも良かったし、板が割れなかった恥ずかしさなんて気にもならなかった。
 立太郎は駐車場で見た乳房のことを考えながら自転車を漕ぎ、交差点に差し掛かったところで赤信号と女の乳房にあった乳首の色が似ていると思った。

 そしてそれが立太郎の最後に考えた事だった。

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