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山メシ

今日は地元のよく登る低山、高草山に登ってきた。
この山は私にとって夏山登山のためのトレーニングの場所であり、計画を作るのを面倒くさがる私の性質では、登山口まで車で十五分しかかからないこの近場は無計画で行ける最良の山なのである。

今日この山に登る動機はいくつかあるが、まずは去年買ったレトルトのご飯を使ってしまいたいというのがひとつと、最近山用のかっこいいジャージを買ったので使用してみたいと思ったことがもうひとつである。
ジャージの写真は撮っていないが、昼食の写真は撮った。これだ。

山頂で湯を沸かし、レトルトのご飯を温めて、ツナ缶をおかずに食べることにした。ザックの中に去年の非常食であるカロリーメイトの残りもあったからこれも食べた。

このご飯を温めるのに十五分かかるのだが、待つ間どれだけ寒くなるだろう、と不安があった。いくら温暖な静岡とはいえ、登りで汗をかいて、濡れているシャツとジャージでは寒くなるだろうと思っていた。しかし、それほど寒くなかった。それがジャージのためか、単に気候が良かったのかわからない。

上の写真は食事のために座ったベンチから撮った。この景色を見ながらいつも私はカップラーメンなどの食事をする。天気が良ければ富士山が見える。手前に見える町は静岡市だ。右手に駿河湾があり、その向こうに伊豆半島が見える。
反対に西側には焼津藤枝方面が見える。

私は焼津側から登るのだが、上の一枚は途中で振り返ったときの焼津港とその周辺の町を見下ろした写真だ。この写真でもわかるように、この高草山は登りながらかなりの高度感を楽しめる。標高五百メートルほどの山だが、登山口の海抜が低いことから、高低差は充分ある。私はこの山をいつも一時間程度で登る。

しかし、冬は空気がいい。高草山は雪山ではないとはいえ、冷たい空気の中を登山するというのは気持ちのいいものだ。私は技術不足から雪山は登らないため、冬場は専ら高草山か、静岡県内の雪のない低山に登る。そのときの楽しみが山メシである。
今日の山メシはご飯とツナ缶である。レトルトのご飯が温まると、私はそれを器に入れて、ツナ缶を載せ、かき混ぜてスプーンで食べた。

画としては貧しいメシのように見えるが、山頂で温かいご飯を食べられるというのはなんとも言えない贅沢な感じがする。
今回の記事は『山メシ』と題名をつけたが、これはNHKで毎週やっている『サラメシ』という番組を意識した。あの中井貴一がナレーションをやっている番組だ。私は「メシ」という言葉があまり好きではない。「ごはん」のほうが美味しそうでいい。「メシ」だと品がない。しかし、今回『山メシ』と題したのは、『サラメシ』同様、山に登る人の「メシ」は登山者それぞれに違いがあるから、番組にしたらある程度は続きそうだと思ったためだ。いや、私はNHKの関係者ではない。ここで番組を作ってくれとお願いするわけでもない。しかし、登山者は少なからず「山メシ」を楽しみに登っていると思う。私の今回の登山も、ご飯とツナ缶という非常にみすぼらしい食事を随分楽しみにして行ったのである。本当はレトルトのカレーを持って行こうと思ったが、昨日の夕飯がカレーだったので、ツナ缶にした。
ツナ缶は優秀選手だ。一昨年、テント泊で静岡県にある南アルプスの茶臼岳に登ったとき、サバ缶を持って行ったが、サバ缶を開けると中にたっぷりとつゆが入っているため、それを全部飲むために、ご飯の上にぶっかけると、それだけで食事が終わってしまった。そのときは一杯のご飯をツナ缶とサバ缶で食べる予定が、サバ缶のぶっかけでご飯を食べきるハメになった。残ったツナ缶は山小屋で買ったビールのつまみにした。あのときは二泊して、一泊目がそのサバ缶で、二泊目がカレーだった。
カレーとは山メシの定番だが、山メシの達人は必ず、どこの山にもいると思う。そういう人々の山メシを取材してサラメシの特番にしてくれたら、普段あの番組を見ない私も見るかもしれない。

今年の夏もテント泊をしたい。
そのときどこに登るかはもちろん楽しみとして一番重要だが、そこで何を食べるかも、同じくらい重要で、考えることが楽しいのである。


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