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音とともに弾む心

ゆっくりと時間が流れる道を、カメは一歩一歩図書館へ向かって歩いていた。彼の周りには、日常のささやかな音が満ちていた。遠くで聞こえる子どもたちの笑声、風に揺れる木々のさざめき。そんな平穏な風景の中を、ふと、一陣の風が駆け抜けていった。

風が戻ってきたとき、それはもう風ではなかった。両耳にヘッドフォンを付け、生き生きとした目を輝かせるウサギの姿だった。「カメくん、今日は何の日か知ってる?」彼女の突然の問いかけにカメが首を横に振ると、ウサギは満足げに微笑んだ。「正解はミュージックの日。音楽って、私にとってはランニングの時の最高の友だわ。YouTubeやSpotifyがあると最高ね!」

リズムをとるウサギの横で、カメはその言葉に静かに耳を傾けながらゆっくりと答えた。「僕はCDで聴くのが好きだな。車に乗るといつも同じ曲を聴いてる。特典のためにシリアルナンバーが欲しくて、つい同じCDをたくさん買ってしまうからね」

ウサギは彼の言葉を聞いて、身体の動きをとめた。「カメくんは何かを好きになったら、とことん行くタイプだからね。一度引力に捕まると脱出できないというか。でもね、世界はとても広いのよ。色々な音楽を聴いてみるといいわ」

カメは彼女の言葉にうなずくと、「そうだね。僕もヘッドフォンを買おうかな。走る時に聴くのは良いアイディアだね。ランニングが楽しくなりそうだ」と涼しげに微笑んだ。そしてカメは、彼女に気づかれないように、大切なCDが入ったバッグをそっと自分の背中に隠すのだった。

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