見出し画像

日本最南端の図書館

ブルーの海に囲まれた南の島で、ウサギとカメはサンゴ礁や熱帯魚との出会いに心を躍らせていた。海を後にした二人は、温かな日差しを背にして車で南へ向かった。冬とは思えない暖かさに包まれ、二人は海の風を感じながら、海人の半袖シャツを選んでいた。

石垣市街地に着いたウサギとカメは、ビーチサンダルを履きながら、のんびりと街を散策し始めた。二人の目に飛び込んできたのは、交差点の脇にある、青く「730」と書かれた黒い大きな石だった。シーサーに守られたこの石は、どうやらこの地の名所であるようだった。

歩き続けていると、八重山諸島ならではの赤瓦の建物にたどり着いた。カメはウサギに向かって「ここは図書館なんだよ」と説明した。ウサギは「海のそばの図書館って素敵だわ」と目を輝かせながら、カメと共に図書館へと足を踏み入れた。

館内の安らかな雰囲気に包まれると「図書館に来るとなんだか落ち着くわ。我が家に帰ってきた感じがする」とウサギが言った。そんな彼女にカメは、地元ならではの郷土資料の存在を教えた。「それじゃあ、さっきの730の石のことも分かるわね」と、ウサギは微笑んだ。

二人は石垣島の郷土資料を調べ始めた。そこには、1972年の沖縄本土復帰に伴い、右側通行から左側通行へ一斉に切り替えられた1978年7月30日を記念して、730(ななさんまる)と名付けられたのだと記されていた。

ウサギは興味深く資料をめくりながら「旅はその土地の歴史に触れることでより豊かになるのね」と微笑んだ。そしてふと顔を上げると「海、歴史ときたら、次は当然ご飯よね?」とお腹に手を当てながらカメに視線を送った。カメは笑いをこらえながら「もちろん」と優しく頷いた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?