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【事例紹介】ローテク特許|越後製菓の「切り餅」


身の周りの「ちょいイラ」が発明の母。技術改良のきっかけになる

ローテク弁理士presents「ローテク特許の事例紹介」。

特許と言うと、高尚なもの、高度な技術に関するもの、ハイテクばっかり。
そんなイメージを持っている人が多いんじゃないですか? そんな誤解を払拭するべく、ローテク特許の事例を紹介していきます。

今回の事例は越後製菓の「切り餅」に関する特許。

お餅を焼いていると、お餅がぷっくり膨らんできて、中身がブシャっと飛び出しちゃう。きれいに焼けない。こんな経験は誰でもあるでしょう。

めでたい正月なのに、ちょっとイラっとする、みたいな(笑)

この「ちょいイラ」が発明の母。技術改良のきっかけになるんです。

越後製菓の「切り餅特許」


越後製菓の特許発明

越後製菓の特許発明は、四角い切り餅の側面に切り込みを入れるという非常にシンプルなアイデア。この切り込みが入ったお餅、見たことがある人も多いんじゃないですか?

この切り込みを入れることで、お餅を焼いた時に、切り込みの部分でお餅の上半分と下半分が分かれるように膨らむ。四方八方に膨らまず、まず切り込みの部分(強度が弱い部分)から膨らんでいく。だから、きれいに焼けるんです。

特許発明の切り餅を焼くとこうなる!

一方、業界1位のサトウの切り餅(佐藤食品工業)が製造販売していた切り餅がこちら。切り餅の側面だけではなく、上の面、下の面にも切り込みが入っています。

ライバル会社・佐藤食品工業の「サトウの切り餅」

越後製菓はこの特許に基づいて、サトウの切り餅を裁判で訴えました。佐藤は「横だけではなく、上にも下にも切り込みが入っている。越後の特許発明とは違う!」と主張したようですがその主張は認められず…。。裁判は越後製菓の勝利で幕を閉じました。やっぱり、高橋英樹が演ずる「越後侍」は強かった。ライバル会社をやっつけた(笑)

発明のヒントは身近なところに転がっている。ハイテクばかりが技術じゃない

それはそれとして…。

「お餅がうまく焼けない」みたいな、日常的な悩みも発明のヒントになるってことです。意外と身近なところにヒントが転がっていますよ。

そして、そんなローテク発明でも特許を取れる可能性があり、ライバル会社を制して市場で優位に立てるかもしれない。ものづくり・製造業に携わっている人はこれを頭の片隅にでも置いておいて欲しいです。

インターネット、IT、AI…。こういうハイテクばかりが注目を浴び、もてはやされる。でも、そういうものだけが技術じゃない。たとえローテクでも特許になるものは特許になる。

今までにはない考え方。他の人がしていない工夫。いつも当たり前にやっているけど、ちょっと面倒くさい、なんとなくイラッとする、そんな小さなお悩みを解決できるアイデアを小まめに出して積み重ねていく。それが新しい技術が生まれるきっかけになる。

日本人は手先が器用。ちょっとした改良や工夫も上手。ダイナミックな技術もいいけれど、「繊細なものづくり」にもっと目を向けてみてはどうですか?


越後製菓の「切り餅特許」について詳しく知りたい人はこの記事を読んでみてください。

【ローテク特許の事例】側面に切込みを入れた切り餅の特許(越後製菓)


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