[感想15]何者

やっぱり露悪的だし邪悪なんだけれど、今回は本当に洒落にしたりとか他人事にはできない結末ではあったので急いで読み切った日に書こうと思った。後回しと人任せにした仕事が待っている3連休明けだけれど、そんなことに怯えてる場合じゃないんだわ。

多種多様な就活生の模様を描いてる本作が12年出版というのもあって実際の就活事情とはだいぶかけ離れた就活の様子に今や何から何まで大改造されたTwitterでの発信内容といったところも、冷笑優位な現代で十分通用するどころか今だからこそ嫌な寝首の掻かれ方をされると思う。

SNSというプライドだけは守りやすい媒体でどう自分と向き合っていくべきか。『何者』の中では虚勢を張るというポーズだけでもいくつかパターンがあったり、時間が経つごとにどんどん軟化していく様子が見れたり、誰かのポストを掘り起こしても似たようなものは出てくるだろうなっていうのはずっと頭の中に浮かんでいた。
 客観視っていう魔法の言葉でいくらでも後出しじゃんけんをして常勝無敗が夢じゃない環境なのもあるけれど、だからと言って愚直になることも違和感を感じるのが正直な感想、て言いたいけれど必死にひねり出した言い分って言われたら言い訳出来ないかも。
 ギンジなんかは行動している自分に酔いしれているかもしれないし理香や拓人のように他人は見れても自分の事は見れない/見たくないところはわかりやすくプライドに苦しめられる人たちだし、他者に翻弄される瑞月や核になる何かがない光太郎なんかも正しいとか理想的とかは言い切れない、みんながみんな足りないところを抱えているのは自身と照らし合わせられる誰かが絞られてくるとグッと苦しさが増してくる。

タイムリーな話だと誰かが結婚した時の他人事として介入しないところも、自分の事のように目をぎらつかせて介入するところも、自分の発信したいことの捌け口のために利用していくところも、どれを見ても眉は下がるしもやもやしてしまう。もう10年近く抱えて考え続けているものと類似しているせいもあってスタンスがほぼ固まりきっているからだけれども、無意識に無自覚にプライドを守り続けている人を見れる環境が構築された今だからこそ読んでいてより苦しくなる。お勧めできない本として挙げられるのも納得の一冊。

読んだテーマを深く抱え込む形で受け取って、苦しみながら咀嚼してゆっくり呑み込んでいくのが本や映画やアニメ漫画の好きな所なんだけれど、もっと図太い見方が出来ていた方が26年間楽だったろうなあ、ていうのは毎日思う。
 それでも積み重なっている嫌な思いやキツイ事は糧になっていると思ってるし、したいとも思うからこれからも苦しんでいくのをやめられないのは決まってるんだと思う。

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