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聖書

皆さまは、辛い時に読んだり、
夜の寂しい時につい開いてしまったりする、
心の支えにしている本は、ありますか。

自分は、そういう本を、″聖書″と呼んでいます。

自分の″聖書″は、有島武郎の『生れ出づる悩み』です。これは、その″聖書″の話です。


 本を開いたら、大きな背中が見えた。
自分の前には、進路だったり、夢だったり、自分の存在価値のことだったり、
大きなことから 小さなことまで、たくさんの悩みが転がっていた。
辺りは真っ暗で、不安でたまらなかった。

そんな自分を守るように、背中は立っていた。
その背中は、ある話をしてくれた。
自分のように、沢山悩んだ人の話だ。
背中はこうも言った。

「春が来るのだ。」
「……春が?」
「冬の後には春が来るのだ。君の上にも確かに、正しく、力強く、永久の春が微笑めよかし……僕はそう心から祈る。」

自分はそれを聞いた時、なんだかひどく安心した。
そうだ、今は冬なんだ。
この寒さを耐え抜けば、春が来るんだ。
そう思うと、もう少し頑張れる気がした。

その後も自分は何度も躓いて、転んだ。
でもその度、あの背中は自分が立ち上がるまで待っていて、冷たい風から守ってくれる。


不安はまだまだ多いけれど、自分は歩いて行ける。
大きなあの背中が自分の少し先を歩いて、強くて冷たい風から守ってくれるから、きっと大丈夫。

でも最近は、風が少し暖かくなってきたよ。

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