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わたしが映画レビューを書く喜び。

ひろひろのやかましい映画語りを読んでくださる皆さん、いつもありがとうございます。

メジャーマイナー、新旧問わず、気ままに「映画レビュー」を上げている者です。よかったらご覧ください。


「映画レビュー」「映画感想」「映画紹介」「映画評論」・・・言葉は違えど、今やたくさんの方が映画について語ることが当たり前の世の中になりました。切り口は実に様々で、1つの映画に対して、大絶賛している人と、酷評している人とが、一堂に会して楽しめるさまは、本当に時代の良い側面だなぁと思っています。

この記事を読んでいる方の中にも一度や二度、またはそれ以上に「映画レビュー」をしたことがあるかもしれません。
皆さんは、そんな「映画レビュー」を書くときに、または読むときに、どんなことを考えていますか?

今回は映画レビューをメインコンテンツとして上げているわたしが、映画レビューを書くときに意識していること、またその楽しさを、ちょっぴり紹介してみたいと思います。


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「映画を観ること、またその映画を布教すること」

何かのプロフィールに書いた、わたしの「趣味・特技」です。案の定、「布教ってなんですか・・・?笑」と食いつかれた記憶があります。

わたしにとっての「映画レビュー」は、それすなわち、その映画の布教活動です。映画が面白いかどうかはどうでもよくて、人が知らない情報を披露することもどうでもよくて、ただただ「こんな映画もあるんだ」と誰かが思ってくれる=布教ができることを目的としています。

しかし、それであれば単に映画のタイトルとポスターだけをひたすらにアップしていれば良いでしょう。

わたしの目指す"布教"をもっと厳密にいうならば「こんな映画の"見方"もあるんだ」と誰かが思ってくれること、これに尽きます。


この「映画の見方」ということに着目したのは、母校の大学で教鞭を取られていた万田邦敏監督の影響です。映画監督であり大学教授の万田さんは、立教大学の映像身体学部で人間そのものについて探求していく、ことを目的としたユニークな授業を展開しています。
わたしはこの学部の卒業生ではありませんが、週に1回彼が主催する"映画鑑賞会"にひょこひょこと顔を出し、学部生でもないのに教授の部屋まで付いていってはご飯をご馳走になりながら映画の話に花を咲かせていた時期がありました。コロナ前の良き思い出です。

ここで万田さんがよく口にしていたことが、映画の見方を知ったら、映画はもっと面白くなる、ということでした。(※意訳あり)

映画の感想を聞くと、「感動した」とか「興奮した」なんてことをよく言う人がいるけれど、一体何を見て「感動した」のか。何のシーンに「興奮した」のか。その「感動」や「興奮」に至った映像そのものについて言語化している人は実に少ない、と仰っていました。

この発想にわたしは目からうろこ、万田さんのような知識や経験はありませんが、自分なりの「映画の見方」を習得し布教するために、映画レビューを書き始めたわけなのです。


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たとえば・・・

「主人公Aが夢を掴む姿に感動した。」

というレビューがあったとしましょう。
このレビュー自体に何も間違いはないのですが、これは鑑賞者本人の気持ちの布教であり、映画それ自体の布教ではありません。

わたしが目指したい「映画の見方の布教」に則るならば、

「主人公Aが地平線から昇る太陽を見つめる後ろ姿に感動した。Aにとって太陽は〇〇という夢のメタファーと捉えることができ、これと真っ直ぐに向き合うことができたという成長は実に尊いものである。
この瞬間、観客はみなAが夢を叶えたと確信し、その安堵から喜びの涙を流すのだろう。」

とかいうレビューになるのです。


ポイントは、感動した対象を捏造しないことです。
「主人公Aが夢を掴む」というのは、鑑賞者が勝手に読み取ったことであり、夢を掴む映像それ自体はないのです。

映画は観るものであり、読み取るものじゃない、とまでは言いませんが、何を"観た"のかを記すことは、映画にとってとてもリスペクトある行動だなと、わたしは思います。

「映画に無駄な映像なんてないんだ。開始1秒から監督は何を映して、何を映さないかすべて考えている。」
実際に監督として映画を撮る万田さんだからこそ言える台詞だなぁと思いました。

鑑賞者が読み取った「夢を掴む」の実態は何なのか。例に挙げた通り、日の出を望む姿なのか、はたまた敵を倒した瞬間なのか、最愛の人とのキスシーンなのか・・・これを明らかにすることは、とても意義のある行為なのです。

これを踏まえ、その映像がどんな効果を持っているのかを伝える、これこそが「映画の見方を布教する」ことの意味であり、レビューする人の腕の見せ所でもあるというわけですね。

万田さんとの出会い以降、こんなことを考えるのが、わたしは楽しくて堪らなくなってしまいました。(やかましい映画オタク爆誕☆)


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念のため断っておきますが、これは「正しい映画レビューとはこうだ!」という話ではありません。

映画レビューは多様であればあるほど面白く、表現する人それぞれに違った味があることがベストだと思っています。

淀川長治を源流に、オタキングこと岡田斗司夫なんかは、「映画の見方」を紹介するタイプです。一方、アトロクでお馴染み宇多丸さんの映画評論や、映像作家の柿沼さんが主宰するYouTubeチャンネル「おまけの夜」なんかは、「映画の読み方」を見事に言語化してくれるタイプだと思っています。どの表現も本当に素敵です。

すべて根底にあるのは作品の「布教」だと思いますが、中でも「なるほど、そんな見方ができるのか!」と思っていただけることが、わたしにとっては大きな喜びであるため、どちらかといえば前者の手法を意識している、というだけです。

無論皆さんお察しの通り、必然的に文章は長く、回りくどく、面倒なレビューばかりが出来上がってしまうため、自分のレビューには「やかましい映画語り」というタイトルをつけています。これは我ながら良いセンスだと自負しています。笑

とはいえ、実際にこの想いが読者の方に正しく届いているのかどうか定かではありません。長ったらしいレビューばかりで、万人ウケするレビューは書けていないなぁーなんて思うこともしばしばです。


が、先日とても喜ばしい出来事がありました。

そう、わたしのレビューに「素晴らしい」という評価をしてくださった方がいたのです。


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それは今から2年前にアップしたわたしのレビュー。
東京国際映画祭の学生応援団という、学生広報部の10期生として活動していたときのこと。『クレーンランタン』というアゼルバイジャン映画のレビューをわたしが担当して執筆していました。

作品はとにかく難解で、映画祭に足を運んだ観客の多くが「よく分からない映画だった」というレビューを上げています。笑
正直わたし自身も、これを理解した!という気はまったくないのですが、上記の通り、映し出された映像と、その映像の効果を解釈し、それによってどんな気持ちを抱いたのか、この独自ルールに則りなんとか世に出せるレビューを書き上げた記憶があります。

それから2年後、今年の映画祭で同監督の新作『鳥たちへの説教』という映画が上映されていたそうで、その新作を鑑賞した方のレビューの中に「2年前に学生が上げていたレビューが良かった」というコメントがあったのです。

映画レビューをした甲斐があったなー!と思いましたし、何よりこの2年間、その方の記憶の中でわたしのレビューが生きていたという事実が、本当に嬉しかったです。いつかその方がこの記事に辿り着く日もあると信じて、お礼を述べておきます。ありがとうございます。


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さて、いろいろとそれらしいことを書きましたが、結局のところ「映画レビュー」とはその人の自己満記録であり、他者から評価されればウハウハと嬉しくなるものです。業界側の人間で、誰かに依頼されて書かれたレビューではない限り、それは"布教"でも何でもなく、ただの変わった趣味に過ぎません。

ですが、誰に頼まれたわけでもない素人の映画レビューが、作品の公式プロモーション以上にその良さを引き出し、誰かの映画を見る目を変えさせる働きが(稀に)起きることがあります。

実際に、わたしもそうして好きになった映画が何本もあり、見ず知らずの映画ファンに布教され続けている身であることは間違いありません。

自分の映画レビューで誰かの心を動かせたら・・・なんて考えは、おこがましいことこの上ないですが、新しい映画の見方に一役買えることを願って、わたしは細々と映画レビューを続けていくつもりです。

その評価は2年越しかもしれませんが。笑
たった2年待つだけでこんなに嬉しい言葉をいただけるのであれば、レビューを続ける甲斐があります。


わたしが映画レビューを書く喜びは、ひとえに「良いレビューだ!」と評価してもらえることに他ありません。ですが、それは文章が上手いとか、言葉を知っているとか、知識があるとか、そういうことの評価ではなく、その作品と一心同体となって、誰かの記憶に残っているかどうか、そんなレビューを書けているかどうかがとても重要だと思っています。

今日もこのnoteをはじめ、皆さんの映画レビューを拝見しては、はぁ~すげぇレビューだ・・・と、盗みたくなる文章表現に溢れています。わたしは現在、モノ書きの人間でも、映画業界の人間でもありませんが、誰にも負けない映画愛を持って、世界中の作品と向き合い続けていく所存です。

相変わらずの不定期更新ではございますが、わたしのレビューが、作品と手を取り合って誰かの記憶に生き続けますように。

皆さまの温かい目を、今後ともよろしくお願いします。


以上、"やかましい"お話でした。笑


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【諸々気になった方のための参考ページ】

◎万田邦敏監督



◎立教大学 現代心理学部 映像身体学科


◎淀川長治


◎岡田斗司夫


◎ライムスター宇多丸(アトロク)


◎柿沼キヨシ(おまけの夜)


◎東京国際映画祭


◎東京国際映画祭 学生応援団
(今年は12期, 13期の孫, ひ孫世代が頑張っていました。お疲れ様!)


◎映画『クレーンランタン』


◎映画『鳥たちへの説教』


◎褒めてもらえたひろひろのレビュー(ちゃっかり)


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