愛すると言うこと①

私は夫がいなければ生きていけないと思う。これは切実な問題であり、夫に万が一なことがあれば私は恐らく死を選択することになると思う。
 誤解のないように初めに言っておきたいのだ。私は夫と結婚して心から良かったと思うし、この人以外ありえないと思う。それくらい、私は夫を頼りにしていて、私の人生にこの夫は必要不可欠で、この人以上に自分のことを理解してくれる男性はこの世にいないと思う。そしてこの先死ぬまで一緒に居たいと思う。例え夫が病に伏しても、突然無職になっても、変わることなく愛する自信があるし、支えたいと思う。これは紛れもなく私の中で、夫のことを誰よりも愛している と言える。

 私たちは、2年半の恋人期間を経て結婚して今年で数年目(あえて年数は控えさして頂く)になる。
 好きになったのは私の方で、初め夫は私に微塵も興味はなかった。夫の好みはガッキーや、石原さとみで、私は間違いなくそういったいかにも女の子らしい可愛い感じはない。一見気は強そうだし(強いかどうかは別として)親しみやすいタイプてまはなと自覚している。いつも人から、話しかけにくいだの、キツそう、だの言われる。もっともそれは話してみたら全然違う、という後付けフォローがあっての話だが。そしてガッキーや石原さとみのようなタヌキ顔ではなく、キツネ顔だ。まぁそんなことはどうでもいいにして、とりあえず夫は私がタイプの女子ではなかった。(その時はまだ女子だった)
 とはいえ、私が夫をタイプだったかといえばそれも微妙なラインである。顔も特にタイプではなかったし、何が良かったのか、これだけはもぅ直感としか言いようがない。穏やかで、よく笑い、背が高く清潔感があり、食事の際や会話の端々、一緒にいるとどことなく育ちの良さが垣間見られた。そして常識的であった。この人となら、素の自分でいれる。自分を必要以上によく見せようとしたり、着飾ったり、する必要のない人だと思った。もちろんいい意味で。

 しかしいかんせん相手が自分に興味がないと話にならない。恋愛は、当たり前だけど相手と自分の気持ちが交わって初めて成立する。ここからは私の鬼チェースで、色々紆余曲折を得て、出会って2ヶ月程で付き合えることになった。

 つくづく私は打算的な人間であると感じる。
夫と出会った時私は20代半ばで、年齢的にも周りも結婚していき、子供がどうのという話題もチラホラ出始めていた。若い頃はそれこそ、カッコいい、優しい、なんとなくフィーリングが合う。などと言った理由で一緒になれる。しかし、私は結婚がしたかった。この人と結婚がしたいと思った。それはあまりに自分勝手な言いを承知で言うと、彼がなんでも許してくれる、怒らない、何かを強要しない、そして1番は、彼が都心に住んでいたことだ。私はその頃地元の田舎から電車で毎日片道1時間半かけて百貨店まで通勤をしていた。そして、昔から都会に強い憧れがあった。絶対に、都会の人と結婚して都会で暮らしたい、という願望があったのだ。元々は地方の人で、大学から都心に出てきているだけの人であったが、地元(田舎)に帰るつもりはないという言葉を聞いて、この人しかいないと思った。また、職種が安定していたところも大きなポイントであった。
誤解のないように、かつ赤裸々に言っておくと特に私はお金持ちと結婚したいという願望はなかった。なので夫には失礼だが、特に夫が高所得だとか言うわけではない。年相応の平均的な、しかし安定した職種のサラリーマンであった。
そしてなにより、私と違って金銭面でも堅実なタイプの人間であった。(当時の私はあればあるだけ使ってしまうタイプで貯蓄が出来なかった。言い訳としてアパレル、百貨店には様々な誘惑があるとだけ言っておく)
 こうした、私の打算的なメリットで、私は夫と結婚にまで漕ぎ着けた?わけだか、正直、夫にとって私と結婚するメリットは皆無であったと思う。
短気だし、優しくないし、可愛げもない。そのくせ、気が弱くネガティブ。相手には異常なほど求めるくせに自分は何も与えることができない。
しかしそんな私を夫は今でも広い心で受け入れてくれている。

 ある時夫からこんなことを言われた。
なんで私に怒ったりしないの?と。すると、夫はこう言った。

「良くも悪くも俺は初めから芽衣子に何も期待していない。人ってのは他人にこうあって欲しい、こうして欲しいと期待するから、自分の思った通りの期待が得られないと腹が立つんだと思う。そもそも恋人出会っても、夫婦であっても所詮は他人で別の人間なんだから、相手に何かを期待するのはエゴでしかない。もっというと初めから期待していなければ、腹も立たない」

それを聞いて悲しいのかなんなのか、複雑な気持ちに多少はなったが、これは真理である。しかし、これが実際に気持ちのコントロールとして実践できる人間は少ないと思う。
そして私は自分のことは棚に上げて、過剰に夫に期待する。そして思う結果が返ってこないと怒ってしまう。

私は人間らしいほどに人間らしく様々な感情を露わにするが、夫は反対に人間味がなく、いつもフラットだった。見方を変えれば冷酷、にすら見える時があった。しかし、冒頭に戻るが、夫以上に思いやりに長けた、いや、思いやりなのだろうか。道徳心に満ちた人間には未だかつて出会ったことはない。
 私が突如アパレルを辞め、看護師になりたいと言った時、夫は二つ返事で、「いいんじゃない。やってみれば」と言ってくれた。そして看護学校にかかる学費などの費用を恥ずかしながら工面できなかった私に、全額を援助してくれた。
夫がいなければ、夫と出会っていなければ私は看護師はなれていなかったし、なろうとも思わなかった(これはいずれ後述させて頂く)今の私があるのは本当に夫のおかげだと心から思う。

 愛している。夫が1番、この世で大切で、必要で、自分勝手だと思われようがなんだろうが一生一緒に居たいと心からそう願うのに、私は夫を裏切る、いや現在も裏切り続けてしまっている。

 

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