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幼なじみの“チャーハン”

ぼくにとっては特に

休みの日の昼間

何となく無性に食べたくなる

それがチャーハンだ


チャーシュー ネギ 玉子

その他の具は作り手の好みで

決してバランスが良いとは言えない

飾り気のないその料理には

どうしようもない ノスタルジーがある


『おう、久しぶりだな。まぁ座れよ!』

チャーハンは言う

ぼくはその つやっと脂を感じる表情に

少し安心して席につく


『どうしてた?いま何してるんだっけか?』

水を並々と注ぎながら チャーハンは続ける

『あぁ、ごめん冷めるから食べてからな!』

反応するちょっと前に

ぼくの気持ちを汲み取っていく チャーハン


口に運ぶレンゲがもどかしい

ネギが香る油 玉子をまとった米粒が

ちょっと味の濃いめなチャーシューと

口から鼻に抜ける ため息になる

しあわせで漏れてしまう 例のため息

(んふーーーーっ!!)


たぶんちょっとの気まずさとか

知らないアイツになってたらどうしようとか

そんなもんはお互い様で

だけど 口に運んだそのひとくちで

吹っ飛んでしまうようなもの


『おれ、変わんないだろ?笑』

向かいに座るチャーハンは

イタズラっぽく ちらっとぼくを見る

『そだな。笑』

呟くぼくに チャーハンは

うんうんうん、と頭をカクカク振って

『いいから、食えくえ!』なんて

ニヤけた笑顔を見せている


(あぁ、ぼくはコイツのこの感じが

たまらなく好きなんだな…)


好きなんだけど

ちょっと単調なその味に

『お前、ちょっと面白味にかけるよなぁ笑』

なんて意地悪な悪態をついてみる

そんなときチャーハンは

へへへっ、なんて鼻で笑いながら

『そんなこと言って。

またすぐ会いたくなるぜ、おれに。』


いつも最後のひとくち分が

レンゲにのりたがらないのは

アイツも寂しいってことなのかな

『またな!元気でな!』


幼馴染みのような ぼくのチャーハン

面白味にはかけるけど

安心感のある元気をくれるその味が

今までもこれからも

ぼくのそばにありますように





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