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試合前のエナジードリンクはパフォーマンス低下の原因に

近年、エナジードリングが多種類販売され、いつも以上の頑張りをしたいときに飲むドリンクのようにイメージがあります。

長距離選手など、大一番のレース前に、火事場の馬鹿力が出ることを期待して、レース直前にエナジードリンクを摂取する選手も多くいます。

実はこれは非常に危険です。

エナジードリンクはカフェインが多く入っているため、興奮作用や覚醒作用があります。しかし、それ以上に糖分が多く入っています。その量は、40 gを超える砂糖またはブドウ糖果糖液糖が含まれており、コーヒーに入れる砂糖スティック10本以上の糖分を一気に体内に摂取することになります。

それによって、急激に血糖値が上昇します。

血糖値が上昇すると、身体の中ではインスリンというホルモンが膵臓から分泌され、血糖値を下げようとします。さらに、運動を始めると、運動による糖分消費と、インスリンによる血糖値の降下が相まって、低血糖になる恐れがあります。

加えて、試合本番では交感神経優位になっており、血糖値も変動しやすい状態にあります*1。

よって、普段の練習時などではエナジードリンクを摂取しても低血糖にならない場合でも、レース本番での状態では低血糖が起こりうるということが起こり得ます。


これが試合前のエナジードリンクを摂取する危険性です。

実際、大学駅伝の大きな大会で、レース前にエナジードリンクを飲んで、スタートし、5 kmくらいで低血糖になり、意識朦朧となり棄権せざるを得なかった例もあります。



カフェインは興奮・覚醒作用があるため、ここ一番での頑張りを期待するときには有効であると思われます。

ただし、同時に糖分の摂取を控えた方がよいと思われます。

ここ一番頑張りたいときは、本番当日のスタートから3時間以上前に、カフェインなどを含む栄養ドリンクなどにすることがおすすめです。




*1: Trends Neurosci. 44, 189–202 (2021)