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「よりピュアなXRの開拓」ーーXRエンジニア・松原達郎の考える、技術者にとっておもしろい「ビジネスXR」

「XRが当たり前の世界をつくる」をミッションに掲げるSynamonは、お客さまとともに「ビジネスXR」の先端事例をつくり続けています。しかし、ビジネスにおける確立した事例の少ないXRにおいて、企業の取り組みの一つ一つは未知への挑戦。Synamonは、パートナーとしてXRの未来を示す存在でなければなりません。

今回お話いただくのは、テックリードの松原さん。Synamonが「未来を示す存在」であるために必要な技術開拓と事例創出を行う「R&D」を担当しています。(松原さんが書いたテックブログの記事もよかったらご覧ください!)

このnoteでは「VR」が一般的な単語として定着するずっと前から「バーチャルリアリティ」の研究を行なっていた松原さんが考える、技術者にとっての「ビジネスXR」のおもしろさについて聞いていきます。

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松原 達郎(まつばら たつろう) (@blkcatman
研究機関でのバーチャルリアリティの研究をきっかけにVR業界に入る。その後民間企業でのカジュアルVR向けコンテンツ開発を経て、Synamonへジョイン。組織ではテックリードとしてR&Dを担当。SynamonにおけるXR技術の調査・選定と汎用化のキーマン。

ミッションは「解像度高く、XRの未来を示せる組織をつくる」

——松原さんは、テックリードとして主に「R&D」を担当されています。まずはその話から聞かせてください。

松原:SynamonでのR&D開発は、先端技術の集まるハイエンド向けXR領域を中心とした技術調査、及び、Synamonのお客さまと共にXRソリューションの研究開発を行なっています。これからのXRの可能性を拓くきっかけを創出する事業です。

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株式会社Synamon_会社説明資料 / Culture Deck より

——Synamonにおける、R&Dの存在意義はどういったところにあるのでしょう?

松原:R&Dは、Synamonがお客さまに対して「XRの未来をより解像度高く語れる組織であり続ける」ために存在していると考えています。

「XR」という技術領域においては、これまで私たちが主戦場としていた「VR」との違いを説明しきれておらず、まだビジネスへの活用も確立されているとは言えません。そのため、企業の取り組み一つ一つが未知へのチャレンジなのです。そんな中で、お客さまが「XRに投資する」という意思決定をするには「今、 何ができるか」をお互いに理解することに加えて「これから何をやっていけるか」という未来を見ていく必要があります。

そのためには、Synamonが「XRとは何を実現できる技術か」を具体的に示せる存在である必要があります。そこで、最新技術や高難易度な技術調査を率先して行い、組織に知見を蓄積していくためにR&Dが存在しています。

——未来を見据えるために、先陣を切っていくような存在なんですね。

松原:はい。正直なところ、まだデバイスの技術的な制約を受けることが多いのがXRの現状です。デバイスの性能が悪く、体験できるコンテンツの品質が低いと、初めて体験された方にとって「XRっていっても、この程度だよね」という第一印象を持つことになり、今後のコンテンツに期待が持てなくなります。

——確かに……ワクワクしないというか。

松原:ええ。一方で、まだ一般市場に下りていないだけで、ハイエンドXR領域の最先端には、これまでとは一線を画す体験ができるようになっています。ですが、それを知っているのは現在のXRの先端技術を開拓している一部の人たちだけです。素晴らしい体験がもうそこまで来ているのに、提供されず、知られなかったからワクワクできなかった、XRに投資しようと思えなかった、ってすごくもったいないですよね。

——印象だけを頼りにして、知らずに損しているのはもったいないですね。

松原:Synamonのミッションにある「XRが当たり前の世界」をつくるには、世の中にXRの活用シーンが溢れていく必要があります。その一つ一つをつくるのは、先陣を切ってXRに投資すると決めた企業です。Synamonがワクワクする未来を語る存在になることで、XRに投資しようと思う企業が生まれることを増やしていきたい。そんな未来のきっかけを探し当てるのがSynamonのR&Dのミッションです。

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VRのない時代から、バーチャルの研究を行う

——ところで、松原さんのVRとの関係性はどこから始まったんでしょう?

松原:私は出身大学で「感性工学」という領域を専攻し「バーチャルプロトタイピング」というコンピューター上でのプロトタイプ開発を研究していました。この研究に携わったことが、VRに関わるきっかけです。

——大学時代というと10年近く昔の話ですよね。そんな昔から?

松原:はい、安価なVRヘッドセットが普及して「ヘッドマウントディスプレイを通してVRを体験する」ことが一般的になったのが2010年代ですが、それよりもずっと前から「バーチャル」とは関わってきていますね。

——VRがまだ一般的でない当時はどんなことをやっていたんですか?

松原:ざっくりいうと「バーチャル空間に存在する物体を、人はどう評価・判断するか」というテーマで研究をしていました。光沢感、ざらつき感といった、視覚に訴えかける要素の研究です。人間はどの要素を、どう感じとることで、映像と実物の評価が結びつけていくのだろう、といった内容です。

——仮想の物質を本物に見せるには……みたいな?

松原:そうですね。

——研究機関から、企業に移ったのはどういった経緯があったんですか?

松原:2014~16年くらいの間に、コンシューマー向けのVRガジェットの普及が起こりました。ゲームではPlayStation VR、PCデバイスとしてのHTC ViveやOculus Rift、モバイルではハコスコ、Gear VR、Oculus Go。ガジェットの急速な普及により「研究者が扱う、アカデミックなもの」から「一般消費者が接点を持てるもの」に変わる、VRブームの転換期があったんです。

その時私も、次は消費者向けに市場が拓かれていくのではないかと感じ、研究機関から企業に移り、toC向けのVRコンテンツ開発に携わりはじめました。

ガジェットの変遷を追って。「よりピュアなVR」の開拓

——そこからSynamonにジョインされて、toCからtoBにフィールドを移す形になりましたよね。その時は、どんな考えがあったのでしょう?

松原:toCとtoBで大きく違うのは、ターゲットにするデバイスです。toCのVRのメインはスマートフォン向けVRです。誰でも持っているので、巨大な市場になり得ますからね。そして、toCでVRをやることの技術的な注目ポイントは「スマートフォンのスペックの範囲でいかに表現するか」になります。

——スマートフォンのスペックも上がり続けていますが、やはり制約が多いんですね。

松原:そうですね。toC向けのコンテンツ開発も楽しいのですが、やはり「スマートフォン向け」というマシンの制約を飛び越えたいと思うことも多々ありました。マシンの制約を受けず、よりピュアなVRの可能性に挑戦したいと思っていたんです。

——高いスペックのマシンを対象にした開発がしたい、というのがきっかけだったんですね。

松原:はい、そのタイミングで「ビジネスへの活用」を掲げていたSynamonと出会いました。Synamonのことは入社よりも前から知っていて、XRを活用したい企業様と共に先端事例を発表しているのも目にしていました。ここならより扱える技術の幅が広がりそうだと思ったんですよね。

——聞いていると、ガジェットの変遷に合わせた市場選びをしているとも言えそうですね。

松原:私がSynamonにジョインする頃のガジェット事情は、ちょうどVarjo(ヴァルヨ)XR-3という「人の眼レベルの超高精細」を描画できるXRヘッドセットが発表されたりと、ハイエンド向けXRヘッドセットの市場が盛り上がるタイミングでした。

——ガジェットに関する情報も都度キャッチアップし続けていたんですか?

松原:ええ、「XRという技術領域」への興味はもちろんですが、そもそも「ヘッドセットというハードウェアそのもの」への関心が高いんです。

——ハードウェアとしての興味!なるほど!

松原:言ってしまえば、時代を変えるおもしろいおもちゃですよ。当初はアカデミックの世界で研究するために、数千万円規模の設備をもってやるしかなかったバーチャル領域の技術が、技術の進歩とともに数十万、数万、とだんだん消費者にカジュアルに展開され、さらに今はハイエンド向けが熱く、ビジネスでのユースケースも創出されてきている。そんなおもしろいおもちゃの流行り廃りをウォッチし続けていた結果、今のキャリアになっているとも言えるかなと。

——ハイエンド向XRの環境に移った今、どのようなおもしろさを感じていますか?

松原:ハイエンド向けXRはあくまで「この先訪れる未来」に向けた研究の側面が強く、実際の開発は主にミドルレンジを意識しています。例えばSynamonの開発する「NEUTRANS(ニュートランス)」は、Oculus Quest 2にスコープを切って開発しています。ただ自由にやるだけではなく「今実現可能な最高峰の技術」と「普及可能なデバイスで実現できる技術」の折衷点を探すというのもtoBならではのおもしろさじゃないでしょうか。

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”ビジネスXR”の技術基盤へ…社内で始まった新しいチャレンジ

——テックリードとして、これからSynamonをどうしていきたいですか?

松原:引き続き、技術の意識レベルを高めていくのが私のミッションです。もともと技術力の高い集団ですし、技術とビジネスとの掛け合わせを得意とする人が集まっています。そんな組織だからこそ、より技術の可能性を知り、高めていくことが組織の天井をなくすことにつながるのだと考えています。

——具体的に、どんなことに取り組んでいますか?

松原:R&DでのPoC開発やソリューション開発を効率化するための仕組みをつくるという新しい取り組みが始まっています。具体的にどういった仕組みにしていく、どんなものを開発をしていくかは目下検討中ですが、現在はチームで作業を行う環境を整えている最中です。

——どのような経緯で、その取り組みが始まったんですか?

松原:これはR&Dに限ったことではないのですが、技術検証をするためのプロトタイプを作るのが大変で、アプリケーションとして作って試したい機能が増えてくると開発期間が雪だるま式に増えていきます。こういった問題を解決できる仕組みが作りたいなぁというのがきっかけでした。

例えば、継続的にメンテナンスされる技術基盤を整備することができたら、開発のたびに似たような機能を作りなおしたり移し替えたりする手間を省け、即座にソリューション開発に取り掛かれるようになりますよね。

構想中ではありますが、「多様な技術の汎用化」というテーマはソフトウェア開発としてもチャレンジがありますし、実現したらよりSynamonらしい価値提供に専念できるようになるんじゃないかと思っています!

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吹っ切れている人が多いですね(笑)

——Synamonらしさ!松原さんから、Synamonはどんなチームに見えていますか?

松原:Synamonのエンジニアチームは、技術力の高い優等生が集まっていると思います。ちょっとしたカルチャーショックも感じつつ。

——というと?

松原:私が大学で研究に従事していたころは、バーチャルリアリティに関連する領域は一癖も二癖もある人たちが熱心になって取り組むような領域だったんですが(笑)

——なるほど(笑)

松原:今も多少ニッチさは残っており、業界全体から見るとマイノリティーではあるものの、特別なものではなくなっている感じがしています。XRは当たり前のようにエンジニアが取り扱う技術になってきていますね。

——エンジニア以外だとどうでしょう?

松原:BizDevはふっ切れている人が多いですね(笑)代表の武樋なんかは特に。創業前のキャリアは生粋のXR技術者ではないにも関わらず、私のようなアクの強い技術者とも目線を合わせて話せるのは驚きます。一緒に仕事をしていて気持ちがいいですね。

基盤整備とソリューションへの拡張を共に考えたい

——そんなSynamonですが、これから松原さんはどんな人と出会えると嬉しいですか?

松原:キャリア指向は重要かなと思います。XRは先端技術と言われていますが、少なくとも特別なものという時期は抜けています。この先、ただXRをやっていることがアイデンティティになるとは言えないでしょう。

そうなってくると、技術領域に囚われずにおもしろいキャリアを形成し続けられている人は魅力的に感じます。技術発信に限らず、語学や資格取得みたいなことに取り組んでいる人もいいですね。

——技術以外のキャリア形成にも積極的に取り組んでいる人ですね。

松原:あとは……個としてのスキルアップはもちろん、マネジメントにも視野を広げる必要があるのかなと思います。Synamonでは全てのエンジニアが当たり前のようにXRの技術開発に従事しており、その組織の可能性を引き出せるマネジメントが視野に入ってる人と出会えると心強いですね。

——Synamonに入社するとどんなチャレンジがありますか?

松原:ミドル〜ハイエンドデバイスを対象にした、高い技術ベースの開発に挑戦できる環境があります。また「先端技術としてのXR」と「ビジネスソリューションとしてのXR」の両方の視点を持ってチューニングしていく楽しさもあります。技術的な目線ではなく、それが活用されるビジネスの視点を取り入れながらの開発はチャレンジングです。

また、XRを”ビジネス”としてやれるのは国内スタートアップでは非常に珍しと思いますね。多様なビジネスにXRソリューションを提供するというのは、毎回いろんな挑戦があって楽しいですよ。今この世にあるXRの技術を基盤から整備し、さらに拡張してビジネスに活用することに興味がある方は、ぜひお話ししてみたいなと思います。

——松原さん、ありがとうございました!

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Synamonは、Unity / C#エンジニア、テックリードを中心に新しい仲間を募集中です。「XRが当たり前の世界をつくる」というミッションに共感したメンバーが、切磋琢磨しながら日々挑戦しています!カジュアル面談も実施中なので、ご興味ある方、お気軽にご連絡ください。

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編集協力:TELLIER