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好みの問題(容姿コンプレックスOrigin22)

好みの需要と供給と

 容姿に対するコンプレックスが、フェティシズムを含む人々の好みに対する興味関心に結びついていった、という話のつづき。

 先輩の詩人が目の見えないご友人にあたしのことを「とてもきれいな人」だと大ウソこいて紹介したって話 以来、グダグダと考えていたのですが、しかしこの日、盲目の歌手が、心の中に思い浮かべた”美女SYNDI”がどのようなものか、知る術はないわけなのでした。

 案外彼は自分の友人であるその詩人の好み知り抜いていたりして、どんぴしゃ”生意気な目つきの背の低い女”を思い浮かべたかもしれない。

 あるいはふかふかの体をしたしもふりお肉優先の女。
 あるいはアスリートタイプの、赤い筋肉優先の女。
 あるいはDNAからしてが欠点の少ない骨格優先の女。
 あるいはちょっと特殊なにおいを発する女。
 あるいはほとんど無臭の女。
 髪の毛がふにゃふにゃで天然パーマの女。
 髪の毛がさらさらで肩先でぴんぴんと跳ね踊る女。
 剛毛でずっしり重量感のある髪の毛の女。
 顔が夏みかんのように小さい女。
 額がありんこの運動会に使えそうに広い女。
 汗ばんだ体温の高い女。
 さらさらで冷たい肌触りの女。

 きりがないですけども。それらの順列組み合わせ。

 なるべく目の不自由な人がこだわりそうなメニューにしてみたけど、もしかしたらこだわるところがじぇんじぇん外れているかもしれないし。つめの形とかかも知れないしー。あああああ。

 ともあれ。
 他人のイマジネーションの中で、いかようにも変容するかもしれない自分の姿を思って、あたしはたじろぎました。
 なんかね、長年文通していた異性の友達に、写真を送ってしまったばっかりにその関係がギクシャクしちゃった、みたいな、そういう微妙なおそれの気持ち、危うさのようなものを感じたのです。

 「この歌手には一生会うことはないだろうな」
 と、あたしは思いました。
 そして、実際会っていません。

 ついでに、その先輩の詩人ともなるべく会いたくないな、と思いました。
 彼が自分にとっては、まったくいい男ではなかった・・・・好みの男性ではなかったからです。好意を向けてくれても、返すことができそうもありませんでした。

 「困ったぞ」あたしは思いました。
 せっかくきれいだと思ってくれる人がいても、あたしがその人を美しいと感じるとは限らない。ましてほれるかどうか、まったくわからない。

 この世界、もしかして美的な需要に適切な美が供給されるって至難の業なのではないか?
 要するに、あたしはあたしの好むところの男子に好まれることはあるのであろうか?
 そうでないと、たとえこれほどにいろいろである”好みの世界”にあってしても、あたしって美人にはなれないわけだ。
  
 しつこいコンプレックスの旅はつづくのでありました。
 なんてめんどくさい(っていうか”イタイ?)女だと思うかもしれませんが、まあ劣等感なんてものはこんな風なんですよ。

つづく

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「モノ書くコドモ」から「モノ書くおばちゃん」に至るまでに否応なしに書いたボーダイな駄文を、モノ書くばーちゃんが読みやすいプラットフォームに…

おひねりをもらって暮らす夢は遠く、自己投資という名のハイリスクローリターンの”投資”に突入。なんなんだこの浮遊感。読んでいただくことが元気の素です。よろしくお願いいたします。