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おばけのいたずら#2

 アパートにYがやってきた。「夜遅くにごめんね」彼が僕の部屋に来たのは初めてだった。

 そして驚いたことに渦中のその子を連れて来ていたのだった。どうりで到着が早かったわけである。僕のアパートからもそう遠くはないその子の住んでいるアパートで一緒にいたらしい。

 僕らは唖然としていたが、すぐに事態を察した。彼らは困っていたのだった。付き合ったのは良かったのだが、Sの想いも知っていたので公表もできなかったようだ。そこから四人での話し合いが始まった。

 要はSにどう伝えるか?であった。男達は僕を含めみんな同じ軽音サークルの所属で隠しておくのも限界があっただろう。「正直に付き合ってること伝えるしかないだろうな」他人から聞くよりも本人達の口から聞いた方が良いと思った。

 あとは伝えるタイミングを考えたりした。Sの傷を少なくしたいと思ってはいたと思う。あとは自分の保身は考えていただろう。

 4人で話をしている間にも酔っ払ったSから僕のところに電話がきたりした。僕はYたちに声をひそめるように目配せをした。僕は「さっき言った通りだよ」そう伝えて電話を切った。

 やがてYが「俺が伝えるよ」と言い出した。僕はSが告白して散ったほうが良い、そしてほとぼりが冷めたら付き合ってること公表した方が良いのではないかと提案したがどうもそれには同意できないようだった。

 Yはその子に負担になるような展開にしたくなかったようだった。「だったら早めに片付けた方がいい」隠している時間は双方の傷を大きくしかねないと思った。

 それが僕らの出した結論だった。 

 しかし、考えてみれば実に残酷な光景だったと思う。相手のことを考えているとはいえ、酷な現実を突きつけるための話し合いだったのだ。しかも2組のカップルがそれを話し合っている。Sが見たら絶望したことだろう。

つづく

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