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おばけのいたずら afterword#1

 僕たちは大学を卒業しそれぞれの道に進んでいくことになった。

 僕は卒業とほぼ同時に恋人とは別れることになった。お互い結婚すると思っていたのではないかと思う。双方の両親含め誰もが結婚すると目されていた。でも別れはやってきた。

 お互いにその当時は捨てられないものがあったと思う。僕には捨てることもできなかったし、彼女に捨てさせることも出来なかった。それは彼女も同じだっただろう。僕には強さが足りなかったのだ。今となってはそんなものに拘っていたのかという後悔の念が湧き上がってくる。

 Yはその子と卒業後も交際を続け結婚した。彼の結婚式には僕もそしてSも出席し、そこで再会した。

 卒業後1年で地元に戻ることとなり、すでに数年経っていた僕は既に結婚もして子供がいた。Sも大学時代は別の子と長く交際し、結婚と目されていたが僕と同じで卒業と共に別れ、結婚もせずに女癖の悪い男に変貌を遂げていた。

 Yの結婚式の当日はあの夜から10年以上経っていたが、僕は思い出さずにはいられなかった。あの夜に10年後が見えていた人間は一人もいなかったはずだ。運命というテストの答え合わせをしているような気分にもならざるを得なかった。

 だから結婚式の事は何も憶えていない。料理がいままで出席したどの披露宴より美味いと思っただけだった。

 学生時代の恋模様なのだが、記憶にも残らないような一夜であってもおかしくなかった。しかも僕は当事者ではない。しかし、記憶に深く刻まれてしまったのは「おばけのいたずら」の所為なのだろう。

 僕はおばけに取り憑かれてしまったのだろうか。それは今も取り憑いたままなのかもしれない。

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