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#38『”ねえ先輩”SHISHAMO「さよならの季節」を語る』

今回は2015年3月4日にリリースされた2ndアルバムSHISHAMO2の11曲目に収録されている「さよならの季節」という曲について語ります。

この曲はなんとボーカル宮崎朝子の実体験として作られた曲だそうで”卒業してしまう片想いをしている先輩との別れ”がテーマに描かれています。SHISHAMOの歌詞について作詞を担当している宮崎朝子は自分のことを書くのは恥ずかしいと語っており、いつも自分ではない主人公を作っていくスタイルでやっているそうなので、今回取り上げた「さよならの季節」はそういう意味で特別な立ち位置の曲になっているのではないかと思います。

YouTubeにてMVがありますので載せておきます。「君と夏フェス」のMVに出演している女優の上原実矩さんが今回の「さよならの季節」のMVにも起用されています。

それでは語っていきます。

一番Aメロの歌詞

いつも後ろから見てた
大きな肩幅もすこしもつれる歩幅も 見飽きたものなんてひとつもないのに

いつも隠れてみてた
少し袖の長い制服も傷だらけの鞄も
それでも知らないことばかりだってのに

「さよならの季節」作詞:宮崎朝子

シルエットや歩き方、サイズが大きい制服を着ていることやどんな鞄を持っているのかなどかなり細かく知っていることから相当先輩のことが大好きなことが読み取れます。

でも「それでも知らないことばっかりだったのに」というフレーズから分かるように主人公が知っていることというのは視覚からわかることばかりなんですよね。どういうことをするのが好きでどういう考え方をしているのかといったことは全然知らないでいることからまだ会話をしたことがないということが見えてきます。

一番Bメロの歌詞

今日が最後なのは どうしたってわかってるのに
もう決まってることなのに 何にも言えず終わりそうで

「さよならの季節」作詞:宮崎朝子

大好きな先輩に声をかけることが出来ないまま先輩が卒業する日が来てしまったということですね。ここの歌詞からは、卒業の日に自分の気持ちを伝えようと決めていたのが分かります。でも中々言いだせないという展開…。

一番サビの歌詞

桜の木の下みんなと語り合うあなたが
あまりにもきれいで嫌に悲しかったのよ
ねえ先輩 あたしのことを思い出にしないで

「さよならの季節」作詞:宮崎朝子

桜の木の下でお別れをするクラスメイトや仲間と話している先輩を遠くから悲しい表情で見ている主人公の絵が見えてきますね。

「ねえ先輩 あたしのことを思い出にしないで」というフレーズ。主人公にとっては先輩のことを好きだったことが思い出でも、その先輩にとって主人公は多分同じ学校の女の子というくらいの認識しかないと思うのできっと思い出にすらなってないはずですよね…。それを踏まえた上で「あたしのことを思い出にしないで」というのが、せめて私という存在がいたということを少しでも思い出していてくれたら嬉しいなという風に感じ取れて切ないですね。

二番Aメロの歌詞

いつも待ち伏せしてた
登校時刻の昇降口であなた見かけたら ベッドに入っても特別だったの

「さよならの季節」作詞:宮崎朝子

先輩というと同じ部活動にでも入っていない限り中々関りを持つことって難しいですよね。その分、一目でもいいから先輩を見られたら、それだけでその日は幸せな気持ちでいっぱいになるんですよね。「ベッドに入っても特別だったの」というのが家に帰ってからも会えた喜びの余韻が残っている感じが共感してしまいます。

二番Bメロの歌詞

今日が最後だから あなたの後姿
目に焼き付ける でもやっぱり足りなくて

「さよならの季節」作詞:宮崎朝子

今日が先輩と会えるのが最後だから忘れないように目に焼き付けようということですね。「でもやっぱり足りなくて」というフレーズはもう会うことがなくなるなんて考えられないという寂しい気持ちが伝わってきますよね。

二番サビの歌詞

桜の木の下背の低い女の子とあなた
聞こえてしまうあなたの突き放す言葉
ねえ先輩 あたしとあの子なにも違わないかなあ

「さよならの季節」作詞:宮崎朝子

なんと主人公と同じように他にもその先輩に片想いをしていた女の子がいたという展開。でも、その子が勇気を出して先輩に想いを伝えたものの「聞こえてしまうあなたの突き放す言葉」というフレーズからわかるように振られてしまったことが読み取れます。それを遠くから見ていた主人公は「ねえ先輩 あたしとあの子なにも違わないかなあ」と思ってしまった訳ですね。同じように先輩のことが好きだった女の子が振られてしまう瞬間を目の当たりにしたら、いくら最後だから気持ちを伝えようと決めていたとしても足がすくんでしまいますよね…。

Cメロの歌詞

卒業式終わったのに 私の恋は終わってくれない
今日が終わって明日が来たら
私とあなたをつなぐものはひとつもないよ

「さよならの季節」作詞:宮崎朝子

式が終わっても、まだ気持ちを伝えられないでいることがわかります。ここのフレーズは「今日が終わって明日が来たら私とあなたをつなぐものはひとつもないよ」と主人公はわかっていることから後悔しないようにしようと言いだそうとしているシーンなのではないかと思われます。

最後のサビの歌詞

さよならのクラクションベル
あなたの駆け寄る先
年上のクールビューティー 特別な人
ねえ先輩 何も言えないまま

桜の木の下みんなと語り合うあなたが
あまりにもきれいで嫌に悲しかったのよ
ねえ先輩 私のことを決して忘れないでね

「さよならの季節」作詞:宮崎朝子

想いを伝えようとしていた矢先に「あなたの駆け寄る先 年上のクールビューティー 特別な人」というフレーズからわかるようになんと既に先輩には付き合っている女の子がいたという展開…。その後の「ねえ先輩 何も言えないまま」が表しているように言葉を失ってしまいますよね。想いを伝えようとしていた直前に失恋するなんて悲し過ぎます。それでも最後のフレーズが「ねえ先輩 私のことを決して忘れないでね」になっているのが最後まで健気だなと思います。

まとめ

ボーカル宮崎朝子の実体験をもとに作られただけあって凄くリアルな歌詞でしたね。「いつも後ろから見てた」「いつも隠れて見てた」「いつも待ち伏せしてた」という歌詞がまさに片想いしている女の子の象徴で宮崎朝子も学生の頃に恋をしていたんだなと思いました。

ただ好きだった先輩に想いを伝えられなかったという歌詞ではなくて、主人公と同じように先輩が好きだった女の子が先に振られてしまうのを見てしまうという展開や、やっぱり気持ちを伝えようとしていた矢先にその先輩には既に付き合っている年上の女の子がいたという展開が入っているのが実体験らしくていいなと思います。

実は今回取り上げた「さよならの季節」は#36で記事にした「第3ボタン」という曲と同じテーマで作られたそうです。「第3ボタン」の時よりも歌詞が詳細になっていることから、描き切れなかった部分を伝えたかったんだろうなと思われます。「第3ボタン」の記事を貼り付けておくので興味があったらチェックしてみて下さい。

そして、なぜ「第3ボタン」なのかをずっと疑問に思っていましたが、今回の「さよならの季節」のMVを見ると一番最後に主人公が桜の木の下で学生服のボタンを手に握っているシーンが出てくるんですよね(MV5:45辺り~)。歌詞の中では想いを伝えることが出来なかったと言っているので#36で記事を書いた時は第2ボタンの代わりに第3ボタンを貰ったのではないと思っていましたが今回のMVから何らかの形で先輩の第3ボタンを貰ったことが分かります。おそらくその先輩と付き合っている彼女さんに頼んで第3ボタンを貰ったのではないかと思われます。

今回のように過去に発表された曲とつながりのある曲がリリースされるというのは答え合わせのようで面白いですよね。

珍しくボーカルの宮崎朝子が実体験で曲を作ろうと思ったのは気持ちを伝えずに恋が終わってしまうのは後々後悔したり引きずったりしてしまうことになるということを身をもって学んだからなんでしょうね。好きな気持ちがあるなら会えるうちに伝えた方がいいということもこの曲の裏テーマとして描かれているように思います。

卒業シーズンに好きだった先輩が旅立った人にとって、ぴったりな一曲になっていると思うので皆さんも是非聴いて見て下さい。

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