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読書感想文「スワン」

 去年話題になった「爆弾」でお馴染みの呉勝浩さんの作品。重かったです。だいぶ考えさせられる内容のミステリでした。

あらすじ

 ある日巨大ショッピングモール「スワン」で二人の犯人による無差別殺人事件が起きた。自作の銃と日本刀が使われて21人の死者を出した。自害した犯人たちに代わって責められたのは、対応の遅れた警察、客よりも先に逃げた警備員、そして犯人に脅されて殺す順番を決めたという女子高生いずみだった。
 事件から半年が過ぎた頃、被害者の一人で大企業の社長の母である菊代の代理人を名乗る男が事件の生存者5人を集め、彼女の死の詳細を探るための「お茶会」を開催する。それに招かれたいずみらが語る事件の1時間の間に起きた本当の出来事とは。

感想

 事件が起きたとき、生存者が生き残ったことに対して罪悪感を抱くという現象があるという話を聞いたことがあります。なんていう名前だっけ? それと、何かできたんじゃないか、もっと助けられたんじゃないか、本当にベストな判断だったのかと、後悔する気持ちの分かりみが深くて後半は胸が痛くなりました。様々な理由で真実を語らないお茶会参加者、次第に明らかになる事件の細部というミステリ要素も十分面白かったですが、自分だったらと置き換えて考えることのできる良作でした。

特に記憶に残ったシーン

「次の瞬間死ぬかもって状況が、ほんとうに想像できますか?」
「……君の置かれた状況、なんて、わかったふうなこといわないでください」

「犯人が悪いーーではいけないの?」
「だってそうでしょ? 犯人だけが悪いんですよ。犯人だけが。それでいいじゃない。もう終わったんです。それでいいじゃない」

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