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接客でクレームをもらってしまう人は

サービス業の正解はあるのかを25年間考えてきた

サービス業に携わっていて、正解がわからなくなることは、ないだろうか。
接客を精一杯、真面目に考えているのに、クレームをもらってしまう。
マニュアル通りに話しているのに、不快な気分にさせてしまう。
こんな時の対処法を知ると、人に不快な思いをさせることは、限りなく少なくなる。

私は、25年以上、飲食店で働いていきたため、『お客様との距離感』はどのくらいが適切なのか、常に考えてきた。
そのためか、『人に与える第一印象』が抜群にいい。
面接には落ちたことがなく、スキルが多少足らなくとも、面接で乗り切ってきた。
どんな相手にも、対応できる自信があるため、どんな場面でも、人と会うことに緊張することはほとんどない。
ここまで来るには、どのようなことを考えてきたのかを、シェアしようと思う。

「行きつけのお店がある」
一度は言ってみたい言葉である。
自分が行くたびに、何かしらの声をかけてくれるお店というのは、お気に入りのお店になる確率が高い。
その声かけには、程よい距離感があり、近すぎず、遠すぎない。
人と人との距離感には、パーソナルスペースのような、個人個人で違う“ものさし”を持っているため、この距離感が自分に合うか、合わないかというのは運の要素が強い。
こうした、自分の行きつけになるお店に、なかなか出会わないのは、距離感が自分とピッタリなお店を見つけることになるため、大変確率が低いのだ。

社交的な人は、距離感が遠すぎることが苦痛に感じるが、内向的な人には、距離感が近すぎることが苦痛であったりする。
この距離感というものは、接客に大きな影響を与える。
話し方、声の大きさ、口調、テンポ、なまり、表情、身振り手ぶり、髪型、言葉使い、敬語の割合など、あげたらきりがないほど、距離感というものが与えるものは大きい。
これらの割合を、お客様によって、少しずつ調整して変化させていくことができてくると、『接客で大きなクレームをもらわない』ようになる。

クレームというのは、ゼロにすることは不可能である。
『万人に好かれる人はいない』というものと同じで、全ての人に対して心地いい接客をする距離感を保つことは不可能だということを、私は25年で学んだ。
この原因こそ、距離感に他ならないのである。

多くのチェーン店では、『接客マニュアル』というものが存在する。
しかし、このマニュアルは、「誰に対しても当たり障りのないもの」であって、「ベストではない」とされている場合が多い。
ベストの接客は、“その場の空気やお客様の雰囲気”を感じ取って、現場の者が自分で気転をきかせて、判断して行う場合が多いためだ。
私も接客で表彰されたこともあるが、表彰された接客というのは、マニュアルから大きく逸脱していたものだった。
つまり、マニュアル通りではないということである。それなのに、お客様から褒められたら、成功なのだ。サービス業とは、そういう世界なのである。

私のお店には、駐車場があった。
しかし、駐車場にはこうした看板が立てかけられている。
「駐車場内における事故等に関しては、当店は一切の責任を負いません」
こうした看板を見て、クレームを言ってくる人もいる。
「お前んとこの駐車場だろうが! 責任を負わんとはなんじゃぁ!」
このようなクレームも1度や2度ではないが、駐車場内の事故の責任を持つことになると、警備員の配置なども考えねばならず、致し方なくご理解いただいていた。
あくまでも、サービスの範囲外、という考え方である。

小春日和のランチどき、駐車場の入口で3台の車が立ち往生している様子だ見えた。
ランチどき、主婦が多い、女性は運転が苦手、運転に対するプライドも低い。
咄嗟にそう考えた私は、目の前の仕事を一旦置いて、駐車場に飛び出した。
マニュアルでは、バック誘導等をしてはいけないことになっている。
駐車場なの事故に責任を持たないのに、店側の人間が口出しては、事故が起きた時に責任の何割かが店にも来てしまうためだ。
しかしそこで、迅速に、一台一台の誘導をして、3分間で立ち往生を解消させた。
3台の車の先頭に乗っていた60代くらいの女性から、何度もお礼を言われたが、私はマニュアルを破っていたため、公には話さなかった。

しかし、その女性から、後日、お礼の手紙が届いた。
そこには、
「私のお助けマンでした。本当にありがとうございました!」
と書かれていた。
すっかり、怒られると覚悟していた私に待っていたのは、“表彰状”だった。

サービス業である以上、マニュアルというものはあるものの、結局最後は、現場の気転によるものが大きいのだ。
どれだけ接客のキャリアを積もうとも、手紙をくれた女性が感動してくれたのは、たまたまである。
「このくらい、当たり前でしょ」
と、女性が考えていたら、手紙という行動には至らなかった。
しかし、誠心誠意、心から相手のことを考えることによって、相手に伝わるものがあるのだ。

お客様に褒められたから正解ではなく「精一杯の接客をしたから正解」という“ものさし”を持つことが、サービス業を楽しむコツかもしれない。

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