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最短距離で目的地に到着する方法を継承する

私たちの文章はフェロモンなのだ

「人生の最短距離を教えます!」
こんなキャッチコピーがあったとき、あなたならどうするだろうか。
「最短距離が知れるなら、教えてもらおう」という人は少なくないだろう。
それほどまで、現代社会は時間がない。時間を金で買うという発想は、今に始まったことではないが、今が一番顕著に現れているように思う。

人生の最短距離というものには、大きく分けて二つある。
一つは、「他人を基準とした」最短距離である。
自分と他人の目的地というのは必ずしも同じではないため、当然それに費やす時間も誰しも同じにはならない。
しかし私たちは、こうした人生の目的でさえ、同じ条件で始めたかのように、競い合っていることが多い。すると、必然的に「あの人よりも早い(遅い)」という結果がついてくる。そこで、「勝った」「負けた」と一喜一憂する。
そのため、目的地に最短距離で到達する方法を知りたくなる。
他の誰にも、負けたくないからである。しかし人生というのは、比べるべきものではない。誰の人生からも、あなたの人生を評価できない。人生で答えを出すとするならば、自分自身だからだ。
千差万別、十人十色と、古くからのことわざにも、答えが書かれていると言っても過言では無い。
十人十色なのだから、比べようもなく、赤と青のどちらが美しいかを答えるようなものである。どちらも美しいし、そもそも対象物とは言い切れない。
人生も同じように、比べるべきものではないのである。

二つ目だが、これが重要なのである。
「自分を基準とした」最短距離である。
実は、最短経路を見つけろという問題は難問であり、コンピュータ学者たちが知恵を絞っていい答え方を見つけようと苦労してきた。
しかし、これといった答えは未だ見つかっていない。
自分が選択した道の中で、最短距離を見つけることができれば、成功するまでの時間を短縮できるため、時間を有効活用することができる。成功までに費やした時間を、他のことに充てることができるのだ。そうすることで、さらなる成功を収めることができるかもしれない。そうした夢をみがちである。

「最短距離を見つけることが可能なのか」
という問いに対して、答えを導いてくれる生物がいる。
アリである。
アリは、たくさん集まることによって、この問題を解いていっているのだ。
よく知られているのはエサ運びだ。
一匹では運び切れない大量のエサが見つかった時、最初に見つけた一匹はその一部を持ち帰るのだけれども、その時、フェロモンという物質を地面にこすりつけながら帰ってくる。アリは視力がほとんど無いため、フェロモンの匂いを頼りにする。他のアリが地面に残したフェロモンの濃い方へ進むことで、“見えない道”を作り上げていく。
エサと巣穴を往復して行くうちに、だんだんと最短距離に近づいていくのだ。

アリが指し示している実際の“道”と、私たちが求めている人生という“道”の違いはあれど、これを私たちに当てはめると、どのような考え方になるのだろうか。
私たちは、アリのように集団で行動しているわけではないし、同じ人生を歩む人はいない。そのため、アリのように、何度も何度も同じ道をなぞって、段々と最短距離に近づけることは不可能である。
しかし、自分が歩んで行こうと決めたその“道”は、前人未到の道なのかと言われたら、違うのではないだろうか。きっと、遠い昔、または近い昔、誰かが歩んだ道なのではないだろうかと思う。

昔、誰かが過ちを犯して、失敗を重ねた結果が、記録として残されているのではないだろうか。
私たちにとってのフェロモンに当たるのは、文字として残されている文章である。
アリのようにフェロモンで残さなくとも、私たちは古より、文字で共通認識できる方法を持っている。過去の偉人たちは、文章を文献として残したのである。

アリが何度も何度も、同じ道を歩んでいく中で、最短ルートを見つけたように、私たちにも、私たちよりも以前に存在していた人々によって、試行錯誤された道が存在するのだ。
そして、私たちがいる。
私たちの経験もまた、未来の人類のための教材となっていくのだ。
このように、失敗に失敗を重ねるのは、何も自分一人だけでやることではない。
何度も失敗を重ねて涙を飲んできた先人たちの本を読まずに自分だけで最短ルートを見つけようなんて、そんなおこがましいことが許されるはずがないし、それでは見つかるはずもない。

アリにはフェロモンがあるように、私たちには文章がある。
数々の文献に目を通し、「先人たちが、このような方法を試してきたのなら、私はこのような方法でやってみよう」と考えてやってみるということが重要なのだ。
そうすることが、何十年、何百年後の人類のための、『フェロモン』として残っていくのである。

最短距離を求めるのは、フェロモンを全部、嗅ぎ回った上で、一番濃いフェロモンを頼りにしてみてはどうだろうか。
そこから、自分のアイデアを織り交ぜることが、未来につながるのである。

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