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Brain Sentence

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小説ですたい。ノリで書き始めちゃうことしばしば。
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サムネの写真の状況がマジで謎すぎるから小説にして整合性持たせてみた。

サムネの写真の状況がマジで謎すぎるから小説にして整合性持たせてみた。

「ハッピーバースデー!おめでとうジョン!」
 室内には低音がイヤらしく効いたEDMが流れていて、そこに自分が立っていることを曖昧にさせるほどに床板が小刻みに振動していた。
今日の主役であるジョンは満面の笑みを携えて来訪者たちを歓迎している。胸元に赤い飾りがついた白シャツは、爽やかな彼の顔にとても似合っている。
 テーブルに並べられたそこまで高価ではないだろうシャンパンを口に運ぶと、気の抜けた炭酸の

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「ロボットの惑星」

「ロボットの惑星」




そこは、ロボットがたくさん暮らしている小さい惑星です。
ロボットたちは毎日、何かを作ったりして、忙しくも楽しく暮らしています。
そんなロボットがたくさん居る惑星に、たったひとりだけ人間がいるのでありました。

その人間は博士で、髪はすっかり白色になってしまったおじいさんです。
いつもロボットたちの体を点検してあげています。
ギシギシいうようならオイルを差し、壊れた部分があると工具で修理をし

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木漏れ日の声

木漏れ日の声

おばあちゃんの家から歩いてすぐに、まるで漫画みたいな裏山があって、夏休みなんかにはしょっちゅうそこに入り浸っていた。
おばあちゃんの家はぼくが住む街からうんと遠い場所だったから、知り合いも友達もいなくて、だからその裏山が友達のようなものだったのだ。
そろそろと流れる小川のせせらぎを聞きながらえっほえっほと獣道を登っていくと、少し開けた場所があって、ぼくはそこにお菓子やジュース、本やおもちゃなどを持

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AOAZA.

AOAZA.

「あっ、まただ…」

加奈子は自分の左内腿を覗き込んでいる。



その日は特別暑かった。さっき観たニュースでは『猛暑日』であったことを報じており、画面の中には日中の茹だる街が映されていた。

駅横の、割と大きめのショッピングモールに入っている帽子屋『fly high(フライ・ハイ)』で加奈子は働いている。冷静に考えるとひどい名前だ。どうしても帽子が空高く飛んでいってしまう画を想像してしまう。

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Siri。

「いってぇ!」

鋭い痛みだ。尻。尻の右のほっぺ。

その時は冬服のスラックスを履いていて、その中には「パッチ」…今で言う「ズボン下」を履いていた。そして防寒仕様のボクサーパンツだ。

その日は街に寒波が襲っていて、その時の温度は2℃くらいだったらしい。

それにしてもこの痛みである。

厚着をした下半身でもこの痛み。すぐに思いついたのは「蜂」であった。

蜂には子供の頃だが、地元の山の中へカブト

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エンドレスリピートの解説

した方がいいと思うのでw解説します。

自分なりに考察したい!って人には幻滅する内容かも知れません。。w

勢いに任せて書いたもの。

ラジカセやカセットテープのくだりを書いてる内に物語が浮かんできました。

これは簡単に言うと「鶴の恩返し」のようなものです。

実家を離れても、ラジカセは持ってきた主人公。

久しぶりの掃除をするまでそれは押入れかどこかに収納されていて。

それを見つけてからも処

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エンドレスリピート【後編】

エンドレスリピート【後編】

それから冬子(とうこ、で正解らしい)との奇妙な恋人関係が始まった。

あの出来事があってから既に3日が経過している。

彼女のことで、少しずつ、探り探り聞いて分かったことは3つある。

まずひとつは馴れ初めである。

オレは普段レンタルビデオショップの店員をしていて、彼女はそこそこ大きい企業の中で働いていた。いわゆるOLというやつだ。

オレの職場へ彼女が度々映画をレンタルしに来、その作品のチョイ

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エンドレスリピート【前編】

エンドレスリピート【前編】

その日の空はここ数日の間でもかなりの青さだった。

よく人は「空は青いね」なんて言うが、全員分かってない。

空の青さはその日その日で全く異なっているんだ。オレはそのことに保育園にいた時から気づいていた。

よく両親や兄貴に「今日の空の青は濃ゆいね」とか「今日は青じゃなくて水色みたいだね」と言っても「この子は何を言ってるんだろう」という顔と返事しかされなかった。もう誰も覚えてはいないだろうが。

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小咄「風」

えー小咄をひとつ。

昔から人は人の中に人を住まわすなんて言葉がありますな。

なんやいいもんを見つけた時に「コレがほしい」って思う。でもすぐに「これを買っちゃうと月末苦しいよ」なんて風にもう一人の誰かが囁くわけです。

「でもコレを買うと満足するよ」

「いやいやあかん。そんな余裕ない」

という具合に自分の中に住む住人はいつだって口論しているわけです。

「おい!虎吉!こっち来い!」

「へぇ

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エンプティ⑦

「僕には好きな人がいます」

暗闇の中、右耳に鳴った言葉を反芻する。好きな人、か。

近頃はそんな単語があることさえ忘れていた。学生の頃なら毎日のように考え、悪友たちと話していたのに。いつからかそんな淡い感情は消え、また、そんな青臭い感情を消すことこそ大人になることだと思い込んでいた。

「河合さんと言って、とても素敵な方なんです」

河合と聞いて遠い記憶の奥がザワつくのを感じた。

『それでね、

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エンプティ⑥

「ただいま」

玄関を開けた部屋の中は真っ暗で、舌打ちをしながら電気をつけた。

人の気配が無い。出かけているのだろうか。

すぐに脱衣所に入り、びしょびしょに濡れたスーツやワイシャツ、パンツを脱ぐ。

面倒くささで一瞬迷ったが、そのまま風呂場へ行きシャワーを浴びることにした。

シャワーで冷えた身体も温まり、髪をタオルで拭きながらリビングへ向かう。

うちの間取りはリビングとキッチンが連結してお

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エンプティ⑤

5月10日 20:21

「さっきはびっくりしたよ!まさかあんなところに森さんがいるなんて!今日は仕事休みだったの?」

「私もびっくりしちゃった。うん、今日は…っていうか毎日が休みみたいなものね」

「そうなんだ、仕事していないの?」

「一応専業主婦なの」

「え!結婚したんだ!いつ頃?」

「来月で丁度2年になるわ」

「そうだったんだ、驚きだよ…。」

5月15日 18:43

「昨日のナ

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エンプティ④

16時半。

身支度が終わり、あとはあの場所まで行けばいいだけ。

目的地へは地下鉄を使う。今出れば丁度17時くらいには駅へ着くだろう。

窓の外は不快な雨の音がしている。

雨、薄暗さ、今から自分がやろうとしていること。

相乗して、最高に気分が悪い。罪悪感、とも言えるのだろうが、今はそう考えたくない。そうだ、自分が"こう"してしまう事は"仕方が無かった"のだ。

きっかけは隣町へ買い物に行った

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エンプティ③

急がなくては。

家を出るときには小雨だったのに、すっかり雨粒が大きくなっている。

ああ、どうして自分はこんなことを…と何度も思った。ただ、そう思ったところで抑えられるものでもなく、僕は走っていた。

肌に当たる雨が冷たい。雨は確実に僕の体温を奪ってはいたが、この焦燥感までは冷ましてくれなかった。

地下鉄を降り、駅を出てもう10分くらいだろうか。駅前の道は少し混雑していて、色とりどりの傘が路上

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