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寒空でも太陽の下はあたたかい

冬は好き、であった
過去形にするのは、
ここ数年のこの季節になぜか切ない思い出ができて
それを思い出してしまうからである
だからいっそのことあの不快な暑い暑い夏の方が
まだマシだと思ったりする
だけど、冬は太陽の熱を温かく感じることができるという
唯一の良さは他のどの季節のいいところよりも好きだなぁと
いつもの乗り換えの駅のホームで
あえて直射日光の当たるホームの端で思った
だって、好きな男の体温なんて
真夏でさえあたたかいと感じるのだから

◆駅のホーム

それは、そこにいる人
一人一人に人生があるのだなぁと
歩いている人を見る時のそれとはまた違って
想像できるから好き

”朝はどんな朝でもよかないこと?
その日にどんな事が起こるかわからないんですもの。
想像の余地があるからいいわ。”
赤毛のアン/モンゴ・メリ

アンは創造力豊かで
バラが話せたらきっと
美しい話を聞かせてくれると思ったらしい
私は、今駅のホームに奥さんと生まれたばかりの赤ちゃんを
連れたその男性をみて彼の現在に至るまでの人生を考える
きっと少し前まで世間ではチャラ男といわれそうな
生活をしていて、きっとできちゃった婚だろう
あ、今は授かり婚というんだっけ・・・
まぁそんなこんなで突然目の前に自分の分身が現れて
可愛くて愛しくてたまらなくて
真面目に今は、家族のために生きている
そして、いま目の前にいる小さな分身が
日の光が眩しくないように太陽の方向に立って塞いでいる
優しい男だと思った
お父さんはこんなに優しい生き物なのだと思った
なのにどうして人は不倫をしてしまうの?神様
私の事を本気で好きと言う
家庭を持つあの人もきっと今私の目の前にいる
お父さんなのだろう、私との時間以外のすべては
だからどうか、いま私の、目の前にいる男は
一生家族を裏切らず、そしてそれを幸せと心から思える
人生でありますように、とそっと祈った
涙がでそうになった
その3人の幸せそうな空気に対してなのか
完璧なお父さんの未来を想像してなのかは分からない


カフェ

小説のラストスパートを読むために行くのが
いまの私のちょっとしたマイブーム
今日は大好きな作家さんの一人の江國香織さんの
ウエハースの椅子』の最後の数十ページを読んだ
大学生が試験終わりに行くような場所とは
もっともかけ離れた場所だと思うくらいしゃれて
従業員の気遣いが過去最高のカフェ
もうすぐ男がやってくる
彼とはクアラルンプールで10日間一緒に暮らした
2019年のという年を一緒に迎えたし
もちろん何度か身体も重ねた
そんな男と、日本で初めて会う
たった数日前にあの永遠の夏の国で
まるで恋人のように過ごしたばかりなのに
私は少し、いやかなり緊張している
どんな表情で迎えようかなと
小説を読むフリをしながら考えていると突然彼は現れた
あぁいつもの彼だ、冬の格好をした彼だ
不思議と、彼の前では素直でありたいと思う
なのにどうしても逆行してしまう
そんな天の邪鬼な私を彼は猫みたいだと言った
なんて人を褒めるのが上手な人なんだろう
一度身体を重ねた男女には特有の密接な距離感が生まれるのに
彼にはそれを感じない、なんでだろう
一緒に駅に向かう途中に
次回、行きたいところの話をした
カフェ、私の大学の学食、VIP席での映画鑑賞・・・
次回なんて無限にあってそんなの取り付けなくてもいいような
いつでも会える
そんな関係なのかと錯覚してしまいそうで恐い
カフェの敷居は君が思っているほど高くないんだよって
教えてくれた彼が興味を持ちそうな写真やストーリーを
upするのも今の私の趣味になった
ほら、また彼からInstagramでメッセージがきた
「このカフェいいね、一緒にいこ」
「いいよ」と返す
あぁ私はこうやって少しずつこの人と思い出を
刻んでいこう、と
出逢った時には既に全てを持っていた彼とは
もう別離しよう、と
私だけの秘密のカフェでふと別れを想った

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