ものづくり、のポリシー。
仕事行ったら、母がインフルになっていた。
お薬飲んで寝てて下さい。
(いまでは熱も落ち着き早めに受診したのが よかったみたい)
と、いうわけで、納期のせまった物を片っ端から片付けていく。こんな日に限って、お客さんも多くて、対応にかなり時間を取られ。
ただ、
母のいない間、私が対応できていることに、少なからず驚くのだ。ほぼ母の看板で成り立っている工房で、それでも、いつの間にか、近ごろは私が対応していくことが増えてきている。
「後継者」
という文字がかすめていく。
この地場産業はかつての活気は廃れ、後継者のない所は高齢化によってどんどん廃業していく。昔ばなしかのように廃れていく。
なんとか細々とやってきているわが工房は、
「賃金に関わらず丁寧な仕事を」
という母のポリシーを貫いてやってきているつもりだ。(ビジネスとして成り立っているかどうか怪しいところだが。)
母のしていた仕事を、少しずつ私も請け負うようになり、母に出来を見てもらうと
「上手に貼れとるやん」
と、合格することが増えた。
(以前は無言の手直しが入ったりしていた)
「品質」へのこだわりは、母のプライドだ。
そして、
私が受け継ぐべきこの工房のポリシーだ。
そんなことを思ったのは、今日、ひょっこりいらした陶器商の「婿どん」で。
「ちょっとご相談いいですか?」
と、不安げにこぼし出して。
お義父さんから引き継いで、娘である彼の嫁さんが、今がんばっていろいろ動いている。
お義父さんと嫁はウマが合い、前のめりに商売を展開していこうとしていて軌道にのってきてはいるのだが、彼は(婿どんは)
「いくらノベルティー(粗品)だとしても、品質はきちんとしたものを出したい」
と、「品質」に関して、店の看板ないしポリシーを持ちたい、とこぼしていた。
(「婿」という立場もまた難しそうだ…)
安い!早い!美味い!ではないが、顧客のニーズは様々だけれど、作る側の私たちは、
「なるべく早く良い物を」
と思って仕事をしていると話すと、婿どんは、ホッとした顔で柔らかに笑った。
「そうですよね」
うまい商売はできていないし、採算がとれているのかもわからないような工房だけれど、価格に関わらず「下手」な物は出せない。
「またお願いしますね!」
と、清々しく婿どんは帰っていかれた。
「良い物を」にこだわる作り手から、
商売へ繋がっていってくれることを、
山奥の工房で
母のいない工房で
一人あたふたしながら
願っていた。
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