青く黄色い部屋。
私の上で汗をかいて、息を荒らげた彼の長い髪の隙間から目が合う。目の奥が揺らめいて、髪をかきあげる彼の腕は、逞しい。
日ごろの力仕事で培った筋肉、綺麗な広背筋。その整った顔に似合わない太い首に、ぶら下がるようにして、同じように汗をかく。
西陽の入る部屋に、ぺちゃんこの布団。
床に直に置かれた灰皿には吸い殻がこんもりして、脇にはマルボロとZIPPOライターが転がって。
私のと彼のと、抜け殻も雑に転がって。
「俺は一番好きになったヤツとしかしない」
と頑なに守ってきたという貞操は、私の前でその箍がぷらんと揺れた。
エアコンが効かないせいなのか、二人が必死になったせいなのか、あの部屋はいつも暑く、ぺちゃんこの布団は湿っていた。
静かに、身体を鍛えるときみたいな息づかいで、集中して抱く、彼の仕方が好きだった。
下着をつけながら、吸いかけのタバコを差し出す彼は、清々しくてキレイな目で、だから私はいつも一口だけ吸った。
「お腹すいたね」
と言うのに、灰皿に吸い殻を押し付けて、その筋肉質なしょっぱい身体で覆い被さる。
長い髪がサラサラと身体を這って、赤色に染まった西陽を、彼の目の奥にも見て。
きっとまた今日も帰りは遅くなる。
彼がすっかり満ち足りて、大きな翼みたいな広背筋を、上手くTシャツにおさめるまで。
小さな机と、平積みの漫画や雑誌と、棚に並んだCDと。コンポのスピーカーからは、イエモンが歌っていた。色あせた青いカーテンと、黄ばんだ効かないエアコン。
いつも暑くて熱かったあの部屋。
二人「寒いね」と温め合う前に、
私は「ごめんね」と
彼の髪を梳いた。
真っ直ぐに、
真っ直ぐを返せなくて。
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