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趣味のデータ分析016_資産所得倍増⑧_金融資産を持っているのは何者か?part02

前回015で、家計構造調査を用い、どういうセグメントがどれくらい金融資産を保有しているのかを概観した。引き続き今回も、どういうセグメントがどれくらい金融資産を保有しているのか、事実確認をしていく。前回は単軸での分析だったので、今回はクロス分析をやっていこう。

どういう奴らが金を持っているのか?X

①性×世帯種類

図1:性×世帯種類でみた家計金融資産

015の図2では「男性世帯主か、二人以上世帯の資産保有額が高い」ことを確認したが、二人以上世帯かつ男性世帯主が、(世帯構成比も)資産総額も多いだけだった。また、二人以上世帯主だと生命保険等が多く、男性世帯主は有価証券保有額が多い、という特徴も見られる。

②性×年齢

図2:性×年齢でみた家計金融資産

男女ともに金融資産は確実に年齢比例。また男女差を見た場合、30代未満だと、男女差はほぼないが、30代以降差が出ており、女性は男性の大体6~7割位の水準。図1との平仄を鑑みると、おそらく世帯主が30歳を超えたくらいから、女性世帯主の世帯が、「二人以上の男性世帯主」の世帯に吸収されていっているからだと思われる。
またこちらでもなんとなく、男性の方が有価証券保有割合が高そうに見える。

③年齢×世帯種類

図3:年齢×世帯種類でみた家計金融資産

図2と図3はほぼ同じ感じになっている。興味深いのは、50代くらいまで、単身世帯と二人以上世帯の金融資産が大きくは変わらない点(二人以上>単身ではある)。60代以降だと単身が二人以上の6~8割程度にとどまる。
図1~3で整合を取ろうとすると、直感的によくわからなくなったので、次で確認してみた。

④性×世帯種類×年齢

図4:性×世帯種類×年齢でみた家計金融資産(総額のみ)

総額だけまとめてみると、男性世帯主の二人以上世帯(紫)がほぼトップではあるが、40代までは男女や世帯種類で、絶対額ベースではそこまで差があるようには見えない(ただし、40代の女性世帯主の二人以上世帯は同年代の中では低い)。やはり、資産保有額の説明変数としては、年齢が一番効いているようにみえる。
図2で30代以降世帯主の男女差が生まれるように見えたのは、最も金融資産が多い男性世帯主の二人以上世帯が絶対数として多くなっており、男性平均がそこに引きずられているからのようだ。
また図3で、50代くらいまで、単身世帯と二人以上世帯の金融資産が大きくは変わらない(60代以降差が出てくる)のは、50代までは、単身でも比較的金融資産が多い男性が(単身世帯の中では)絶対数として多めで、それが単身世帯の水準を引き上げている一方、60代以降金融資産が少ない上に減少している単身女性の方が数が多くなった結果、単身世帯の水準が引き下げられたためであると考えられる。というかむしろ、60代以降着実に資産を切り崩しているのは単身女性のみで、ほかはほぼ横ばいだったりむしろ増えてたりするほうが謎なのだが。
あとどうでもいいが、このグラフ作るのにめっちゃ苦労した(エクセルで普通に表形式で配置するだけでは、このグラフは作れない)。なお「平均」の世帯構成比は、そのセグメントの世帯構成比の合算値である。

⑤性×学歴

図5:性×学歴でみた家計金融資産

015の図4では、ほぼ単純に学歴に比例した金融資産保有額となっていたが、女性が世帯主の世帯は、男性が世帯主の世帯に比べ、保有資産額が小さいうえ、全く学歴と比例関係にない。また、男性高学歴は有価証券の割合も若干高いが、女性にはそうした傾向は見られない。
直感的には、「50代以上の女性大卒者」は数が少なく、その年代は短大卒等が多くて結果資産額も増えているのではないか、と思われる(データがなくてそこまでは検証できなかった)。

⑥年齢×職業上の地位

図6:年齢×職業上の地位でみた家計金融資産(総額のみ)

015の図6では、正規職員とパートで金融資産の額があまり変わらない、という発見があったが、原因としては、正規職員は比較的若年層が多い一方、パートは高齢者(特に60代)が多いことがありそうだ(表中白丸)。年代ごとに比較したら、すべての年代で正規職員のほうが資産額は多い。
また自営や無職の金融資産が多いのも、結局高齢者が(圧倒的に)多いからのようだ。なお会社役員も同様ではあるが、ここはもともと水準感がぜんぜん違うので、いずれにせよ、という感じである。なお、グラフの都合上表示していないが、構成比は会社役員の有価証券が多い程度で、これまでと同様、現預金比率が50%を下回るような仕分けは存在しない。

⑦年齢×勤め先の規模

図7:年齢×勤め先の規模でみた家計金融資産(総額のみ)

だいぶグラフが分かりにくくなってしまった…これも015の図7では、零細で勤めている人のほうが金融資産持ち、という疑問があったが、なんのことはない、零細のほうが高齢者比率が高い、というだけのようだ(表中白丸)。特に中小以下の規模に勤めている80代の金融資産はめちゃくちゃ多い。まあ、この歳まで現役ということは、経営者等それなりの役職でもあるんだろうけど。
ちなみに図示していない項目別構成比を見ると、「300人以上の企業に務める80歳以上の世帯」が、現預金率を50%を下回っていた。ただここは調査世帯数が10しかなく、かなり偏りがある可能性があると思う。

⑧年齢×収入(?)

図8:収入別家計金融資産(平均年齢プロット)

(資産項目が分かる形での)年齢×収入のクロスはなかったが、データ上各セグメントの「平均年齢」は取得できるので、それを白丸でプロットしたのが図8である。棒グラフ部分は、015の図10と同じ。
あくまで平均ではあるが、低収入層の年齢が高く、400万円前後からほぼ横ばいになっている。300万円~400万円前後で、それ以上の収入層より、金融資産の保有額がほぼ同じまたは多くなっているのは、高齢者が比較的多いから、と推察される。一方で、特に300万円以下の低年収層は更に高齢者が多いと思われ、その割に資産額が少ないのは気になる。
ちなみに今更だが、収入が1000万円を超えるくらいから、有価証券保有額の割合が高くなっている。ただそれでも、現預金比率は50%を超えた水準にある。

まとめ

というわけで、015で確認した事項を深掘りする形で、8つのグラフを確認した。気づきの点としては、下記が挙げられる。
A. 金融資産保有額は、細分化して確認しても、世帯主の年齢に強烈に比例している(図2、3、4、6、7)。
B. 世帯主が60歳を超える世帯のうち、年代が上がるほど金融資産が明確に減少しているのは単身女性くらいで、他のセグメントは金融資産をあまり取り崩していない。つまり、多くの世帯は年金等の収入の範囲で十分生活出来ており、老後のための貯蓄が過大となっている可能性がある。
C. 年収400万円前後までは高齢者の割合が高い。これは、このあたりのセグメントの金融資産保有額が、それ以上の所得層と遜色ない水準となっている理由の一つと考えられる(図8)。
D. 一方で、特に300万円以下の低年収層は更に高齢者が多いと思われ、その割に資産額が少ない。これはAの「金融資産保有額が世帯主の年齢に強く比例している」ということに矛盾しているようにも感じられる(図8)。
E. 資産項目の構成比は、セグメントを細分化しても、あまり特徴は見受けられなかった。ほぼすべてのセグメントで、現預金比率が50%以上である。

というわけで、一旦事実確認は以上。他にも切り分け方は色々あるが、あとは必要に応じて追加分析をすることとしよう。
次回はそろそろ仮説を設定してみたい。ダラダラやっても話の経糸がないし、先日ニューヨークでまた謎な発言が出てきたことだし、そのあたりをネタに始めたい。


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