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趣味のデータ分析076_弱男 vs 弱女⑧_弱者と強者の構造推移

前回まで、弱者男女間の量的質的差異について分析し、以下のような結果を得た。 ・人口は経時的にも男女間も大きな変化なし。 ・構成比は女性のほうが多いが、差は縮小傾向。 ・弱者男女内での平均値、中央値も、男女格差があったものの、差は大幅に縮小(データによっては消滅)。 弱者男女間の差異は、平成の時代は、特に質的に一定の差があったが、漸次縮小し、令和に至ってほぼ消滅したといえる。 さて、これまでの分析は、表題通り弱者=「未婚」の「低所得者」を対象としてきた。だが、当然ながら、世の

    • 趣味のデータ分析075_弱男 vs 弱女⑦_弱者男女の30年史c

      前回は、配偶関係別所得別の所得分布を時系列で示し、さらに中央値と平均値の推移も時系列で示した。結果、以下のことが分かった。 ・男性は未婚その他含め、1997年をピークに中央値、平均ともに2012年にかけ減少し、その後回復傾向にある。ただ、2022年時点でも、1997年レベルには回復していない。 ・女性は、1997年以降2012年まではほぼ横ばいではあるものの、中央値、平均ともに、総じて上昇傾向にある。 今回は、これまでの分析をベースに、弱者男女を改めて定義したうえで、弱者男

      • 趣味のデータ分析074_弱男 vs 弱女⑥_弱者男女の30年史b

        前回、弱者男女の数や割合について、時系列で追ってみるという試みを始めた。弱者男女とは、要するに未婚低所得の男女を指す。 色々統計上の問題もあるのだが、結果、15歳以上無職込みのデータで分析すると、未婚男性については、所得階層別の数や割合について、時系列で大きな変化はなさそうだが、未婚女性については、高所得方向に分布が移り変わっていることが示唆された。 今回は、無職を除いた場合のデータをまず分析することから始める。 所得分布の時系列変化・無職抜きさて、なぜ無職抜きとするかとい

        • 趣味のデータ分析073_弱男 vs 弱女⑤_弱者男女の30年史a

          069~072で、2022年時点で、弱者男女のどちらが多いか、また彼/彼女らの所得がどのようなものかを分析してきた。結果として、弱者男女は数も割合もその分布も、かなり似通っていることが判明した。 さて、これまでの分析は、就業構造基本調査の性別配偶関係別所得別のデータをベースにしつつ、学歴(在学か卒業者か)を仕分け、さらに国勢調査で無職の補正を行う、という面倒なことをやっていた(ついでに言うと、国勢調査ではなく就業構造基本調査内で無職データが取得できることも後で判明した。まあ

        趣味のデータ分析076_弱男 vs 弱女⑧_弱者と強者の構造推移

          趣味のデータ分析072_弱男 vs 弱女④_弱者男女は同じくらいいる。

          069から、弱者女性――未婚の低所得女性が、弱者男性より多いのか少ないのか、という論点について分析を続けてきた。具体的には、まず命題としては下記の通り。 そして071で、無職を含む性別配偶関係別の所得分布を並べ、低所得の定義を以下の通り整理した。 今回は、これら6種類の定義に基づき、弱者男性と弱者女性の数/割合について、結論を出したい。 命題の検証まずは、各基準以下の所得の未婚者を、男女別に示そう。結果は図1のとおりとなった。これを踏まえ、命題1~2-2の検証を行う。

          趣味のデータ分析072_弱男 vs 弱女④_弱者男女は同じくらいいる。

          趣味のデータ分析071_弱男 vs 弱女③_女の貧乏、男の貧乏

          069から、弱者女性の数に関する分析を始めた。前回は母集団の整理を行ったのみだった。今回も引き続き、母集団の整理を行い、そして「弱者」の重要なファクターである、「低所得」の定義を行うところまで進めたい。 年齢基準の導入前回は、全就業者に無職を加え、学生を抜いた母集団を作成した。それを踏まえた分布は下記である。無職が一目瞭然に多い。 これは明らかに、無職の高齢者を含んでいるからだが、さて、弱者男性/女性の定義に、年金生活者が含まれるだろうか? 当初の弱者男性/女性の定義は「

          趣味のデータ分析071_弱男 vs 弱女③_女の貧乏、男の貧乏

          趣味のデータ分析070_弱男 vs 弱女②_母集団整理

          前回、「独身高齢女性たちが、労働意欲も低く貧困率も高い」という事実があるかどうかという問題提起を行い、統計上処理できるように命題を以下のように整理した。 命題1:弱者女性の数>弱者男性の数 命題2-1:「女性全体に占める弱者女性の割合」>「男性全体に占める弱者男性の割合」 命題2-2:「未婚女性全体に占める弱者(低所得女性)の割合」>「未婚男性全体に占める弱者(低所得)男性の割合」 命題2-3:「低所得女性全体に占める弱者(未婚)女性の割合」>「低所得男性全体に占める弱者(未

          趣味のデータ分析070_弱男 vs 弱女②_母集団整理

          趣味のデータ分析069_弱男 vs 弱女①_弱さへの逃走(闘争)

          先日まとめサイトで、なかなかに痺れる記事を見た。 子どもを産まない女性=劣化版男性、としたツイートに対して、 →「子どもを産まないという選択をしただけ」 →「子どもを産まない覚悟はしたが男性と同様に働く覚悟はできてない」 →「なんでそんなこと言えるんだよ」 →「ソースは今まさに産まない選択をした独身高齢女性たち。労働意欲も低く、貧困率も高い」 という、Xでは珍しく、幼稚な煽りもなく淡々と展開された、その分ナイフが鋭さが際立つやり取りであった。 さて、本論法は結局、「独身高齢

          趣味のデータ分析069_弱男 vs 弱女①_弱さへの逃走(闘争)

          趣味のデータ分析068_ゆとりある暮らしのために⑬_脱却すべきデフレがない

          065から、日本の、特に2000年代を中心としたデフレの動向を確認してきた。そこで、すべての物価が一様にデフレになっているわけではないこと、特に贅沢品や購入頻度の低い財・サービスのデフレ傾向が強く、そうでない財・サービスはインフレ~ごく弱いデフレ程度に留まっていることを確認した(これまで「財」としか書いてなかったが、普通にサービス価格も一緒に扱っている。以降も、「財」と書く中にはサービスも含まれる)。 今回は前回と同様の手法で、購入頻度別の物価指数を改造して遊ぶのと、耐久財等

          趣味のデータ分析068_ゆとりある暮らしのために⑬_脱却すべきデフレがない

          趣味のデータ分析067_ゆとりある暮らしのために⑫_必須の財のインフレ率

          前回、前々回と、インフレ率の詳細を追っかけてきた。そこで判明したのは、財ごとにインフレ率は大きく異なること、特に基礎的収支/選択的収支項目別及び購入頻度別でインフレ率を見たとき、基礎的収支項目のほうが、また購入頻度が高い財のほうが、インフレ率が高いことが分かった。 具体的には、総合的な物価指数は、1998年をピークに、2000年代はほぼ横ばいから微減で推移し、2014年の消費税増税のタイミングから始まっている(そして2022年後半から加速している)。しかし、基礎的収支項目及

          趣味のデータ分析067_ゆとりある暮らしのために⑫_必須の財のインフレ率

          趣味のデータ分析066_ゆとりある暮らしのために⑪_物価にまつわるエトセトラ

          065では、消費者物価指数の計算法と、特に基礎的支出項目は2005年にはインフレ傾向が復活したが、選択的支出項目は2014年までデフレ傾向が継続していたことを確認した。 最終的には、この基礎的支出項目と選択的支出項目(のインフレ率)の詳細を確認したいのだが、その前に、ぱっと気になった下記の点を浚っておく。 ・所得階層別物価上昇率 ・メジャーなデフレ財はなにか ・購入頻度別物価上昇率 ・財のウェイトの推移 では、やっていこう。 所得とインフレ率の関係前回基礎的支出項目≒生活

          趣味のデータ分析066_ゆとりある暮らしのために⑪_物価にまつわるエトセトラ

          趣味のデータ分析065_ゆとりある暮らしのために⑩_デフレってどこの世界線?

          ここ1年ちょい、インフレだのどうだの言われており、更にその前には「デフレからの脱却」とか言われていたが、「値段が横ばいだったことはあっても、値段が下がった、と明確に言えるものってなんかあっただろうか」とはたと気付いた。ただでさえ消費税増税で、スーパーで支払う金額は増えているし、物の量だけ減らしたサイレント値上げなんてことも言われている。 というわけで、超今更だが、今回は物価の動きの基本のきを復習する。 消費者物価の取り扱いまずは、消費者物価指数がどのように計算されているか、

          趣味のデータ分析065_ゆとりある暮らしのために⑩_デフレってどこの世界線?

          趣味のデータ分析064_ゆとりある暮らしのために⑨_稼ぎは増えたが、使わない

          062、063では、年次、月次で黒字率の推移を確認した。結果、以下のことが分かった。 ・黒字率は1985年以降、20%台後半でほぼ横ばいで推移した後、2015年過ぎから上昇し、2022年には30%を超える水準。 ・所得年齢別で見ても、(水準は別にして)概ね同様に推移。無職や単身世帯も、2015年ころから黒字率が上昇し、2022年が過去最高水準となっている。 ・月次で見ても、黒字率は2017年以降概ね上昇傾向で、コロナ禍以降高止まり。2022年後半以降の、物価上昇の黒字率への悪

          趣味のデータ分析064_ゆとりある暮らしのために⑨_稼ぎは増えたが、使わない

          趣味のデータ分析063_ゆとりある暮らしのために⑧_物価高でも、ゆとりあり

          062で、日本の黒字率が、二人以上でも単身でも、年収別でも年齢別でも、趨勢的に上昇傾向にあること、特に2015~2017年前後で切り上がっていること、勤労世帯の全体平均で見た水準は概ね30%前後であることなどを確認した。 ただこれらのデータは、年ベースの長期的な傾向であり、特に2022年以降の急激なインフレ率の上昇の状況はほとんど反映できていない。というわけで今回は、2017年以降の月次データを用いて、直近の動向について確認していきたい。なお、直近データは2023年10月であ

          趣味のデータ分析063_ゆとりある暮らしのために⑧_物価高でも、ゆとりあり

          趣味のデータ分析062_ゆとりある暮らしのために⑦_国民総黒字時代

          久々の「生活のゆとり」ネタである。これまで021~023、029、032、033で、「1年前と比較して生活水準は改善しましたか」という趣旨のアンケートと、それに相関しそうな各種指標との相関関係を調べてきた。 結果、最も相関しそうな「黒字率」とは、相関係数は0.25程度で、最も明瞭に関係があるのは失業率、ということ、また黒字率は年齢や所得階層で見ても、特に2015年頃からほぼすべての階層で上昇していることが確認できた。要するに、景気が悪いだの税金が高いだの物価上昇だのは、ある程

          趣味のデータ分析062_ゆとりある暮らしのために⑦_国民総黒字時代

          趣味のデータ分析061_子どもを持つということ⑰_一緒に住んで確かめる?

          前回はデキ婚のデータについて再調査を行った。結果、以下の2点が判明した。 ・デキ婚は増えている可能性があるが、あくまで22歳以下で、それ以上では増えていない。 ・結婚ー出産間隔は長期化の傾向にある。特に25~32歳でその傾向は顕著。 さて、この結果は出生動向基本調査によるものだが、別の人口動態調査特殊調査(043)では、デキ婚は2000年代がピークでそれ以降は増えていない、という結果になった。この結果の(若干の)違いは、データソースの違いももちろんだが、人口動態調査特殊調査

          趣味のデータ分析061_子どもを持つということ⑰_一緒に住んで確かめる?