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趣味のデータ分析061_子どもを持つということ⑰_一緒に住んで確かめる?

前回はデキ婚のデータについて再調査を行った。結果、以下の2点が判明した。
・デキ婚は増えている可能性があるが、あくまで22歳以下で、それ以上では増えていない。
・結婚ー出産間隔は長期化の傾向にある。特に25~32歳でその傾向は顕著。

さて、この結果は出生動向基本調査によるものだが、別の人口動態調査特殊調査(043)では、デキ婚は2000年代がピークでそれ以降は増えていない、という結果になった。この結果の(若干の)違いは、データソースの違いももちろんだが、人口動態調査特殊調査では「同居開始時」が期間計測の起点になっていることが大きいと考えられる。つまり、同居開始と結婚(婚姻届提出)のラグが、デキ婚が増加しているか否かの結果の差に繋がっている、ということだ。
今回は、このラグ=同棲期間の状況について確認する。

(構成/概要)
■最近のトレンドは、同棲してから婚
・既婚者については、結婚時期が最近になるほど、同棲経験者が増える。また、若い夫婦(妻)ほど、同棲経験者が増える。
・ただ、同棲期間については、長期化傾向はやや判然としない。
■同棲したって別れるときは別れる
・未婚者の場合、年齢が上がっても現在同棲率は高くない。
・親との同居は、年齢や調査時点でも、明確な変化はない。

最近のトレンドは、同棲してから婚

まずは同棲についてだが、すでに043で、図1の人口動態調査ベースでのグラフを示した。これによれば、同棲はしていないほうが多数派ではあるが、近年は減少傾向にあり、反対に、1年以上の同棲をしている者が増加傾向にある。

図1:同居を始めたときから婚姻届出までの期間
(出所:人口動態調査)

この同棲期間についても、出生動向基本調査で少しだがデータがあるので見てみよう。まずは既婚者のデータから(図2、3)。
時点は2015年、2021年時点調査のものがある。ややわかりにくいが、横軸が結婚時の妻の年齢、凡例が結婚時期で、現在結婚している相手と、結婚前に同棲期間がある者の割合を示している。年齢区切りが2時点で異なってげんなりなのだが、いずれのデータでも、
・結婚時期が最近になるほど、同棲経験者が増える
・若い夫婦(妻)ほど、同棲経験者が増える

ことがわかる。どちらかというと、妻の年齢よりは、そもそも結婚時期の影響のほうが大きそうにも感じる(若い妻はサンプルが少ないのでブレも大きいし)。

図2:結婚時期別、結婚時の妻の年齢別の、同棲経験割合(2015年)
(出所:出生動向基本調査)
図3:結婚時期別、結婚時の妻の年齢別の、同棲経験割合(2021年)
(出所:出生動向基本調査)

次に、同棲経験者の同棲期間を確認しよう。2015年は図4のとおりで、なんとなく若い子のほうが同棲期間が短いが、25歳以上では、年齢別にあまり差は見られないように感じるし、結婚時期での差もはっきりしない。12ヶ月前後が平均で、2年を超えることは稀なようだ。

図4:結婚時期別、結婚時の妻の年齢別の、平均同棲期間(2015年)
(出所:出生動向基本調査)

2021年はデータがまた構造が変わり、意味のある平均値の推計すらできないデータになったので、構成比を示すことにする。サンプルが少ない部分も多いのだが、概ね同棲期間は0~1年で過半数を占める(一応、図1とは整合的である)。なんとなく、2010年代のほうが同棲期間が短いような感じがする。

図5:結婚時期別、結婚時の妻の年齢別の、平均同棲期間(2021年)
(出所:出生動向基本調査)

まとめると、既婚者については、
・同棲経験者は、妻が若いほど、また結婚時期が最近であるほど多くなる
・同棲期間は、年齢や結婚時期で顕著な差は見られない

という感じだろうか。前者は人口動態調査と合致する。後者はそもそもはっきりしないが、同棲に関しては、人口動態調査のデータも定義的に信頼性が低いものではないので、「1年以上の同棲をしている者が増加傾向にある」という結論でも良いのではないかと思う。

同棲したって別れるときは別れる

さて、人口動態調査で取得できないのは、未婚者の同棲状況である。出生動向基本調査では、未婚者についても同棲経験や状況について確認しているので、次はそれを見ておこう。グラフは図6である。
未婚の同棲経験者は、そもそも数が少ないが、なかなか複雑である。年齢が高いほど(当然だが)同棲経験者は増えているが、
・20~24歳は、2002~2005年に同棲率が上がり、以降減少
・25~29歳は、2002~2005年に同棲率が一度ピーク、以降減少し、2021年に再度ピーク
・30~34歳は、概ね最近になるほど同棲率が高くなる
と、調査時期との関係は、年齢層によって異なる。なかなか根拠を見出すのは難しいが、女性の学歴が上がって「20代前半で同棲できるような高卒女性」が減少したこと、無理して親から自立するより、子供部屋おじさんおばさん(という歳でもないが)で十分という価値観が増えた…ということだろうか?あるいはさらに、特に若い男女での「恋愛離れ」が、特に2005年以降にあったのかもしれない。
ただ、既婚者については、2000年~2010年代は同棲率が単調に上昇した時期でもあり、食い違いも感じる。同棲経験率の高い2021年の25~29歳は、2015年調査における20~24歳とほぼ合致するが、そこは同棲経験率が比較的低いというのも不思議。サンプルバイアスだろうか?

図6:調査時期別年齢別の、未婚者の同棲経験割合
(出所:出生動向基本調査)

図6がやや判然としない結果だったので、現在進行系で同棲している者がどれくらいがどれくらいかを確認すると、図7、8のとおりとなった。2021年の25~29歳が、男女ともに突出して同棲している割合が高いが、それ以外は、年齢や調査時点でまちまちで、図6と同じく特に傾向が見られない。年齢が高いほど「現在同棲している」割合が高いかと思ったが、そうでもないようだ。
ただ、図8を見るに、年齢が上がると、同棲経験者に占める現在同棲している者の割合が下がっているように見える。図6、7のとおり、年齢が上がって分母は増えるが、分子は増えないことを素直に反映した形だが、図8から判断するに、25歳以上では、過去同棲までした仲であっても、7~8割は別れるときは別れるということが分かる。

図7:調査時期別年齢別の、未婚者の現在同棲している割合
(出所:出生動向基本調査)
図8:同棲経験のある者のうち現在同棲している割合
(出所:出生動向基本調査)

ついでに、親との同居の状況についても、可能な範囲で見てみよう(図9)。結果、よくわからない。とりあえず、世間的に揶揄の対象である(と思われる)子供部屋おじさんおばさんは、実態は(未婚者であれば)多数派であることが分かる。男女で言うと、女性の方がやや多い。ていうかあの言説、一人暮らしの若者が多い、「都市部に出てきた田舎者」の言説だよね。

図9:未婚者のうち親と同居している割合
(出所:出生動向基本調査)

一応図9から読み取れるのは、25~29歳の、特に女性では、調査年が下るにつれ、親との同居率が下がっていること。この年代は、現在同棲率が高い層でもあるので、図10では、親と恋人の同棲率を合算してみたのが図10である。
だが、合算しても25~29歳の傾向に大きな違いは無し。親/恋人倍率は、値が大きいほど同居相手が恋人の割合が大きいことを示すが、これも判然としない結果。未婚者の7割前後は誰かと同居していることは安定的に言えそうだが、内訳とか年齢の傾向とかは特にないのかもしれない。というか、2021年の25~29歳の外れ値感が強い。

図10:未婚者のうち親と同居している割合
(出所:出生動向基本調査)

最後に、未婚同棲経験者の同棲期間は図11のとおりである。これもちょこちょこブレはあるが、同棲期間の80%は3年以内、20%はそれ以上の長期、という感じだろうか。

図10:同棲開始年齢別の、同棲経験者の同棲期間分布
(出所:出生動向基本調査)

まとめ

今回は同棲について、出生動向基本調査で色々調査をしてみた。結果としては、
・既婚の同棲経験者は、妻が若いほど、また結婚時期が最近であるほど多くなる。ただし、同棲期間は、年齢や結婚時期で顕著な差は見られない。
・未婚の同棲経験は、年齢が上がるほど増えるが、現在進行系の同棲率は年齢等で差がない。同棲までしても、7~8割くらいは別れている。
・未婚者の7割は親なり恋人なりと同棲している。大体は親。
ということは分かった。ただ、未婚者の同棲の傾向や同棲期間については、何とも判断できないことも多い。
もう一つ、子供部屋おじさんおばさんは、男女ともに7割程度存在することも分かった。

結婚との関係では、(単なる法的手続きに過ぎない)結婚は、同居と出産と強い相関があったが、同居が結婚を意味しない、という傾向が強くなっているのかもしれない。あるいは、結婚前に、同棲で生活スタイルが一致するかなどを見極める、端的には慎重になる傾向が強くなっているのかもしれない。
そして、このように結婚前の同居自体の増加、同居期間の増加(の可能性)から見ると、043で確認した、近年は同居起点のデキ婚が減少しているという傾向は、婚姻起点のデキ婚ベースの上昇と矛盾しないことを示す。要するに、060で示したとおり、結婚起点ではやはりデキ婚は上昇していると考えて良いのだろう。さらに、同じく060で観察できた、25歳以上での結婚ー出産期間の長期化についても、同棲を鑑みると、同居+結婚と出産の関係性が更に遠ざかっている可能性を示唆するといえるだろう。

補足、データの作り方など

データは出生動向基本調査。今回は、そもそも同棲経験者等が全体的に数が少なく(特に若年層)、同棲期間の平均値等は、信頼性にやや難がある可能性もある。具体的には、2015年、2021年ともに、同棲有無自体は「1985年~1989年に結婚」からデータがあるが、サンプル数が極端に少なかったため、今回は、サンプル数が100を超える区分のみデータを取得している。あと2015年以降、2020年以降のサンプルも何故か存在しているが、なぜ存在しているか不明(調査時期までに結婚したサンプル?)で、サンプル数も多くないので完全に割愛した。
ほか、2015年の未婚者の同棲期間は、総数の元データが変である(不詳が変な集計をされている?)。今回は、総数データは使用せず、内訳の積算から計算を行った。

最後に、完全に余談になるが、2002年と2015年には、親との同居有無と収入の関係のデータが取れたので、それをお見せしておこう。
時点が13年もズレている上、所得の区切りも大きく異なり、また年齢構成の問題を度外視した全体で集計しているため(サンプル数が少なくなりすぎる)、一概に議論することは難しいのだが、
・男女ともに、年収が上がるほど同居率は下がる
・特に、一定所得以上の男性は、同居率が極端に下る
というのは共通する特徴のようだ。ただ後者は2002年時点では1000万、2015年でも600万円以上と、世の中平均を結構上回る水準なので、「こどおじは所得が低い」というのも、そこまで自明でもないといえるだろう。図9でも確認できたとおり、最高所得層以外は、概ね50%以上は親と同居している。というか、女性は高所得でも同居率が高いほうが気になる。これはどちらかと言うと、社会的な要因な気がする。

図10:未婚者の年収別親との同居割合
(出所:出生動向基本調査)

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