見出し画像

野生

いろんな鳥がめっちゃ鳴いているなぁ

携帯を見たらまだ早朝の4時だった。

暑いので窓を開けて寝ていたのだが
複数の鳥たちの声が入ってくる。
その中に「ほーほけきょ」までくっきり聞き取れる。

天気もいいし、鳥たちが朝から張り切っている感じ。
かわいいなぁ。
まだ眠いが一時間後には起きる。
きっと、今日もいい日だろう。

私は二段ベッドの上で寝ている。
早朝階段から降りるときに向かいの鏡に短パンから出た脚が映る。
元気な鳥の声を聞きながら、
自分のほっそい脚に心細さをおぼえる。

大学生になった息子と部屋を共有している。
とはいっても、私はだいたいPCとスマホと1Fのダイニングにいるので
寝るときだけ二段ベッドに上で本を読んで寝るだけなのだが。
高校まで使っていた彼の部屋は今は高校生になった妹が使っている。

夜、外から、ぴゅっぴゅっ と音がする。
車を運転しながら何度も出会ったが、鹿。
鹿かな、、、と思う。
そこの茂みにいるんだろうなと思う。
近い。しかも複数だな。

夜、外から、きっ とか にっ とか甲高い声がする。
怖い。
それが、どこから鳴っているのか分からなくて、
しかも声が移動しているっぽいのが気持ち悪い。
猿かな、、、と思う。
うろうろしてんだろうな、と思う。

「なんか、、近いよな・・野生が」と息子に言う。

うちは山の麓みたいなところにあって、近くに山の神様の鳥居があり、
家のこんな近くに鳥居がるなんてのがそもそも珍しいのだと息子は言う。

うちは、息子も娘も私も各々がよく散歩に行く。

ごもっともなことを助言したもらえることもある。
私の職場も息子の大学も娘の高校も今住んでいるところから遠いんだから、
近くに、街に引っ越したら?

経済的にも労力的にもそうなんだけど
結局今は
ここに住みたい んです。3人とも。

美しい町っていうのもあるけれど、
近くに大好きなおじいちゃんとおばあちゃん家があることも絶大で。

散歩

私はヘッドホンをする
娘はスマホで写真を撮ってくる
息子は一貫して何も持って行かない。それこそ、本気の散歩と思う。

試しに、私も何も持たずに散歩に出る。
めちゃめちゃ音に敏感になる。

実は「風」の感覚、「風」のその日の調子を感じるようになったのも最近で
風がすごく聞こえる。

草の生命力は狂暴で、全部を緑であっと言う間に覆っていく。
緑ばっかりだ。
緑の合間から白い光が降ってくる。

今日はヘッドホンしていないので、めちゃめちゃ音がする。


虫各種

遠くに車の音
遠く遠くに高速道路

飛行機の中から見た空と同じ感じで雲と青空が流れていく。

近くの茂みが動く音

いつだって、林の木の間には熊がいて、こっちを見ている気がする。
いつだって、動物に襲われそうな気がする。

散歩にはいつもちょっとした緊張感がある。

自分たちの家の近くに、野生動物たちがいる。

夕方、駐車場に車を入れようとすると、何かが跳ねて逃げた。
いたちかなと思った。

また、次の日、駐車場で動物が跳ねいて、
駐車した後も、茶色いそれは動かず、もぐもぐと草をはんでいた。
普通に、ウサギがうちの駐車場で草を食べていた。

ウサギもタヌキもキツネも鹿も猿も熊も鳥も、なんだか近くになってしまった。

私が子どもの頃は、野生の動物の姿は見ることはなくて
捨て犬がその辺にいて、登校中嚙まれたりしていた。
捨て猫を秘密で集会所でみんなで飼ったりしていた。

うちの背後に聳える山々は、いっぱいの生命を抱えている。
山々は毎朝神々くてため息をつく。

どうか、彼らが山の中でじゅうぶんの食っていけるように
その豊かさを保てますように。

狂暴ってくらいな緑の美しさが圧倒する自然。
綺麗で手を伸ばして触れて、空を見ていてい、その隙間からの白い太陽に光。

私は今パラレルワールドみたいに
渋谷にいる自分を
NYにいる自分を
アマゾン川にいる自分を
ガンジス川にいる自分を
ウクライナにいる自分を
シリアにいる自分を
韓国にいる自分を
スウェーデンにいる自分を思う。

緑があって
仕事があって
野生動物がいるくらい豊かで
愛する人がいて

どこだって、木々の隙間から白い太陽に光が漏れている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?