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「体験」から作るゲームデザイン

■ゲームデザイナーの役割とは何か

「The Art of Game Design」という海外で最も支持されている(と思われる)ゲームデザイナー向けの本があります。

この本に以下のことが書かれています。

ゲームデザイナーの役割は何でしょうか。
そんなこと明白? "ゲームを作ること" では?
それは違います。
ゲームは最終的な形式に過ぎません。

ゲームが楽しいのは、ゲームを遊ぶことで得られる「体験」があるからこそ。
この「体験」を魅力あるものにするのがゲームデザイナーの役割です。

■ボードゲームデザイナー・ミヤザキユウさんの場合

ボードゲームデザイナー・ミヤザキユウさんは、自身のゲームが生まれる過程を以下のように書いています。

思えばいままで、「何かゲームを作ろう」という動機からは、ゲームを作れたことが一度もない。

最初に自分がワクワクする世界観があって、それを他の人にもワクワクしてもらうためにはどうすればいいだろう、と考えてゲームをデザインしてきた。

同様の目的を達成するためには、マンガや小説を用いることも考えられる。しかし自分のもっている能力やリソースを鑑みて、ある世界観の持つ魅力を、最も伝わるように翻訳する手段としてゲームを選んだのだ。

「感情を翻訳してゲームをデザインする」プロセス その1

"ゲームを作るためにゲームを作る" ということをしていません。むしろゲームとは無関係の何かの「世界観」から受けた「自分の感情」を分析して、それを再現するためにゲームを構築する、という方法を取っています。

■桝田省治さんの例

桝田省治さんは「リンダキューブ」や「俺の屍を超えてゆけ」といった独特の世界観とゲームシステムで、ゲームファンの高い支持を得ることに成功しました。それらのゲームが生まれるまでの「思考の過程」「発想法」などをまとめた本がこちらです。

この本に書いてある、桝田省治さんの発想法は以下の流れとなっています。

1. まず、僕が面白いと思うとこと、逆に言えばユーザーを面白がらせたいゲームむきのネタをどこかで見つける
2. 次にそのネタを再現するためのルールやゲームの目的を考える。ようするにシステム部分の構築だ
3. そのルールや目的が存在してもおかしくない世界設定をでっちあげる。ようするにシステム部分の構築だ
4. 最後に、ルールや目的、世界設定が説明的にならず、感覚的に理解しやすいシナリオやキャラクターを追加する

桝田省治さんも "ゲームシステムありきでゲームを作っている" のではなく、ユーザーを楽しませたいことの1つの形式としてゲームを利用している、という作り方をしています。

■ゲームジャンルから発想するのではなく、体験から発想しよう

ここに突然私事を書いて申し訳ないのですが、私は何かにつけて「ゲームジャンル」からゲームを作ろうとしているようです。

関連記事:個人ゲーム開発者として生活していく方法
 →ジャンルからゲームを作る、ということを書いています。

関連記事:個人ゲーム開発におけるマーケティング戦略
 →ジャンルのテンプレを抑えよう、といったことを書いています。

自分を擁護するためではありませんが、これはある意味正しいです。というのも、ゲームを少しずつ形にしていき、その結果となる最終的なクオリティは "ゲームをいかに理解しているか" という部分で決まるからです。「体験」の感覚的なインパクトはゲームを繰り返しプレイするうちに薄れていきます。そのため、より深く楽しませるためにはそのゲームのシステムがどのように作用しているかを意識して機能させる必要があります。

しかし、とっかかりとして「どのような感情をプレイヤーに体験してもらうのか」という部分を無視してしまうと、無味乾燥なゲームができてしまいます。改めて自分のゲームを見直してみると、テクニック・技術に寄りすぎて広がりがないのですよね。
よく個人制作のゲームには「作家性」が必要ということが言われるのですが、「作家性」を表現するために必要な要素として、「体験」や「感情」の表現があるのでないか、などという気がしています。
なので、今後はもう少し「体験」や「感情」を重視したゲーム作りをしよう……、などと思ったりしました。


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