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火曜日しばらく雑記帳・2023 CW24

先週の雑記帳に書いたように、今年3冊目の洋書はErin Meyer著 "The Culture Map"、なかなか面白く、また読みやすい文章なのでスイスイ読めている。

各国のカルチャーを測る軸として次の8点があげられていて、それぞれについていくつかの典型的なエピソードを語りながら章を費やし詳述している。

1. Communicating: low-context vs high context
2. Evaluating; direct negative feedback vs. indirect negative feedback
3. Persuading: principle-first vs. application-first
4. Leading: egalitarian vs. hierarchical
5. Deciding: consensual vs,, top-down
6. Trusting: task-based vs. relationship based
7. Disagreeing: confrontational vs. avoids confrontation
8. Scheduling: linear-time vs flexible-time

今、これらのうち、4本目の軸 "Leading" の章を読んでいるところだ。いろいろ書いておきたいところもあるが、3本目の "Persuading: principle-first vs. application-first” 「説得力:根拠からの積み上げか、結論から詳細か」で思い出したことなど、徒然に書き記しておこうと思う。

この章の内容については、タイトルから想像できるだろう。前提条件からスタートし起承転結で説明したほうが話が進みやすいか(ドイツやフランスなど)、結論から始めて後から詳細を付け足すほうが話が進みやすいのか(アメリカやイギリスなど)、世界ではいろいろな文化があるという。

一般に巷でよく言われる「ビジネスの世界標準では結論から先に言う」あるいは「結論だけでいい」というのが、実は広い世界では通用しないことがあるということだ。

日本で働いていて海外と接点のない会社員であっても、役員は忙しいんだ、些末なことに関わっているひまはない、まずは結論をサルにでもわかるように書け、と怒られたことがある人も多いことだろう。俺の時給はいくらだと思っているのかね、きみは。まず結論を先に述べよ、論旨は逆三角形だ、それが世界標準だ、と上司から同僚から時には部下から耳がタコになるくらい聞かされていることもあるかもしれない。

ところで、世界標準とは何だろうか。もちろん米英ローカルである。日本にいると米国のローカルはすなわち世界標準のように錯覚してしまうがそれ一本槍ではうまくいかないことも多いことは知っておいて損はないだろう。

実はこの論理展開はドイツ人の多くには通用しない、という。

ドイツ人のビジネスマンに対して説得力のあるメールは、まず前提条件を述べる、データや考察の妥当性を比較検討する、論理をつみあげて最後に結論を述べる、このような展開であるという。

そういえば、確かに、以前につきあいのあったドイツの会社はそうだった。なにしろ、役員が全員 PhD、技術の最先端から現場まで細かい内容を熟知している人ばかりだった。設備導入のための役員決裁の会議でさえ、提出される資料は技術の詳細にわたる文字とデータでぎっしり、それを仔細に検討していた。

最初に結論を持ってくると、なんでそんな結論に達したのか、あれは考えたのか、これは考えたのか、前提条件の一部が間違ってるのではないか、と山のように質問がきて紛糾する。せっかく結論から話をして、詳細を省き言いたいことだけを強調するスライドを並べ、細かい技術論はAppendixに集めて説明は省略、と思って用意しても話を始めた直後から説明の順番はぐちゃぐちゃになるし、そのうえ、「このスライドではtotal88個と書いてあるが、次のスライドのグラフの数字を足してみると 86個しかないじゃないか。2個はどこへ行ったのか」など、ドイツならではの細かいところの質問で紛糾して「・・後日確認する」「ふーん(懐疑的)」という具合に、プレゼンは台無しになったりする。ドイツに限らず日本でも他の国でも、相手によってはよくあることだとは思う。

やはり、あれやこれや振り返ってみれば、起承転結かつ細部をしっかりこだわって作るほうがわかりやすい場面も多かったと思う。(*1)


そういえば、ずいぶん昔、まだ駆け出しのころ当時の上司に言われたのは、「同じことを説得するにもたくさんの説得の仕方があるだろう。あの人にはこの言い方、この人にはこの言い方、そのくらい考えておけ。」

今でもなかなか出来ることではないし、振り返ってみて、あまり出来てきたとは思えない。


自分を知って相手を知る。相手を知って自分を知る。相手を考え自分を考え柔軟に対応する。引き出しをたくさん持っておく。そういう意味では私の周囲にいた仕事の出来る人は、周囲の人をよく観察していて、よく知っていたと思う。

人間への興味があることが仕事を進めるうえで大事なことなのだろう、と反省せざるを得ないときがしばしばある。



■ 先週に引き続き、相変わらず香菜(パクチー)が彩りと香りを添えている。キュウリがようやく季節に入って来た。値段が下がってしかもみずみずしくて美味しいものが出回り始めている。

似たような写真が並ぶし、毎週、似たような写真ばかりではあるので、控えめに、あまり説明を入れずに何皿か並べておこう。

2023/6/7 夕食
ほうれん草と鶏のクリーム・マスタードソースでカサレッチェ
この一品には香菜はなし
きりっと冷やしたシャルドネの瓶に水滴が凝集しラベルにしわがよる
2023/6/8 夕食 鶏のクスクス。
オリーブオイルで鶏を焼いて、ジャガイモ人参玉ねぎ、クミンとターメリックを使っていい香り、クスクスにスープをたっぷり吸わせてこれは美味い。
2023/6/9 夕食 牛スジのカリー
じっくりと炊いた牛スジ肉が柔らかく美味しい。 付け合わせはジャガイモの揚げたのと青唐辛子、そして香菜(パクチー)、十六穀ごはん。 スパイスはコリアンダーシード、クミンシード、フェヌグリークシード、ターメリック、赤唐辛子。
2023/6/10 夕食 鶏とバスマティライスでピラフ・テックスメックス風。
クミンと玉ねぎにトマトの香りがいい感じ。赤頭硝子が少しピリッとアクセント。香菜を散らしてレモンを絞ってあっという間にご馳走様。

6/8の鶏のクスクスは昨日も、似たようなのを作った。ターメリックを使わず、人参を省略、玉ねぎ多目、といった感じで作り若干地味な色だったし、写真は載せないが、だいたい、以上の記述だけで想像できることであろう。

クスクスは手軽だ。単身赴任のお父さんが常備すべきものだと思うのだが、どうだろう。



先週は、川崎のラボに、火水木金と4日も顔を出した。必要だったら行けばいいだけで、別にこだわることは何もない。昔に比べれば今の通勤電車の混雑など大したことはない。行けば行ったで「やぁやぁやぁ」、いいこともあるものである。

2023/6/7 弁当
豚と春キャベツの地中海風、ホウレンソウ、インゲンの胡麻和え、出汁巻き、しば漬けに白ご飯にふりかけ。
2023/6/8 弁当
マグロのステーキ、インゲン、ジャガイモと人参のバター和え、出汁巻き、しば漬けに十六穀入りご飯


■先週にひっかかった音楽を少し。

1.ブラジルから、女性シンガーの大御所、ホーザ・パソス (Rosa Passos) と、ギタリストのルーラ・ガルヴァォン (Lula Galvão)のデュオ・アルバム ”Rosa Passos e Lula Galvão" (Spotify link) がリリースされた。

 シングルの ”Ilusão à toa” がなかなか聴かせる。静かに奏でるギターの伴奏もいいし、ホーザ・パソスの若々しい歌声がしみじみと響く。

YouTubeでのオフィシャルのチャンネルはこちらか。

チャーミングな歌声をたくさん聴ける。


2.先週は、なんといっても、イスラエル出身のドラムス・Roni Kaspi (ロニ・カスピ)。アヴィシャイ・コーエンのトリオでドラムスを務めていたので前から聴いてはいたが、先週、あらためて痺れた。

まずは、アヴィシャイ・コーエンのライブでのドラムソロの動画を。

エネルギッシュでかっこいい。惚れた。

ライブに行けばオリジナルTシャツも買える。かわいいイラストだ。テルアビブに行けば、だが。。

I have some t-shirts ! If you wanna get it, selling it this Friday at my show in TLV. There’s a special price for...

Posted by Roni Kaspi on Tuesday, May 30, 2023

ネットで検索してみると、私が記事を書くときに何度もメチャメチャ参考にさせてもらってきたムジカ・テーハに、またしても良い解説があったので、こちらを読んでほしい。

注目は新加入の若き女性ドラマー、ロニ・カスピ!アヴィシャイ・コーエン新作『Shifting Sands』│Musica Terra (musica-terra.com)

バークリーでは、テリ・リン・キャリントンに師事し、最近卒業、デビューしたばかりだという。


ジャムセッションの動画もいい。

複雑なリズムを軽々と手数多く正確に演奏し、カッチリとメリハリがある音で、エネルギッシュな長いソロも聴かせる。これから、本当に楽しみな人だ。

無名の若い才能を発掘し、共演し新しい音楽を創り、そうして次の世代を作っていく。そういうミュージシャンを知ることができると幸せだ。


3.トルコのセルタブ・エレネル。先週リリースされた "Boş Sokak" がしみじみといい。

トルコのシンガーソングライター、Fecri Ebcioğlu (1927 - 1989) のトリビュートだと思う。Fecri Ebcioğlu 100  Yıllık Şarkılar (フェジリ・エブジオール 100年の歌謡曲)の副題がついていて、イラストのヒゲの男性は Wikipedia (Fecri Ebcioğlu - Vikipedi (wikipedia.org))で見る写真どおりだ

これは、これから何曲かシングルが出て、そのうちにアルバムになるのではないだろうか。楽しみだ。


4.ブラジルの鬼才 シコ・セザールと、マリの大御所 サリフ・ケイタの共演で、シングル "SobreHumano" (「超人的」)もよかった。2022年のアルバム "Vestido de Amor" に収録されていた曲を改めてリミックス(?)したのか Radio Edit とつけてのリリース。

オリジナルの演奏が動画で上がっているので、こちらをどうぞ。

セク・クヤテのコラもいいし、バックのパーカッションやギター、ベースも控えめだがいい演奏だ。

アルバム "Vestido de Amor" の5曲目に収録されている。

シコ・セザールは何度かとリあげているが、まとまった記事にはしていない。なかなか面白い音楽を創るしいろいろなところに顔を出しているようで気に入っている。

サリフ・ケイタは1987年にアルバム "Soro" で世界デビュー、当時のワールド・ミュージックブームの草分けのミュージシャンで、私もよく聴いた。


5.2002年にケープタウンで行われた International Jazz Festival で、ジンバブエのシンガーソングライターのオリヴァー・ムトゥクジ (Oliver Mtukudzi) が出演した音源がシングルで流れてきた。

YouTubeでは去年に公開されているものと同じようだ。

ギターの伴奏、女性コーラスとのコールアンドレスポンスも、アフリカ南部のポピュラー音楽に独特の感覚で、ゆったりと身体を揺らしながら聴くことができる。


6.香港の歌手で女優、吳若希 (Jinny Ng)の「三人之境」。




■先週もぐずついた天気の日が続いたが、雨の谷間の土曜日に、新横浜で 13.8km 走ってきた。今年は、天気が悪い週末が続いていて、少しジョギングの進捗は計画より遅れ気味だ。

2023/6/10 jogging 鶴見川の土手、鴨居駅近く:タンポポに小さいカメムシ

今年の後半になんとか追いつくことができるとは思うが、夏の一番暑いときをどう乗り切れるかがポイントになることだろう。

2023/6/10 jogging 鶴見川の土手、鴨居駅近く:ムラサキツメクサ
写真中央あたりの葉の端っこにテントウムシの幼虫
jogging 鶴見川の土手、鴨居駅近く:ムラサキツメクサ、こちらにはテントウムシの成虫
2023/6/10 265.2km 計画比94.3% 今年の目標は 640km

すぐに雨降りになるというので、土曜日は午前中の早いうちに走っておいた。予報どおりにまたしてもやってきた台風3号の影響で日曜日から月曜日
まで雨降りで、窓を閉め切ると湿度も高く少しうごくとじとっと汗がでる。たまらずエアコンを入れた。


来週の後半には夏至、もうすぐ今年も半分を過ぎることになる。あっという間だ。


■注記

(*1) 他に次のような話の組立がある。雑談のような関係のあるようなないような面白いエピソードから始まって、そこから言いたいことのポイントを鮮やかに抜き出してみせたうえで、理論を紹介して補強したうえで結論を導き、皆感心して「なるほど」と納得させられる。構造としては結論ファーストと同じなのではないだろうか。最初の事例は結論の応用事例、最後の結論はリキャップだ。起承転結に見えて実は結承承結と言えるかもしれない。

本書を始めとして米国のビジネス書の多くはそういう展開をとっているように思う。米国のビジネスマンの多くにとって読みやすいものと思われる。

私にとっても非常に読みやすい。かなりの米国かぶれか、お手軽なハウツー本や入門書に慣れ切ってしまったためなのかもしれない。

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