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僕と彼女の宇宙旅行【連載小説#28完】

#28 別れ

 何分経っただろうか。
 わずかながら空が白んでいて夜明けが近いのがわかった。

 僕たちは必死に駆け上がった。

 地震は収まらず、洞窟がいつ崩れるかわからない恐怖の中、走り続けた。
 それでも、全員が洞窟から地上へ上がって来られた。

 地上の光が見え、やっとだと思った時。魔女が声なのか音なのかわからないような怒号を鳴らしながら上がって来るのが見えた時には、もうすぐなのにこれまでか、と諦めそうになった。

 しかし、それ以上は魔女は追って来なかった。
 追って来れなかったのかもしれない。

 空耳だったのだろうか。
 僕の耳には誰かが囁く声を聞いた気がした。

『ありがとう。あなたのお陰で、世界は救われる。』

 僕たちが助けたらしい神ルーフの声だった気がする。
 きっと僕たちを助けてくれたのだろう。

「マーク!行こ!戻らなきゃ!」
「うん、あぁ。」
「おい、早く行かないと、また一日待たないといけなくなるぞ!」

 ヒューゴ少年がそう言うと、レイトも頷いた。
 二人はこの土地、この星のことをよく知っている。帰るまで頼るしかないのだ。

「今、行きます。」
「ほら、荷物。置きっぱなしだったよ。」

 池のほとりに置いていた荷物。
 森の中の小屋の周りは池で囲まれていたから、服以外は置いていたんだった。

「ありがとう。レイニー。」
「うん。さ、早くケビウスに帰ろ。」
「あぁ。」

 一同は元の国へ帰るべく。
 虎のピケに乗ったヒューゴ少年が先導を切って歩み始めた。

――――――

 帰る時は案外時間を要する事はなかった。
 僕達の宇宙船が隠してある場所へは、少し険しくはあるが近道が存在したらしい。
 この時間なら国境の衛兵も数が少なく、ルートも時間も決まっていて、ヒューゴ少年はそれを熟知していた。よく出入りしているとも言っていた。

「ありがとうございます。二度も助けてもらって。助けてもらえなかったら僕たちは…。」
「よかったよ。本当に。君達はまだ若い。この星はいい星だが、魔女に捕まってたんじゃ意味が無い。」
「そうですね。この星の事、もっと知りたかったんですけどね。それだけは残念です。」
「また来たらいいさ。その頃には国境も無くなっていて、自由に行き来できているかもしれない。」

 レイトは国境の森を見ているのかと思ったが、どうやらもう少し遠くの方を見ながら話していた。
 この星で離れ離れになった仲間と合流すれば、地球に帰るつもりなのかもしれない。やはり母なる星に想いを馳せるのは、人類の性なのだろう。

「それじゃ行きます。また…来ていいですかね。」
「いつでも。な、ヒューゴ君。」
「あぁ、ピケも懐いてるし、遊びに来いよ。」

 名残惜しいが、これでお別れだ。
 ミステリーツアーとしてスタートしたが、大冒険の旅になった。

「ありがとうございました!ばいばい!」

 手を振りながら宇宙船に乗り込んだ。
 懐かしい。ここに来て二日ほどしか経っていないが、物凄く濃い時間を過ごしたからだろう。

 ミステリーツアーは、素敵な出会いをくれた。
 早く帰って家族に話してあげたい。

 また、この星に遊びに来る事を約束して出発した。

END...?

ー 地底の空洞 ー

『ルーフ…許さない。お前の力が弱まったら、直ぐにでもこの宇宙の全てを破壊してやる…。あのガキも…覚えておくがいい…。』

END

T-Akagi


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