小説④お金や仕事のない世界での人の価値


ターミナル内のテロリストを警備ドローンが旋回する。ドローンには麻酔弾が搭載されているので、命を奪うことなく捕獲する。テロリストの一人が火炎放射器で応戦する。
ドローンのボディーを少し焦がすことには成功するも、それぐらいでは機能停止するわけもなく、数十体のドローンは高速でテロリストの周りを縫うように飛び回る。ドローンは音もなく的確に彼らの膝のあたりに麻酔弾を撃ち込んで行く。最後の一人が倒れるまで、わずか数分のことであった。人質の人造人間も全員が無傷。ちなみにこの国の法律では人造人間も普通の人々も労働に関すること以外は同等の権利を有する。そして犯罪はを犯したものは次の月の国民ランキング発表されるまで収容される。裁判というものは存在しないが、国民ランキングに反映されることによって裁きを受けることになる。

レンジ『どれくらいポイント下がるんだろうね?』僕はイブに尋ねる。
イブ『詳しくはお答えできませんが、相当なマイナス評価だと思われます。下位10%入りは避けられないでしょう。』

僕はこれまで下位10%の属する人達に実際に会ったことがないからその人たちがどんな人たちかわからない、良い人達なのか悪い人達かなのかすらもわからない。ただ評価ポイントが低いということは他の大勢の人より少なくとも怠惰だということで、ペナルティを課されることになんとなく納得してしまっている。僕だけじゃなくこの国の全員が。
僕自身もランキングは下位20パーセント程だからこの国にとっていらない人間に近い部類に入るのだろうか?
そう考えていると暗い気持ちになった。明日からまた自己研鑽に努めなければいけない、一体何をすれば良いだろうか?ランキング1位のリオンの真似でもしてみるか、語学に武道にその他色々。僕は普通に人造人間のように労働というものをしてみたいと思った。願わくばそれで他の人に感謝されたいと思った。でもそれは叶わない、人間がやるより人造人間が労働をやる方が正確でそのほうが喜ぶ人も多いのだから。

続く

下に1話目を載せておきました。

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