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『店頭のヒーロー』

その日その商店街は一番活気のある場所でした。
所狭しと並んだ屋台に雑多な商品の数々。
スマホ、スイッチ、鞄や帽子、お寿司にお菓子……
全て紙の工作物。

保育園あげてのお店屋さんごっこ。
年長組が店員に扮し各ショップに入ります。
シンは人気の一、二を争うスマホ売り場に配属されました。
「いらっしゃいませー。いろんなスマホがありますよ」
気恥ずかしかった呼び込みも自然と大きな声が出てきます。

二学年下のカイ君がやってきました。
「スパイダーマンのをください」
「お待ちください、あっ」

商品を手に取ろうとした矢先、横から他の手がのびて取られてしまいました。赤のスパイダーマンは男の子たちの人気だったのです。
それは最後の一個でした。
シンはカイ君を見ました。
カイ君もまたシンのことを見ていました。

「だから、自分が買ってたやつをあげたんだよ。泣きそうだったから」
「すごい。ママはその優しさが好き。ね、パパ」
「お前がスパイダーマンだ」


獺祭や紙で作りしレジスター

(だっさいやかみでつくりしれじすたー)

季語(初春): 獺(かわうそ)魚(うお)を祭る、獺(おそ)の祭、獺祭
※ 七十二候の一つ。二月二十日ごろ。水中に潜む獺は、魚を捕えては岸に並べたあとで食べる、という中国の伝説からきた空想的な季題。



※日記を小説風に表現しています__🖋
たくさんの戦利品を持ち帰ってきましたが、何よりエピソードが一番の宝物となりました。



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