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性の対価交換に対する態度:北欧諸国のジェンダーギャップ

はじめに

研究テーマの概要

今回紹介する論文は、北欧諸国における性的サービスを対価として交換することに対する個人の意識を調査したものです。
性行動に対する性別と一般的な態度を有意な予測因子として特定しました。
この調査は、政府の政策がこの問題に関する世論を大きく形成していることを示唆しました。
性差は顕著で、女性は男性に比べ、対価を伴う性的サービスの交換を容認する傾向が低いことがわかりました。

セックスワークに対する意識を研究する意義

セックスワークに対する意識の研究は、社会的見解や政府の政策を反映し、セックスワークに関わる人々の生活に影響を与えるため、非常に重要です。
性差は態度に大きく影響し、搾取や不平等への懸念からか、一般的に女性はセックスワークを好意的にとらえていません。
セックスワークに対する政府の姿勢は世論を形成するものであり、その姿勢を理解することは、政策立案者がセックスワーカーの権利や社会規範に影響を与える法律を作る際の指針となります。
国を超えての比較や態度に


おける性差は研究されていない分野であり、異なる文化や人口統計にまたがる包括的な研究の必要性を浮き彫りにしています。

Johansson, I., & Hansen, M. A. (2024). Predicting Attitudes Towards the Exchange of Sexual Services for Payment: Variance in Gender Gaps Across the Nordic Countries. Sexuality Research and Social Policy, 1-19.


方法

ヨーロッパ価値観調査(EVS)/世界価値観調査(WVS)のデータを用いた回帰モデルを用いて、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの意識を分析。
調査は2017年2020年に行われ、デンマークで3362人、フィンランドで1199人、アイスランドで1624人、ノルウェーで1122人、スウェーデンで1194人の回答者がいました。

主要な変数には年齢、学歴、収入などの社会人口統計学的変数、政治イデオロギー、政治への関心、プライバシーや男女平等に対する考え方などの態度変数も含まれました。

多変量OLS線形回帰を採用し、サンプリングエラーと潜在的な調査非回答バイアスを補正するために層別化後の調査重み付けを実施。

結果

北欧諸国における意識の違い

デンマークとフィンランド
これらの国々はよりリベラルな態度を示しており、性的サービスを対価として交換することをある程度容認する回答者の割合が目立ちます。
特にデンマークは、交換を「完全に容認できる」とする回答者の割合が最も高かったです。

アイスランドとスウェーデン
対照的に、これらの国々では「決して容認できない」とする回答者の割合が高かったです。
これは、性的サービスを対価として交換することに対し、より保守的なスタンスを反映しており、政府の厳格な政策と一致しています。

政策への示唆
調査結果は、政府の政策が国民の態度に大きく影響することを示唆しました。
性的サービスを対価とする交換に対して寛容な政策をとる国は、よりリベラルな国民をもつ傾向があり、その逆もまた然りです。

意識における性差

ジェンダーの予測力
ジェンダーは主要な社会人口統計学的予測因子として浮上し、スウェーデンを除く北欧諸国では、一般的に女性は男性よりも対価を伴うセックスの交換を好意的にとらえていません

意識の影響
一般的な性行動に対する意識は有意な予測因子であり、リベラルな考えをもつ人ほど、セックスを対価とする交換に応じる傾向が強かったです。

性別と意識の相互作用
リベラルな意識がセックスを対価と交換することに対する考えに与える影響は性別によって異なり、男性に比べて女性の考えに与える影響は小さかったです。

考察

ジェンダーと性行動意識がセックスワーク観に及ぼす影響

性差
調査では、セックスワークに対する考え方に大きな男女差があることが浮き彫りになりました。
一般的に、女性は男性よりも性的サービスを対価として交換することを否定的にとらえています。
これは、ジェンダー不平等や搾取といった社会的影響に対する女性の不安が原因であると考えられています。

性行動に対する意識
本気でないカジュアルセックスに対する考え方は、セックスワークに対する考え方の強い予測因子です。
カジュアルセックスに対してリベラルな考えをもつ人ほど、セックスワークに対して寛容な意識をもつ可能性が高いです。
しかし、この相関は女性では弱いことがわかりました。

政府の政策が世論に与える影響

北欧諸国のセックスワークに対する様々なアプローチは、国民の意識を大きく形成しています。
セックスワークに対してリベラルな政策をとっている国ほど、国民がセックスワークを受け入れる傾向にあります。
たとえば、スウェーデンの厳格なセックスワーク禁止政策は、セックスワークに対する国民の否定的な姿勢と相関しています。

この調査結果は、セックスワーク政策の社会的影響を考慮することの重要性を強調しています。
世論を変えようとする努力は、ジェンダーと性的態度の相互関連性、そして政策が世論に与える影響を考慮しなければなりません。

おわりに

最後に、この論文の要点をまとめます。

ジェンダーと政策の影響

  • 本研究は、北欧諸国における性的サービスを対価とする交換に対する意識の著しい性差を浮き彫りにしました。

  • これは、政府の政策がこの問題に関する世論に大きな影響を与えていることを示唆しています。

意識的差異

  • 意識には顕著なばらつきがあり、一般的に女性は男性よりも、金銭を対価とする性的サービスの交換を受け入れにくいことがわかりました。

  • 一般的な性行為に対するリベラルな意識は、特に女性の間では、金銭を対価とする性行為の交換を受け入れることには一様ではありません。

政策への影響

この調査結果は、性的サービスを対価として交換することに対する社会の意識に効果的に対処するためには、政策立案者はジェンダーと性的規範の相互作用を考慮しなければならないことを示唆しています。
政府の姿勢が社会の意識を形成し、セックスワークに関連するスティグマを軽減する可能性があるとして、この研究は政策認識を提唱しています。

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