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短編小説 (後編) by 新人作家 坂崎和史


Tはその話を聞いて肝を冷やしました。
Rは、Tに悩んだ顔つきで、
「僕はこの話の続きを書きたいのだが、
どうなっていくのか想像できないんだ。
王国を作った後、和也は、君はどう動くんだい?
教えてくれよ」と言いました。
「さあ早く王国をつくる準備をしよう。
僕は何をすればいい。
なりふり構わずひとを助けて人を傷つける盲目な君が偽善者であることはもう暴いた。
なら次はいじめのねつ造かい?
人気者の脅迫かい?
さあ、何をすれば良いか教えてくれ給えよ。
さあ!」

Tは、Rのことが怖くなり、その場を後にしました。

7
帰った後も何度も何度も考え、
初めて友達になった親友に電話をかけました。
親友は、話をしっかり聞き、
「落ち着け、一つ聞いて欲しいことがある」と言いました。
Tはこの言葉に今後、どれだけ救われるのか、
まだこの時は、わかっていませんでした。
親友は続けて
「なぜ、今俺がこうして楽しく過ごせていると思う?
それはTお前のおかげだ。
お前があの時、一人ぼっちの俺に話しかけてくれたから今の俺がいる」

「でもそれは偽善で、結局善なんてどこにもない。
俺がやろうとしているのは狂乱の王になるような
愚行にも等しいんだ。
でも、そんなことはっ…」

だから落ち着け。
いいか、お前に救われた人は、俺だけじゃない。
たくさんいる。
例えお前が『偽善者』だと思われたとしても、
救われた奴がいる、感謝してる奴がいる。
その事実は変わらないよ。
たとえそれが王という立場であっても、
そんな風に救ってくれる王ならみんな歓迎する。
Rの言ってるのはフィクションに過ぎない、
だから君は君のやり方で
君の思う善人な『王』になればいい。
何かあれば俺がブレーキをかけるし相談もしてくれ。
だって俺らは親友だろ?」

Tは、この言葉に救われました。

そして彼は『偽善者』として生きていくことを決めました。

8
Tは、自分がやっていることは、人のためになっていること知り、もっと人のために何かできるようになりたいと思いました。
本物の善を探したいそうです。
心理学の本、ビジネス本、自己啓発本を読みあさり、趣味の範疇ですが、
一年で100人以上の相談に乗り、解決しました。
ずっと憧れていた東京にある大学に進み、現在はそこでビジネスを学んでいます。
将来はコンサルティング会社の社長になりたいそうです。
ちなみに、Rは聞いたところ、
Tの行っている偽善を当人に気づかせようとして
あんな小説を書いて見せたそうです。
果たして誰がそんな上から目線の態度を取られたいと思うのでしょうか。
もちろんその事件の後、彼はT以外の友達とはなかなか話すことができなくなりました。
当然の結果ですね。
そう。
当然。

これからは、もっとたくさんの人に出会い、話し、
人間的に成長し、人をもっと助けられるようになりたいと語っています。
父のように、いや、越えたいとも。
さて、今日も僕はTの相談に乗りたいと思います。
どうやらアプリ開発で行き詰ってしまってようです。
友達というのはなんともめんどくさく愛おしい。
誰かの掌の上とも知らずに健気なものですね、
ほんと。
本物の善ってなんだろう。
人助けに奔走するT。
真実を伝え、在り方を見直させようとするR。
Tに賛同し、本質を見逃して傷付けまいとするクラスの人。
弱者を見下し手を差し伸べようとする偽善者。
マジョリティーを正義とする社会。
本能的に生きる動物。

陰ながら応援する親友。

やや話がそれた気もしますが

皆さんは

誰が本物の善人に見えますか?

ああ、本物の善ってなんだろう。

難しいなぁ

え?ああ、僕が誰かって?

じゃあ最後に自己紹介をして締めとしましょう。

Tの恩人の親友より、愛をこめて。

全ての善に花束を。




『偽善者』と呼ばれた男 

原案: Mr.
制作等:坂﨑和史・ビッグ
動画編集:Mr. 


次回作をお楽しみに! 

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