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農業には2つの世界観がある!~議論を混乱させる原因~ 後編

農ライフスタイル実践研究所の山田です!
前回の農に2つの世界があるという話の続きです。
前編 https://note.com/tab_lab/n/n3c0c81f314b3
 
では、どういう世界があるかというと
僕自身の言葉で表すと
【産業としての農】と【ライフスタイルとしての農】の2つに大別できると思っています。
さらに細かく分類はできるのですが、今回はこの2つの分類について話してみたいと思います。

まずざっくりとキーワードごとで分類してみると
【産業としての農】
経済性、生産量、飢えの克服、GDP、法人、大規模化、スマート化、輸出など

【ライフスタイルとしての農】
生きがい、質、安心安全、文化歴史、個人、多様化、有機や自然栽培、地産地消など
といった具合に分けられるかと思います。

農業にある2つの世界観

なんとな~く、言わんとしていることがイメージできるかと思います。
これらを見て、どちらかは悪いというイメージがあるかもしれませんが、どちらも大事で、両輪であると個人的には思っています。
 

次に
個々の世界観の本質をすこし解説してみたいと思います。
【産業としての農】で大事にしているのは
経済性や功利性と言われるもので
資本主義という社会の前提の中で農業が動いています。
資本主義をどう解釈するかでまったく意味が変わってきますが、ここでは功利主義者のベンサムという人が言っていた「最大多数の最大幸福」という資本主義のよい側面を尊重したいと思います。

ジェレミ・ベンサム イギリスの哲学者・経済学者・法学者。功利主義の創始者として有名。

これはつまり・・
【みんなで幸せになろうぜー!】という考えです。
(ざっくりしすぎかな・・)
もうちょっと言うと
「経済を回して、飢えのない豊かな世界にしよう」
というのが【産業としての農】の目標でもあります。
※ここでは「貧困の罠」などの負の側面はいったん置いておきます
 
次に【ライフスタイルとしての農】です。
さきほどの【産業としての農】とは逆に資本主義社会がなくても成り立つ世界観で、昔のムラ社会や物々交換、自給自足、助け合いなどが考えられます。
農は、お金を媒介しなくてもできるので、昔からあたり前のように存在していたものですが【産業として農】が発達しすぎた現代社会では、そのアンチテーゼとして(その反発として)【ライフスタイルとしての農】が強調されるようになりました。
これをざっくりした形で言うと
【人間らしい生活をしていこうぜー!】という考えです。

この両方を見ると、どちらも悪いことはないのです。
しかし、双方の悪い点ばかりに目がいってしまうと対立が起きたり、議論が混乱したりします。
 

前回の話に戻ると
久松達夫さんが
『農家はもっと減っていい』という話は
【産業としての農】の立場から語っており
農業経営をする農家は減るべきだと持論を展開。
個人的にもその通りだなと思うわけです。
 
ただ、【ライフスタイルとしての農】から見ると、これから農業を無くなってしまうのか!と誤解を受ける人がいます。
これはあくまでも【産業としての農】の話であり、日本の農そのものが無くなると言っているわけでもありません。

確かにタイトルだけ見ると、煽っている感じがあり、どうしても誤解してしまうかもですが。
まあ、売るための出版社の戦略としては正しいですね。
 
【産業としての農】の世界では、農業はこれから集約化、大規模化が進むことになり
【ライフスタイルとしての農】の世界では、生活の中に農を取り入れていく人達が増えていく。

という現象が起きるかと思います。

またある人は
国民全員が農業をやっていけばいい!という人もいます。
それは
【ライフスタイルとしての農】の世界の話で
ひとり一人の生き方としては、とても素敵だと思いますし、日本人の幸福度はあがるかと思います。
 
ただ
【産業としての農】の世界では
そんなことをしてしまうとかえって生産効率が悪くなり、経済が回らなくなり、逆に日本が飢えることになります。
 
こんな感じで、農業には、二つの世界観が存在しています。

【産業としての農】と【ライフスタイルとしての農】
もっとシンプルな言い方をすると
【農業】と【農】と分けてもいいかもですね。
 

そして

この2つの世界観の二極化が進んでいます。

二極化が進み、農業の議論が対立しやすくなる

この原因の大きな要因は、経済格差や貧困です。
日本は失われた30年を経て、先進国から途上国の状態へ衰退しています。
 
結果として食への予算も削られ、質量ともに減ることになり、それらを支える農家にシワ寄せが来て、淘汰され、より効率性を求められるようになりました。
それが【産業としての農】を助長することに。

それと同時に
9割の日本人が都市中心の生活になり
仕事や家庭の時間に追われ
自然の中での人間らしい生き方から離れてきました。
それが【ライフスタイルとしての農】を助長することに。
 
そんな社会変化により、2つの世界が二極化し
現在【農(農業)】が注目を浴びています。
これから、どうなるんでしょうか・・
 
ということで!
今回は農業には2つの世界があるということ話させていただきました!

ご清聴ありがとうございました!

と!いいたい所ですが
他にもいくつかの世界があります笑
 
それは、また別の機会でしっかり話をしたいと思いますが

ひとつの例で言えば
農業経済学者の鈴木宣弘さんは
『世界で最初に飢えるのは日本』
という本を書いており
日本の食糧危機に備えることを主張されています。
 
かたや
農業と食糧の専門家である浅川芳裕さんは
『日本は世界5位の農業大国』
という本を書いており
日本が食糧危機になることあり得ないと主張されています。

え!どっち!?


ってなりますよね 苦笑

どっちの本を読んでも、なるほど・・と思ってしまうからなおさら考えさせられる笑

この議論だと
今回話した世界観だけでは説明ができず
その背景には

経済や政治の世界観、国家観の違いが前提になって話がかみ合わなくなっています。

そんな話もまた時間があればいろいろとお話したいと思います。

今回は抽象的な話だったので
次回は具体的な話をしてみたいと思います。
ご清聴ありがとうございました!

おわり

【自己紹介】
非農家でありながら、東京の八王子で農業系サービス事業を展開。
専門分野は都市農業の経営、都市部での小さな農、コミュニティ農業、農のある生活、キャリア視点から見る農などで幅広く農業を語っています。

【研修事業のご案内】
東京キャリアファーム https://tokyo-c-farm.com/
年間を通じて募集中(おススメは春の時期)
ZOOMによる講座を中心として
東京八王子を中心に現場での農業体験も行っています。


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