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書評 戦乱中国の英雄たち 佐藤伸弥著

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巷での評判も高い佐藤伸弥先生の中国時代劇の本である。Twitterを見ていただければわかる通り佐藤伸弥先生はほとんど毎日中国時代劇を視聴しており、日本一の中国ドラマ研究者(本職は中国古代史です。)と云っても過言ではないでしょう。そんな方の中国ドラマ本ネットでは大好評ですが、九州の山奥ではなかなか買いに行けず5月23日にようやっと購入して現在堂はして感想を書いています。

3月にも佐藤先生は新書を出されており、古代中国の戦争についての本の2ヶ月後にこの本が出されてある。勿論この本の第2章第3章は古代中国を舞台にした時代劇を扱っている。

まず最初の「はじめに」で日本人の中国への偏見を取り上げつつ、規制や検閲などがあるものの、そういったものだけを見ていても決して理解しえない世界があり、その神髄は実よりもむしろ虚を深く見る事により理解できるようになると説く、私の様なクソオタは史実は史実が~といって知識をひけらかしたくなるが、やはり芝居を見るということについてはやはりその道の先達の云う事を聞かなければいけないと云う事を再び認識した。

以下、気になった所をピックアップして感想を述べていく、

18ページ、老三国が、桃園の誓いから晋の統一で終わると記述されているが、確かに禅譲の様子が描かれるものの映像上では姜維の反乱から安楽公のエピソード以外は呉はスルーで魏晋禅定になるので一般的な蜀滅亡エンドでは?とは思う。まあ原作でも呉滅亡は119の最後と120話しかないんですが。

54ページ、野球は知らないですが、魏=タイガース説は面白いですね。

97ページ、中国国内の問題について、エンタメの本で、いやエンタメだからこそおもねらずにここまで抑制的に書かれいる所はさすがと感じました。

126ページ、中国のポリコレは臭いものにふたではなく身の詰まったものになっているという指摘から、中国では古典や歴史がよく文章上で引用されそれが新しい力になって居る事を連想した。毛沢東主席はこう教えています。人民,只有人民,才是创造世界历史的动力。

170ページ、南ベトナムで武侠小説が四有れていたとは知らなかった。

過去の歴史を通して現在の批判を行う、それは孫権が宴会で古代の悪王の宴もこうだったなぁとか言われたり、曹操が酒を禁じようとしたら孔融にねちねち高祖が~とかやられたり有名なものはいくらでもある。

中国嫁で有名な某漫画家は中国は規制があって共産党の居る限り日本のアニメは安泰などという、エロの二次創作しかできない身で馬鹿な事を言っていたが、現在の中国アニメのアジアへの席巻っぷりは言うまでもないだろう。規制があるにしても、現在の中国のドラマは公式テンプレではなく作成者の思いがうかがえるのである。

無論これは時代劇だけではない、佐藤先生の趣味ではないとは思うが、抗日劇や文革時代を扱ったドラマなどでも日本人の扱いはかつての模範劇などとは全く異なっている。おかしな抗日劇のおかしなシーンだけがあげつらわれ本になってるだけである。

特にこの本であった異民族関係などは、私はリアルで新疆と漢民族の文化交流や民族融和をやっているのを友人も参加しているので知っているが、ドラマでも配慮進んでいるのがよくわかり、学習になった。皆様にもおすすめな本です。ぜひ買いましょう。

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