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『三島由紀夫レター教室』は本当にレター教室だった

突然の読書感想文。
時々アウトプットしていかないと便秘になるよと言われたので、時間のある時は頑張って書いていこうかな。

感想

冒頭の5人の自己紹介、あまりのギャグ線の高さに「天才だなこの人」と言わざるを得ない。日本を代表する文豪だし、今まで他の書籍を読んだことがなかったからもっとお堅い難しい文章なのかと思ってたから衝撃だった。想像の斜め上をいく内容。途中からギャグ漫画読んでる気分になった。
でもレター教室と題されてるだけあって、文中の手紙は参考になるものばかり。ユニークで、その人柄が浮かび上がってくる。中でも、こんな手紙書きたいな~と思ったものがあって、それがこちら。

「今、台所でお芋が煮えるのを待つあいだ、いそいでこのお返事を書いています。あなたのお手紙はうれしくて何度も何度も読みかえしました。私は台所の囚人です。そこであなたの手紙はよみかえすごとにソースの匂いがしみこんで、ますますおいしいご馳走になりました。あ、お芋が煮えた。ごめんなさい。私は台所まで走り寄ります」

なんてチャーミングな手紙〜!! 書いている情景が目に浮かんでくる。こんな可愛らしい手紙を三島由紀夫が書いているのだから本当にすごいしか出てこない。そして巻末のあとがきに、手紙の極意とやらが書かれていた。

重要視される「手紙」を書く方法

手紙を書くときは、相手が全く自分に関心がないという前提で書きはじめなければならない。これが一番大切で、他人は決して他人に深い関心を持ちえない、もし持ち得るとすれば自分の利害がからんだ時だけ、というニガイ哲学をよく知ること。
手紙の受け取り人が、受け取った手紙を重要視する理由は、

一、大金
二、名誉
三、性欲
四、感情

以外には、一つもないと考えて良い、とのこと。このうち、第三までははっきりしているが、第四は内容が広い。打算でない手紙で、人の心を搏つものは、すべて四に入る。
この第四の手紙が一番難しく、言葉だけで他人の感情を動かそうというには、なみなみならぬ情熱か、なみなみならぬ文章技術が必要になってくる。その場合も、相手が自分に対して関心がまったくない状態で、自分勝手に情熱を発散したって、うるさがられて、髪屑箱に直行するだけ。

ではどうすれば良いか?
その具体策は明示されていないが、要は冒頭に述べた
”世の中の人は、みんな自分勝手の目的へ向かって邁進していて、他人に関心を持つのはよほど例外的”
ということを理解すること。これができてはじめて、その人が書く手紙にはいきいきとした力がそなわり、人の心をゆすぶる手紙が書けるようになる。

以上が三島由紀夫さんがあとがきとして書いた内容で、人の心をつかむ「手紙」の真理を示している。これを読んだときは、人は基本的に自分にしか興味がない、というのは確かにそうだなと思った。エッセイが売れるのは人々が著者に関心があるからであって、その関心を勝ち取った人だけに許される行為だなと。とはいえ、親しい人や日常的に関わりのある人には関心があるのが普通で、「スマホ脳」のアンデシュ・ハンセンによれば、それは自分のテリトリーの人間を把握しておきたいという人間の特性らしい。

兎にも角にも、普段手紙を書くことはほとんどないけど、こんな風にユーモアあふれる文章をかけるようになりたいな~と思った。

【参考】三島由紀夫レター教室 第50刷/株式会社筑摩書房

【写真】1枚目: 36hostel/ 広島県
    2枚目: 不明
    3枚目: 志摩地中海村/ 三重県

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