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COVID-19の流行に対する緩和ケアの対応はどうあるべきか?(JPSM,27 Mar)

本文はこちら
https://www.jpsmjournal.com/article/S0885-3924(20)30164-0/fulltext

みなさんお久しぶりです。noteは気が向いたら更新すると今決めました。今回の文書は医療者向けです。非医療者の方が読んでいただいても構いません。

自分は9年目のまだまだ修行中の医師です。研修を積む日々の中で、救急医療の現場で、様々なプレッシャーに潰されそうになることも多々ありますが、そんな自分を救ってくれた言葉あります。

「いま自分にできることをやる」

なんて簡単な言葉かもしれません。ただこの言葉に何度も救われました。ものすごい緊張感の中で、秒単位で意思決定が求められる救急医療の現場において、自分自身がパニックに陥らないための魔法の言葉でした。

今、世界は100年に1度のパンデミックに襲われています。世界中の大都市で凄惨な状況が日々報告され、国内でも終わりの見えない自粛や見えない敵と戦う緊張感が続き疲労が蓄積されています。

「いま自分にできることをやる」

こういった状況だからこそ、この言葉を胸に前を向きたいと思います。

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さて、本題に移ります。JPSMという海外医療雑誌にこんな論文が掲載されました。

COVID-19流行時、緩和ケアの対応はどうあるべき?

COVID-19と緩和ケアって、そんな縁起でもない。と思う人もいるでしょう。
まあ、そこは落ち着いて聞いてください。

まず緩和ケアの専門家というのはどんな人か、というと
①症状の緩和
②意思決定支援
③社会資源の調整
に関する専門家です。ただ麻薬を使う人とか、がん患者の最後の楽園のようなホスピスにいる人、ではないんですね。

この論文ではCOVID-19の流行において大きく2つの問題に着目しています。

① 大流行による、ICUベッドや人工呼吸器など限られた医療資源の分配に関する問題
② COVID-19患者とその家族の、先行きの見えない不確実な選択を迫られることによる精神的苦痛や倫理判断、意思決定の困難さ

緩和ケア専門家はこの問題の解決に貢献できるのではないか、と言っています。

そうはいってもみなさんの周りに緩和ケアに従事する医療者ってそう多くは無いですよね。みなさん一緒に働いたことのある緩和ケア専門家って何人いますか?3人以上いるよっていう人はかなりのエリートだと思います。

緩和ケア資源の不足は世界的に言えることで、COVID-19の患者が来院するたびに緩和ケア専門家が呼ばれるようなことがあってはあっという間に緩和ケア資源が枯渇してしまいます。

じゃあどうすればいいのかっていうことでこの論文ではこう述べています。

① 基本的緩和ケアは他の医療者に任せて困難事例のみ緩和ケアチームで預かる
② 感染リスクや医療資源の限りがあるので、最低限のメンバーで緩和ケアの診察を行う
③ 既存の緩和ケア患者を病院で診療しなくてもすむような工夫をする
④ 困難な意思決定支援などのコミュニケーションが必要な医療者を支える

①について。緩和ケアは専門関係なく全医療者が身につけるべき能力と謳われており、そこで培ったスキルをCOVID-19診療でも活かそうよということです。

2007年から国は全医師が緩和ケアを学ぶ体制づくりPEACEを続けています。(え、そうだったの)と思われるかたは、そっと「PEACE 緩和ケア」で検索してE-learningを受けましょう。

②緩和ケアって、ぶっちゃけコミュニケーション、これは言葉だけでなく非言語的なタッチングなども含まれますが、が勝負です。それがPPE必須だったり、面会制限がある中でどうすりゃええねん、という感じですね。

諦めずに考えましょう。電話やビデオ通話ができないか、COVID-19以外の患者であれば在宅医療へのスイッチングができないか、など治療における限られた医療資源の中でできることを考えたいですね。

③医療資源を確保するということですね。この状況下では100点を目指す診療は難しいと思います。どうにかしてすべての患者さんに60点の診療を実践できないか、考えていく必要があると思います。

電話や、訪問診療、医療介護用のSNSでのフォロー、地域のリソースなど使えるもの、依頼できるものを今のうちにできる限り探しておきましょう。

④もしかすると、あなたも「あなたのおばあちゃんは高齢なんでから限られた人工呼吸器をつけことはできません、諦めてください」みたいなことを言わないといけない状況になるかもしれません。

ほんとに辛いですね。しかも流行がひどければ、何度も繰り返し言わないといけなくなるでしょう。本当にそんな状況にならなければいいなと思い、今日も手を洗います。

最近日本語版COVID-19診療におけるVitalTalkについて公開しているのを拝見しました。言葉の選び方は参考になるかもしれません。

同時に、話し方や環境設定、その後の家族への配慮・ケア、医療者へのケアも必要になります。緩和ケア専門家は貢献できる場かもしれません。

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以上になります。参考になれば幸いです。

いやはや、考えれば考えるほど気が滅入りますね。SNSづかれ、ニュース疲れの人もいるでしょう。意識的にリフレッシュしてますか?運動やリフレッシュできること、お家でできるちょっとした贅沢など、日々のメリハリを忘れないようにしましょう。

僕はどうぶつの森をはじめました。ひたすら虫捕まえてます。ではまた。


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