絶不調チェルシーの3つの構造的問題点

一昨年CL優勝を成し遂げた名門チェルシーFCが、今季絶不調です。
連敗を重ね、順位は現在12位。
10勝9分14敗という、上位が定位置だったクラブとは思えない状態となっています。
チェルシーを常勝クラブに作り変えた「プーチンのパートナー」的ロシア人アブラモビッチが、制裁で資産凍結された後、新会長トッド・ベーリーがチームにどう影響を与えるか、サッカー界では注目を集めていました。
しかしその試みは、失敗に継ぐ失敗となってしまっています。
今回は、私の考えるチェルシーの問題点を書いていきます。

チェルシーの問題点は3つ

チェルシーの問題点を簡単に言うと、以下の3つです

  1. カウンターチームからポゼッションチームへの切り替えを、オーナーの思いつきで実行している

  2. 補強はするが放出はしないまま、膨れ上がったスカッドは、通常25人の所が31人まで膨れ上がっている

  3. 新オーナーのトッド・ベーリーは典型的なワンマンオーナーであり、サッカーを知らないのに批判を受け付けない体制を作りあげている

1.カウンターチームからポゼッションチームへの切り替えを、オーナーの思いつきで実行している

「カウンターで成功したが、華やかなポゼッションチームに変貌させたい」
そう考えたチームはいくつかありますが、その大半は失敗に終わっています。
その理由は、カウンターに慣れ親しんだチームの哲学を変えるという事を、軽く考え過ぎているからです。

ポゼッションが得意と言われる監督を連れてきても、実際にピッチ上で戦う選手たちは、カウンターの哲学が体に染み付いている上に、成功体験まで持っています。
そこに全く違う哲学を持った監督を連れてきて、選手に新しい戦術を指導しても、選手側は「仰る通りそうですね」とはならず、「今まで上手くいってたのに何でこうなるんだ?」となってしまいます。
その結果、チーム内の選手を大量に入れ替える必要が出てきます。
しかし、成功したチームの重要な選手をどんどん放出していったら、どうなるでしょう。
選手もファンも怒り出しますよね。
そしてロッカールームの雰囲気がおかしくなり、監督は信頼を失って選手と対立し、戦術がどうのこうの以前に、まともなモチベーションで試合に臨めなくなります。

今のチェルシーの問題点の一つはこれです。
クラブの伝統である守備を基調としたカウンターサッカーのカラーは、そう簡単には変わらないでしょう。
その変革を貫徹するには強固な意思と継続性が必要ですが、新オーナーは早々とポッター監督を解任してしまいました。
もちろん新オーナーは、選手全員を入れ替える財力とやる気はありますが、ポゼッション戦術をチームに浸透させる為にそれを遣う方向性は、全く見えません。
これにより現在のチェルシーは、どんなスタイルで行くのかすら分からなくなっており、新監督ランパードは、その答えをウヤムヤにしたまま指揮を執っています。

2.補強はするが放出はしないまま、膨れ上がったスカッドは、通常25人の所が31人まで膨れ上がっている

チーム内のモチベーションを保つために不可欠なのは、試合に出場して結果を残す健全な競争環境を整える事です。
それは通常25人の登録チームであっても、非常に難しい事です。
ケガや病気によって選手が足りなくなる事もあれば、登録選手全員が健康で試合に出れないと不満を漏らす事もあるのですから。
チェルシーの現在31人という登録人数は、その許容範囲を大きく超えています。
この試合に出れない事によるモチベーション低下は、どんな名監督であっても防げないでしょう。
さらに来季エンクンクが加入決定していて、ルカクがレンタルから帰ってくる事を考えると、33人です。
そしてチェルシーの抱えている選手は非常に価値のある選手ばかりであるため、放出も簡単にはいきません。
価値のある選手の放出作戦がバーゲンセール状態となる事を、新オーナーが許容できるでしょうか。
来季この問題を解決できるかどうか、私は興味深く見ています。

3.新オーナーのトッド・ベーリーは典型的なワンマンオーナーであり、サッカーを知らないのに批判を受け付けない体制を作りあげている

新オーナーのトッド・ベーリーは、アメリカ野球界の大物らしく、大金を使って思い切り目立っています。
補強する事自体は良いのですが、サッカーではただ良い選手を連れてくれば、良いチームが作れるとはなりません。
この辺の感覚は、優秀な選手を連れてくれば勝負できる、戦術性の薄い野球とは全く事情が異なります。
監督の考えるチームに選手のタイプと考えを一致させ、戦術的に連動させた上で、世界最高の競争力を持つプレミアのチームと戦わねばならないのです。

しかし、トッドにはこういった考え方の欠片も見当たりません。
有名選手をただ金をかけて補強し、適切なスカッドの為に放出する事すらしませんでした。
さらにオーナーに苦言を呈する事を厭わない反抗的なトゥヘルを解任し、ビッグクラブの経験のないポッターを、おそらくの推測ですが、「上手くいってるし反抗しなそうだし」という理由だけで就任させました。
そしてやりたい放題した挙げ句に、現在の体たらくとなっています。

サッカーに詳しくない新オーナーには、知識や経験を補助する優秀な経営陣が必要となります。
シティやニューカッスルは、まずここから始めたからこそ、今の成功があると思っています。
しかしトッドには、この謙虚さがありませんでした。
典型的なアメリカ人的オーナーのムーブとも言えるかもしれません。

今後の予測

3つの問題点が解決されない限り、チェルシーが以前のような常勝クラブに戻る事は難しそうです。
ただトッドがサッカー素人だとしても、彼は一年経験を積みました。
野球で結果を出してる以上、彼が無能という事はあり得ないので、何らかの改善策は出してくるのではないでしょうか。
しかし人間性や性格がそう簡単に変わる訳でもないです。
そういった事を踏まえ、チェルシーの今後を予測してみます。

今季の残り

現在の監督であるランパードは、現状に対する苦言的なコメントは何も残せず、「選手はチェルシーの誇りあるエンブレムの為に戦え」とだけ言っています。
上記で挙げた3つの問題点には全く言及していないので、その渦中にある選手の不満は消えず、逆に反発を招いていそうです。
ランパードは綺麗事を優先して、根本的な問題にあまり手を付けないような仕草が垣間見えるので、彼の監督としての資質には疑問を持っています。
もちろん内部では言ってるかもしれませんが、それはそれで堂々と問題点を言えない奴と言われそうで、イングランド的には微妙かもしれません。

もしランパードが早めに解任された場合、次の監督となりそうなのはポチェッティーノですね。
彼もまあオーナーには反抗しなそうな人事ですが、ポチェッティーノはそういうオーナーの元でそこそこの成績を残す監督ですので、どうなるかですね。
どのみち降格はしなそうなので、来季にどう繋げるかが見ものとなるでしょう。

トッドという会長がどう変われるか

結論から言えば、彼はそれほど変わらないと思います。
謙虚に物事に対応するというタイプには見えませんし、まだ「ワシのアメリカンなやり方に付いて来い」的な方針で行くでしょう。
まだ補強に対する方針も、自分のやりたいようにやりたそうです。
なのでディレクターなどを雇ってもそれは補助にすぎず、面倒なオペレーションを任せるという事に留まり、方針などの助言もトッドの許容範囲を超えないレベルで行われそうです。
そしてトゥヘルのように、逆らったらクビでしょうね。

適正なチームスカッドはさすがに作って来る

「試合数の少ないサッカーにおいて、31人ものスカッドを抱えてはいけない」というのは、さすがにトッドも学習したでしょう。
来季は大放出作戦に転じると思われます。
それが誰かという詳細は省きますが、まず新監督の希望に沿って25人に近いスカッドは作り上げると思います。

戦術は曖昧なまま

新監督次第ですが、もしポチェッティーノでもそれ以外の監督でも、おそらくトッドは確固たる考えを持つには至れないでしょう。
ポッターのようなハイプレスポゼッション的戦術を維持する事もせず、名監督に近い高額な監督を連れてきて、その監督に任せる事を繰り返しそうです。
結果、おそらくチームは様々な戦術が混在し、選手も混乱します。
これはファーガソン後のユナイテッドが繰り返している過ちと全く同じですが、チェルシーも同じような状況が続くと思われます。
そういえば、グレイザー家もアメリカ人でしたね…

あとがき

以上です。如何でしたでしょうか。
思い切った事も書いてしまいましたので、反発も多いかと思います。
心の琴線に触れた方がおられましたら、是非とも何らかのコメント等残して頂ければ幸いです。
サッカー討論も歓迎ですよ。

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