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序 インド高校交換留学雑記① 

15才の夏、僕はインドにきた。1年間、インドの高校に交換留学していた。


毎日カレー食べていたんですか?
辛いものは問題なかったですか?
お腹大丈夫でしたか?
インド人はいつも皆踊ってますよね?

これらの質問は鉄板なので脊髄で答える。
各々調理によって名前はあるが所謂カレーは毎日食べる。
腹はいつも下していて、街を歩いていたらカジュアルに漏らすことは日課。
僕の見たインドは人工も人工密度も異常で街中の彼方此方で結婚式が行われ、爆音のbgmと共に路上で踊り狂う。路上が踊るカラオケボックスだった。

インドにおいてダンス抜きで生活することはつまり日本において、、、何に相当するのだろう。僕たち日本人は何に歓喜するのだろう。
扱いたいのは生活の中で育まれてきた身体性を含む文化風俗だ。敢えて日本という大きな文化圏で考えてみる。

ブシドーやサムライ、、、今の日本ではない。
盆踊りや演歌、アイドル、、、地域や世代によって大きく異なる。
謙虚な振る舞いや敬語などが一番しっくりとくるが、なにか違う。

東京にいると思う。日常的に発狂できる場所が見当たらない。コンプラの弊害だろうか。
これを人々の孤立と捉えるか多様性と捉えるか。

この一世紀の間で社会を取り巻く「みんなちがってみんないい」理論は大体みんな同じであるという不文律のもとで成立するのではないか。そもそも「みんな違ってみんないい」における「みんな」は鈴と小鳥と私だ。比較対象が人と人でない。とどのつまり、「みんな」とは「人でなし」である。
自分でも何を言っているのかさっぱりだ。

多様性があっていいじゃない、とも思うが集団行動を得意と自負する日本人がなぜこれに限ってエントロピーが高いのか。集団発狂を戦争やカルトと結びつけてしまう過去の歴史のせいなのか。或いはそもそも集団行動が不得意なのか。何れにせよ、僕は合法的に楽しく狂ってる人たちがいる場所が好きだ。
 
話が脱線した。

だがしかし、どうしてインドにいったんですか、には上手く答えられた試しがない。
僕だって聞きたい。端的に答えられる何かがほしい。が、簡潔な言葉で話してしまうと何か心にあったものがこぼれ落ちてしまう。結局、長く話すのが面倒だから諦めた。

面白そうじゃん!マハラジャだよ!ガネーシャだよ!ナマステだよ!と大声で勢い任せに言うと、変なやつだと距離を置いてくれるので助かる。

中高一貫の学校だったから12才の時から18の背中を見ることができた。ある程度自分の進む道がわかっていた。それは良い刺激である反面、自分の将来が見えるわけだから面白さがない。

中学時代は部活にのめり込んでいたからそれなりに忙しかったが、一方で過ぎ行く分かりきった日々に退屈していた。無自覚に遊びを楽しむ子供でも自覚的に面白いものを創ろうとする大人でもなかった。

だから、留学に行った理由は
飽きた
特別な何かがほしい
面白そう
好奇心
おそらくそんなところだろう。
インドにした理由はインドへの日本人学生の派遣が始まって間もなくで、国別パンフレットにインドだけ情報がろくになかったから、それだけだ。なにも知らない環境に身をおけば何か面白い何かがあるんじゃないかと、思った。今の環境を楽しもうとしない無責任を棚に上げ、新たな環境に全て身を委ねようと。
だから、人様に言えるほど高尚な目的などない。
今は思う、発狂できる場を求めていたのかもしれない。

現在23の僕は、台湾の大学卒業後のギャップイヤーを東京で過ごしている。映画に携わる仕事をしていたが、過労か環境の変化なのか身体を二度と壊し、色々あって辞めた。

ぶっ倒れている時に思った。今秋、大学院に進学する。半年後には異国の地にいる。やりたいことは明確にある。その為に今は淡々と、できうる準備をしている。しかし何だろう、なにかを忘れている気がする。
結婚したことないからわからないが、マリッジブルーみたいなものがどこかにある。
いつもの健忘なのか漠然とした不安なのかわからないが、これといった対処法があるわけでもないし、問題の棚上げは僕の専売特許だ。

過去の自分の身に起きた出来事とそこで生まれた心象を掘り起こすことで何かみえるものがあるのではないか、という一縷の望みをかけて過去の留学の出来事をつらつら書いていこうと思う。
過去の記憶を文字にし、文章からそれを追体験することで新たな景色を眺められるのではないか、という希望的観測のもと、過去の経験を辿ってみようと思う。
同じことを2度書いた。大事なことは何度も言ったほうがいい。
だらだらと色々書いたが、「演繹してみよう」、7文字で事足りた。 

自ら蓋をしているかもしれない過去をほじくり返すことで、何かみえればいいが、、、
その蓋を開けてみたとき、アラジンでも出てこないかなあ。
タコス食べたいなあ。椎名林檎のライブに行きたいなあ。タコス食べたいなあ


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