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ガンジャ先生。7-3

小さな愛の言葉

 ドアを開けると温い風が入った。
僕の知っている歩(あゆむ)とは違い。
こんなに小さな女の子だったんだ。と今更思う。
The Chainsmokers - This Feeling (ft. Kelsea Ballerini)

「ごめんなさい。バスの事。。誤らなくって。言えなくて」

「いいよ。。なんか飲む?」

「うん。お水お願い」
冷蔵庫にはウェルカムドリンクがあり。僕は口札のプラスチックを外してコップにを注ぐ。
冷房の音しか聴こえてこない。

「匠。私けっこう好きなんだよ?」
僕はコップ落とすかと思った。

驚いた。なんて言えばいいんだ?
僕には何も言葉がでない。

「アハハ。。ごめん困らせて‥話聞いてくれるかな?」
水を渡しうんと頷く。
「私。時々夢で見るんだ。あの時のこと」

静かに歩は話しだした。

外からの明かりと窓から見える草木が揺れていた。

「学校に行く事がなくなって。別に不良になろうとした訳じゃないんだ。ただ、家にいるのは耐えきれなくて、さ?」

「私は出合い系サイトに手を出したんだ。。その事は後悔してないよ」

「合う人は他愛もない話しを聞いてくれたし。カラオケもただでできたし。エッチもその時覚えてた」

「思う以上に大人って情けないんだ〜私が笑い飛ばしても、逆に相談して来たり。。こんな私に。ね?ウケるでしょ」

「30才くらいの人かな〜なんか、仕事バリバリなその人に合ったの。凄く、相性が良かったの。心も体も」

僕は歩を見つめてる。彼女は少し嬉しそうに。

「いろいろ教えて貰ったと思う。また普通のデートもした。いろいろ買い物もした。私は好きになってた‥」

「半年くらい付き合ってたかな。楽しかった。でもいい事は続かないと先生も言ってた通り。私は妊娠し て た   」
フッと 視界がブレた。
歩は椅子の端を握る。首の傷が、痛みだす。

「初めは嬉しかって。一緒に暮らせるのかな?子供はどっちかな?とか思った。けど話をした時に。彼が引くのが分かった」

「その後連絡が少なくなって。生理が止まって2ヶ月目に流産したん。ん。。。」



彼女はこんな子供みたいなのに。。なんで?
僕は訳のわからない怒りが。
しばらく。何も言えず歩は震えてる。

コップの水をゆっくり飲み直し。

再び歩は話だした。


「今は大丈夫。ただ、時々夢でみるんだ。私も半年前だし冷静に考えれると思う。初めから無理だって知ってた。彼は彼なりに愛してくれたし。。初めから指輪つけてるの知ってたんだ。だからしょうがない」

「それで!バスでその夢を見て。。キスしちゃった。ホントごめんネ!匠」

手を合わせて頭を下げて謝る歩は。いつもの顔をして。

「ごめん歩・・僕は多分雪菜が好きなんだ」
歩の顔はびっくりしていた。

「そうなの。。てか初めから言えばいいじゃん!もー」

「いや。今気がついた」

「何それ?(笑)」

「でも‥初めてのキスが歩で良かったと思う」

「だから何それ。。」

「ごめん。うまく言えなくて」

「もー匠しっかりしろよ!想いは伝えたの?」

「いや全然。。。」

「はぁ。。あんた優し過ぎるの。。私に怒ってもいいんだよ?」

言葉が詰まる。なんて言えばいいのだろ。こういう時。優しいのは歩のほうだ。

「ん。。分かった。ごめんね。こんな話を言って。忘れて〜♪」
歩は強い口調で言う。その姿が切なくって。

僕はつい、後ろから歩に抱きついてしまった。
声がでないから。つい。悪気はなかったんだ。。
驚いていた小さな子は。

「そんなの。。卑怯だよ!フッたんでしょ!触らないで!よ。。」
歩は泣いていた。だけど睨むように見つめて。


匠に子供降ろした気持ち分かる?病院に行って!鉗子でイジラれて!血が凄く出るんだよ!めちゃくちゃイタイ。。。痛かった。。。んうグッ。ヒグっん。。。」


「・・匠。困った時。頬かくでしょ?笑った時・・エクボできるんだ・・あの人と同じ様に・・」

歩はゆっくり僕の胸に手を当てて。。離れた。
そして寂しそうに。最後に言葉を突きつけた。



「私は子供を殺したんだよ!?生まれて来るその前に!」

歩は走って部屋を出ていった。
顔をぐしゃぐしゃにしながら。

僕はなんて情けないのだろう。

彼女はこんなに傷ついてるのに。

あの時。

いやその前もだ。

誤魔化して生きている。

同じ過ちをしてはだめだ

ドアを開けて追いかける

だがそこには誰もいなかった 遅かった


□□□
「ちょい買い物行って来るわー」

「先生ココどこ?ってか30分も走って分かんないっす」

「ホテルはこの裏。ん?歩かあれ?」

「先生。。歩ちゃん泣いてました。。」

「そうか。未亜。お前一度ホテル戻れ。タツヤ、周り込めばホテルのフロントだから」

「はい。大丈夫っすかね歩たん?」

「ん。つけるから心配すんな。あと匠の事よろしくタツヤ」

「はい。伝言ありますか?」

「‥‥」


☆☆☆
どれだけ走ったかは覚えていない

それはタイだから暑かった

気がついたら海

汗が出過ぎたせいか

不思議と涙は止まっていた

海は人気が少なく 空いているベンチで 匠が悪い訳ではない

でも会いたいよ  同じ名前の拓海(たくみ)・・

私はあの頃を想いだして

 この旅行で一番泣いていた


□□□
部屋にみんな集まった。歩以外だが。

「どうしよう?歩ちゃん泣いてたよ。。」

「匠。先生からの伝言だ。友達の事だろ?自分達で考えろ

相変わらず手厳しいな。ガンジャ先生は。やる事は決まっている。僕はみんなを見て言った。

「みんな、歩を探しに行こう!絶対見つけだす!」



ー物事はきっかけがあると動きだす。

   もう何もない人生なんて嫌だ。

      ガンジャ先生。ありがとうー

経験はチカラです。 若い頃行っとけば良かったな〜と思う事も多かった。 世界は広いです♪ ٩(ˊᗜˋ*)و